第10話少女とクマのぬいぐるみ

これは僕一人でギルド依頼から選んだ、ほのぼのした…と思われた依頼を受けた事から始まったんだ。

「おーい!ただいまらいと!」

家に帰宅すると、らいとは先に帰っていてキッチンから美味しそうな香りを家中に漂わせている。

「おかえりみら!」

キッチンから僕にらいとの声が届く。僕は顔を出してみるとエプロン姿のらいとがいて僕の目から見たら何となくかわいい…そんな事を考えながらボーッとらいとに見とれていると不思議そうな顔をして見返されてる事に気づく。僕は我に返るとさっきの依頼の話をする事にした。

「今日はさ!一人でギルド依頼を受けてきてみたんだ。」

するとらいとは目を細めて僕をジーッと見ながらため息混じりに言った。

「珍しいな!みらが一人で依頼をとってくるとは……どうしたんだ?」

僕は不思議そうな顔をしてるらいとに自慢げに依頼書を見せてやったんだ。

「へっへー…じゃん!これだ!!」

らいとが僕の持ってきた依頼書を僕の手から取ると読み出した。

「えっと…なになに…『クマのぬいぐるみを探してください!』…ん?」

らいとは不思議そうな顔をして僕に聞いてくる。

「なんだ、この依頼?」

そんな聞き方をするらいとに、僕は多少声を荒げ真剣な顔で言ったんだ。

「これは切実な依頼じゃないか!?」

何を隠そう、僕は一人っ子で小さな頃からぬいぐるみに囲まれて育った為、ぬいぐるみが無いと眠れなかったんだ。それは未だに変わらず僕のベッド周りはぬいぐるみだらけなのだ!らいとはそんな僕の事も知っているはずなのに言ってきたのです。

「ぬいぐるみ…だぞ?」

僕は目を閉じ首を横に振りながら更に強く訴える。

「そう!依頼主はクマのぬいぐるみ好き…。

そして僕もクマのぬいぐるみが一番好きなんだ!……って事でこの依頼うけるよ!らいと!」

らいとが僕の迫力に負け苦笑すると依頼書を見ながら呟く。

「…っと!まあいいけど…依頼主は子供……かな?」

「多分…そうかもね?早速明日、足を運んで話を聞いてみようよ!」

必死な僕にらいとは折れたようだ。

「わあったよ…じゃあ明日、直接聞きに行ってみようぜ!」

「うんっ!」


翌日の朝、僕達は早々と出かける準備を終え依頼主の自宅へと向かっていた。この街は比較的お金持ちも多く、富裕層はこぞってお城の側にある城下町に住むのがステータスみたいになってるらしい。依頼主はその中の一件に住んでいるみたいだ……。

「ここ…かな?…○○…○○○だよね?」

僕が依頼書を見ながら住所と依頼主の名前を確認する。

「えっと…○○…○○○。間違いない。…じゃあ行ってみようぜ。」

らいとはそう言うと家のブザーを押す。ブーーーっとよく耳にするブザー音が鳴る。すると中から返事が聞こえた。

「はぁーい!」

いかにもセレブですと言わんばかりの声が聞こえてくるとガチャッと言う音を立て玄関の扉が開いた。きっと依頼主の母親なのだろう。そしてこれは一般市民の僕の勝手なイメージ。

「こんにちは!僕達はギルドの依頼書を見て話を聞きに来ました。」

僕が挨拶をすると家の中へ通され応接間のソファーで依頼主が来るのを待たされた。応接間も二十畳はあるであろう広さに床はバリアフリー暖炉が備え付けられておりThe御屋敷!という雰囲気だ。僕達がセレブの雰囲気に浸っていると廊下から車椅子に乗った少女が現れる。髪は金色、目は透き通るような澄んだ青色でどこか気品のある小学生くらいの少女。彼女は僕達の前まで来ると軽く会釈をし話し始めた。

