第9話狐の獣人現る!!


ある日の事、僕達は買い物をしながら街を歩いていた。お腹が空いていた僕達がご飯の話をしているとどこからともなくいい香りがしてくる。

「ん?これは何の香り?」

僕が周りを見ているとらいとはクンクンにおいをかいで臭いの元を見つけたみたいだ。

「みら!こっちだ!」

手招きしながら僕を呼んでいるらいとの元に駆け寄ると指さす方を僕は見た。すると僕の視線の先では行商人が何かを売っていた。行商人の露店の旗には『油揚げ』と書かれている。

「ん?油揚げ?」

僕は頭の中にお稲荷さんを思い浮かべらいとに言った。

「ねぇ?らいと!今日は僕さ、お稲