「私の名前はローラ。ローラ‐フローランスと言います…」

今回の依頼主は目の前の少女で間違いない。

「初めまして!僕がみらいでこっちがらいとです。よろしくお願いします!」

「よろしくな!ローラ!」

僕が挨拶をすると隣に居るらいとも挨拶をする。するとローラは僕達を見て微笑みほっとした笑顔になって声をかけてくる。

「良かった!私小さな頃から足の病気で歩けなくてずっと車椅子で生活してきたからあまり人と話す事がないから、貴方達なら何故か不思議と緊張せず話せそう。」

ローラはそう言うと笑顔を向けてくれたんだ。そして僕はあの依頼の事を聞いてみる。

「依頼の事なんだけど…」

するとローラが笑顔で答えてくれたんだ。

「私が出した依頼ね…受けてくれた事で貴方達なら私の言葉に耳を貸してくれるだろうなって思ったから安心したわ!」

ローラは僕達の事を少しは信用してくれたようだ。そして彼女は語り始める。

「えっと…今回の依頼というのが…実は、数日前の出来事なのです。この街から東に進んで数キロ程行った先に『マルデリック湖』という湖があり、そこへ私と両親の三人で日帰りのお出かけをしたんです…。」

ローラはそこまで話すと暗い顔になり一瞬の沈黙の後、続けた。

「私には名前はクマーと呼んでるお気に入りのクマさんのぬいぐるみがいたんです……」

僕達がじっとローラの話に耳を傾けていると語り続けた。

「そしてあの日クマーを湖に連れて行ったのですが、忽然と姿を消してしまったのです……うぅぅぅ。」

ローラは思い出し泣きだす…。そして叫んだ。

「クマー!!」

僕がローラの口調にちょっと驚き隣に座っているらいとを見るとぷるぷるしながら口を開けたまま驚いている。それはそうだろう…なにせ今回の依頼はクマのぬいぐるみ探し…らいとにとっては軽い話なのかも知れないけど僕やローラにとっては本当に真剣なのだから…。そんなボケてるらいとの頬をぺちぺち平手で軽く叩くとらいとは我に返ってくれた。

「コホン…で?そのぬいぐるみを探して欲しいという依頼ですね?」

僕の問いにローラは頷いた。

「どうか!どうかよろしくお願いします…う…うぅぅぅ……」

ひたすら涙を流す彼女は母親に部屋へと連れていかれ僕達はその依頼を受ける事にして家に帰ったんだ。そして僕達はマルデリック湖への道と依頼内容を再び確認すると早速マルデリック湖へ出発するのでした。

マルデリック湖に向かう僕達。すると隣を歩いていたらいとが口を開いた。

「うーん……話は聞いてきたけどさ。」

らいとが言ってくる言葉は大体僕は想像がついている。

「しかし…まさかクマのぬいぐるみを探す依頼があるとはな…。」

らいとはやはり何もわかっていない様だ。

やれやれと思ったけど話を先に進めないと……

「マルテリック湖…湖に家族で遊びに行って落としてきたって言っていたね?」

らいとも顎に手を当て考え答えてくれる。

「って事は湖の中へポトンってのも予想されるな………」

らいとのその言葉に僕の感情が込み上げてきて気がつくと…

「クマーーーっ!!」

僕は堪らず声をあげてしまっていた…。隣りで歩いていたらいとは立ち止まり僕の顔を覗き込んでくる。

「ど!どうした?みら??」

らいとの問いかけも僕の耳には届かない。

「ひとりぼっちのクマのぬいぐるみなんて……可哀想すぎる!!」

僕の力の篭った叫びにらいとはぷるぷる震えている。

「う……ぁぁぁ……。」

ポカーンと口を開けてらいとは僕を見ていた。

「待ってなよクマー!!僕達が助けてあげるよ!」

僕が力強くガッチリ手を挙げてポーズをとるとらいとは焦りながら僕に声をかけてくる。

「えっ?えぇっ?みら??」

こんなに力強い僕は滅多にらいとに見せた事なかったかもな…彼は驚いた顔をしている。

「なにさ?らいと?」

「あのさ…自分の世界にめちゃくちゃ入ってないか?」

恐る恐る聞いてくるらいとに僕は彼の手を取り目を見て言った。

「クマーは僕達の事を待ってるんだ!?行かなきゃ!!」

「あ!ああ……。」

僕に押され驚いた顔をしながら僕の後ろをついてくるらいと…すると、林の中の小道を歩いていた僕達の前方がパッと開けたかと思うとそこには大きな透き通るような湖が広がってたんだ。

「うわぁ……あ!あの湖じゃない?」

あまりにもキラキラと綺麗に光る湖に僕達は見とれていた。我に返ってらいともその光景を見ながら声にする。

「お?そうかも!行ってみようぜ!」

僕は頷き湖に近づくとらいとも湖を眺めている。

「結構でかい湖…だな!?でも…この湖に落とした可能性も、あるって事か…?」

ローラ、一家はこの湖に遊びに来た時にクマーを落としたのだ。この大きくて素敵な湖を見てちょっと気が緩んだんだろうな…僕は何となくそんな気持ちが湧いてきたんだ。

「そうみたいなんだよね?でも実際は分からないみたい……」

らいとは湖の前に立ち湖面を見回しながらぽつりと言う。

「湖の中をしらみつぶしに探すって訳にはいかねぇぞ……」

そう…このマルデリック湖は周囲を歩いたら数十キロは歩かないと1周出来ない程の大きさでまして湖の中に落ちていたらとても探せるようなレベルの広さではなかったんだ…。どうしようかと考えながら僕は口にしてみる。

「生活魔法でなんとかしておこうかな?」

「なにかいい考えあるのか?」

隣にいたらいとが僕に問いかけてきた。

「えっとね……」

「お…おお……」

らいとも緊張しながらじっと耳を傾けている。

「それはね……」

僕の言葉にらいとが唾を飲み込む。

「ごくり………」

「わからないや!あはは!」

僕が笑って言うとらいとはガクッとなりながら我に返る。

「なんだよそれ!じゃ、まあ作戦立てようか?」

「うんっ!じゃあ一緒に考えてよ!」

らいとにお願いをして二人で考え始めた。

そして、数分後………

「ダメだーーーっ!!わかんねー!」

考えがまとまらず、考える事に飽きたらいとは大声をあげる。水を抜くのもボツ、炎の魔法で水を蒸発させるのもボツ、兎に角!この湖はそんな事が出来ないくらいの広さなんだ。

「ちゃんと考えてよ!らいと!」

諦めかけてる彼に声をかけると何かを拾って湖に投げてしまった!

「う〜あ〜!うりゃあ!」

らいとの投げた『何か』はおかしな形をしていた。僕はそれに気づき声をあげたんだ。

「えっ?」

らいとはそんな事も気にせず『何か』の飛距離にしか興味はないらしい。

「ぉぉおおおお!!飛んだぜ!」

「ああっ!今何投げたの?」

嫌な予感がして聞いた僕にらいとは答えた。

「えっ?ああ!なんか変な形した石みたいな物だ!」

益々嫌な予感が強まりらいとにもう一度聞く。

「えっ?クマ…ではないよね?」

「はっはっはっ!そんな訳ないだろ!」

笑いながら言ってるらいとをジト目で見てしまう。

「ホントかなぁ……」

「なんだよ…」

らいとが俺を疑うなと言わんばかりの顔をしていると突然足元がグラグラ揺れはじめる。ゴゴゴゴゴゴォー!

「えっ?なになに!?」

僕が叫ぶと直後、地震はピタリと収まり一瞬、間を置くと湖の中心辺りから一気に噴水が吹き上がったんだ。水は天高く吹き上げ一定の高さまで届くと落ちてくる。そして噴水は吹き上がり続けた。

「おわぁぁぁっ!!すげー噴水!!!」

「えっ?えぇっ??」

僕達が驚き大声をあげると噴水は徐々に弱まり噴水が消えるとそこに何かが姿を現した!僕達の目の前に現れたのは…インプ…と呼ばれる小悪魔…だった。インプは背中の羽根をパタパタさせ宙に浮きながら僕達を見ている。

「なんだよあれ?」

隣りで見ているらいとは僕に聞いてくる。

「あれは……」

僕が呟くとらいとはじっとそいつを見ている。インプは腕を組みふよふよ浮いている。ブツブツと独り言を言っているようだが僕達には聞こえない…と言うより、言葉が分からなかったんだ。するとらいとが僕に質問をしてきた。

「ちっせ〜妖精みたいなやつが出てきたぞ……あれ…なんだ?みら!分かるか?」

僕は考えていた結果、本で読んだ事を思い出したんだ。それをらいとに伝える。

「あれは、インプっていって小悪魔みたいなモンスターだよ!…でも…人間に特別悪い事するモンスターではないと思うんだけど……。」

僕達がそんな話をしているとインプは身体を紫色に発光させている。そして…一瞬輝きを増すと僕達の脳に直接言葉が流れ込んできた。

「……あ!?なにか聞こえてきたぜ。」

らいとが呟くと僕の頭にもインプの声が流れ込んできた。

「オマエラ…ナニモノダ?オレサマハ、コノミズウミニスミツイタヌシ!インプサマダ!」

僕達が驚いているとインプはふよふよと僕達に近づいてくる。僕はインプに尋ねてみた。

「えっ?あなたがこの湖の主なの?」

「ソウダ!サワガシイガ、ナニヲシニキタノダ?」

ふよふよ浮きながらインプは質問してくると続けて話す。

「コノアイダモ、アルカゾクガキテナ…オトナフタリハ、オレサマノコエガ、キコエナカッタミタイダガ、コドモハキコエタラシク、オレタチハ、ハナシタノダ…ソイツトノハナシハ、トテモタノシク、キョウミブカカッタノダ。」

インプはそう楽しそうに話した後、少し悲しそうな顔をしたように僕には見えたんだ…。

「デモナ、ソイツハ、エラソウニ、ズット、イスニ、スワッテイタノダ…オレサマガ、ナカナカアルカナイ、ソイツヲミテ、チョットシタイタズラ、ヲオモイツイタ…」

僕達はインプの話に耳を傾けているとインプは続ける。

「ソイツハ、ズット、アル、ヌイグルミヲ、ダイジソウニ、モッテイタンダ…オレハ、ソレヲトリアゲ、ミズウミニ、ナゲテシマッタノダ……。ソイツハ、ヒッシニサケンダケド、ヌイグルミハ、ソコニシズンデイッタノダ…。」

そこまで言うと…インプは涙を流し始める。

「オレハ…マチガッテタノカ?ツイ…イタズラダトオモッタノニ…オレハナゼカソノショウジョノ、ナミダニザイアクカンガウマレテ…オレハニゲタノダ…ソノショウジョノ、キオクヲケス、マホウヲカケテ…。」

僕は一歩踏み出しインプに声をかける。

「もしさ!君がその子に謝りたいなら僕達がここへ連れてこようか?」

らいとも僕が質問したインプの答えを待っている。インプはう〜んと考え込むと数分後、口を開いた。

「ワカッタ…アノショウジョヲ、ツレテキテクレナイカ…。」

インプの答えに僕達の行動は決まった。僕達は即刻、ローラの元へと向かい彼女に経緯を話したんだ。ローラが悲しそうな顔をして考え込んでいた。すると答えてくれた。

「お話は分かったわ…ただ…私は車椅子だし親は厳しくて中々外へは出して貰えないの…。」

ローラは悲しそうな声で呟いた。すると僕にいい考えが浮かび提案した。

「じゃあ…ローラのコピーを用意すればいいんだね?」

「えっ?どういう…事?」

ローラは不思議そうな顔をして僕を見ている。

僕は魔法に集中する…。

「『生活魔法!立体コピー!』ローラを出現!」

僕が魔法を唱えるとローラの隣りにローラをもう一人出現させた。らいとは隣りで呟いた。

「さすが…みら!ナイスアイディアだ!」

するともう一人の自分をジロジロ見ているローラが嬉しそうに言った。

「うん!ありがとう!これなら私も外へ出れるわ!」

僕達はまた湖へと車椅子のローラを隠しながら連れて向かったのでした。そして湖に到着すると僕達とローラは湖の前でインプに声をかけたんだ。

「インプーー!!連れてきたよ!」

僕が叫ぶと辺りはシーンと静まり返っている。

「おかしいな…ついさっきまで居たのにな…」

らいとがそういうとローラの表情は曇る。

「私が…きたから、出てきづらいの…かな…。」

ローラが呟くと…湖の湖面が震え…ゴゴゴと地響きが聞こえてきた。すると湖面から巨大なカニのハサミが現れた!そして徐々に姿を現す。そこには先程のインプの姿ではなく巨大なハサミをもったカニモンスターが現れたんだ。

「なんだあれ!?」

僕が叫ぶとらいとは冷静に僕に答える。

「みら!?見てみろ?あいつのハサミに捕らえられてる奴の姿を!」

らいとの声を聞きモンスターのハサミを見ると片手でぬいぐるみを抱きかかえたままハサミで締め付けられもがいているインプの姿があった。

「インプ!?」

僕が呼びかけるとインプは僕達に気がついたようだ…。こちらを見ると苦しそうに声を出した。

「オマエラカ…ツレテキテクレタ、ヨウダガオレハ、シクジッタラシイ…ヌイグルミハ、ブジダ…カエスゾ……」

インプがそう言うとインプの身体は紫に輝きだしローラのぬいぐるみは光だし宙に浮くとローラの目の前にふわりふわり落ちていきローラはぬいぐるみを手にすると抱きしめたんだ。

「うぅぅぅ…ありがとう…インプさん…。」

ローラが目に涙を浮かべ声にならないようなか細い声で答えた。彼女の言葉にインプはフッと笑みを浮かべると徐々にその身体は消えかかっていく…。

「ゴメンナ…アリガトウ……。」

僕達の耳にインプの最後の声が聞こえたかと思うとインプは巨大なハサミで挟まれ消えていく…。インプは自分のイタズラでぬいぐるみを池に捨てた事を心から謝りたくて湖の中を探していてあのモンスターに捕まってしまったんだろう…僕はそう推理したんだ。

「インプ!……なんでだよ……。」

僕は膝を落とし手をつきながら言う。目から涙がこぼれてくる。らいとは僕の肩に手を添えてくれて言ったんだ。

「あいつの仇…とってやろうぜ…。」

らいとはそう言うと僕にローラを守るように指示してくる。僕が頷き魔法を唱え始めるとらいとは僕達の目の前に立ちカニのモンスターを睨みつけている。するとモンスターは水面からザバーーっと大きな音を立てて姿を現した。高さはビル二階位で横は車二台分くらいの人間の役三倍くらいの大きさだ。モンスターは出てくるとじっとこちらを見たかと思うとらいと目がけモンスターはハサミで攻撃を仕掛けた!らいとはサッと右のハサミを避けると更に左からのハサミも前転しかわす!

「凄い……」

ローラが呟いたところで僕の魔法の詠唱は終わり彼女を魔法で包む。

「生活魔法!超強化ガラス『バリア!!』」

彼女の足元から光が溢れ透明で緑がかったバリアが包み込む。するとローラが声を出した。

「緑の光…バリア?ありがとう……。」

ローラがバリアに包まれ安心した僕はらいとの隣に立ち武器を構える!らいとが魔法を貯め始める。そして僕は巨大なモンスターに飛びかかりながら叫ぶ!

「マジカルステッキ!!モーニングスター!鉄球巨大化!!たぁぁっ!!」

僕のモーニングスターは巨大化しモンスターに向かって飛んでいく!鉄球はぶつかりモンスターの巨体は吹き飛ぶ。ドゴーンという衝撃音と衝撃で辺りは揺れる!

「どうだ!僕の技は!」

僕が叫ぶとぷるぷるしながらモンスターはその巨体を起こしてくる。そして我を失い暴れ狂っている。モンスターが弾いた岩がローラに向かって飛ぶ!

「キャッ!!」

ローラが叫ぶ!でも僕の魔法で弾かれたのだった。弾かれた岩は近くの岩に飛んでいき激突!粉々になったのでした。らいとはローラの前に立つと次の岩がらいとめがけ飛んでいく!

「はぁぁっ…うりゃあっ!!」

らいとが叫び岩にジャンプ!飛び乗るとそのまま岩を足蹴り!高く飛ぶとモンスターに向かって銃を構える!

「レールガン!!『サンダーショット!!』」

らいとの銃は光り輝き銃口から雷光が溢れ出し巨大な雷の弾丸になるとモンスターに向かってレーザー砲の様に発射される!!バリバリと言う巨大な音と共にモンスターを捉え焼き尽くす!!

ぐぁぁぁぁ!!と言うモンスターの叫び!

モンスターは身体の炎を消す為、湖の中へと水を求め潜って行ったのでした。するとしばしの静寂に辺りは包まれた。

「あいつ…消滅したか?」

らいとはそういうと湖面を見ている。すると突然湖面から大きな水の弾丸が僕達に向け飛び出してきた!

「うわっ!なに?まだ生きてる?」

僕が叫ぶとらいとはローラを守るように弾丸をかわしている!そして僕に聞いてきた。

「みら!?奴を水中から出せるか?見えないとこから飛んでくるのは面倒だ!」

僕は頷くと武器を構えて魔法を唱える。

「マジカルステッキ!ステッキパワーオン!『ウォーターブレイク!!』」

ステッキを振りかざすと湖面は大きく割れてモンスターがその大きな姿を見せた。その瞬間、僕は集中!技を繰り出した!

「追撃だっ!!マジカルステッキ、三叉槍変化!『トライデントフレイム!!』」

ズガガーンとモンスターめがけて三つに分かれた僕の槍の先から超圧縮された火の槍になり無数の突撃が炸裂する!巨大な身体は僕の技でボロボロになっていた…。

「グギギギ……ぐぁぁぁぁ!!」

モンスターは巨大な叫び声をあげるとらいとは前に立ち銃口を向け…叫ぶ!

「レールガン!!『ファイアーボルト!!』」

銃口から巨大な爆炎が吹き出しモンスターを捕らえメラメラと焼き尽くしたのでした。

「よし!焼きガニ完成!!任務完了!!」

らいとは満面の笑みで僕とローラに伝えた。

「やったねらいと!」

僕がローラを見るとホッとしたようだ。モンスターが消滅すると…十戒の様に割れた湖の水は戻っていき辺りはゆっくり静かになっていく……。

「インプ…サンキュ……」

らいとは一言呟いた。ローラも車椅子で湖に叫ぶ。

「インプさん!本当にありがとう…」

僕がふと足元の何かに気がついた。

「なんだろ…これ……。」

それを拾い上げるとクマの形をした『何か…』だった。

「あれっ?それって俺が拾って湖にぶん投げた…物だな?」

らいとがそう言うと…急にその『何か』は生命が宿ったかのように動き出したんだ。『何か』は手足を動かしたり首を振ったりしている。その光景は僕達の目の前で踊ってるような不思議な出来事だ……。そして動きをピタリと止めると僕達の方を見て話し始めた。

「お?お前達!無事だったか?」

クマのぬいぐるみモドキに驚いている僕達にそいつは声をかけてくる。

「えっ?あなたって……もしかして……?」

ローラが驚き質問するとそいつは器用にぬいぐるみの手足を動かしながら身振り手振りを交え話してくる。

「ん?俺はインプ様だ!あの時…俺はモンスターのハサミで身体を引き裂かれ…消えた。」

僕も唖然としながら質問してみた。

「よく…戻ってこれたね?」

インプはぬいぐるみの身体で続きを語った。

「ああ…水の中に沈む裂かれた身体は偶然湖の底にあったこの『人型(ぬいぐるみ)』を見つけた…そして俺も一度消えたと思ったら…気が付くとこの人型に宿り意識を取り戻したって訳だ。」

僕達三人はインプの話を聞いていると…ローラはインプに声をかける。

「そうだったのね…生き返ってくれて良かった…私のクマーありがとう…。」

ローラの目から涙が一粒落ちた。インプはその姿を見て涙に照れたみたいだ。

「良かったね、インプ。そうだ!これからどうするのさ?」

僕はインプに質問をした。インプはその事も考えては無かったようでぬいぐるみの身体を動かしながら考えているとローラが口を開いた。

「ねぇ…もし良かったら…私の家にこない?」

急なローラの提案にインプは挙動不審だ。

「な!なんだと?…この依代になっている人型は元々ボロボロで持ちそうもない…きっとコレはここに大分前に捨てられていた物なのだろう…。そ、それに…俺様が人間なんかと…暮らす…だと?」

インプが慌てているとらいとは声をかける。

「良かったじゃねぇかインプ!温かい部屋に居れるし美味いものも食えるかもだしな。」

インプは更に照れながら言う。

「うるさいぞ!人間!ま…まあ…ここに居ても…退屈…だし…な……。」

僕はローラの車椅子を押して声をかける。

「さぁっ!ローラ!インプ!僕達が送るよ、帰ろ!」

僕は強引に言うとらいとはインプの身体を捕らえローラの膝元にいるぬいぐるみと一緒にローラに抱かせる。

「お!おいっ!」

インプが叫ぶとらいとは僕と車椅子を押すのを変わる、そして叫ぶ。

「みら!じゃあ二人を送って帰るぞ!」

「うんっ!」

こうして僕達は帰路に着いたんだ。

そして…帰り道…僕がローラに抱きかかえられた主人の元へ帰ってきたクマのぬいぐるみを見ると目を閉じ笑みを浮かべたまま、すぅすぅ寝ていたのでした。

「なるほど…こっちに移ったんだね。」

二人がこれから楽しそうな毎日を送れますように…。僕はそう思い笑った…。

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ユメカナっ!! 黒羽冥 @kuroha-mei

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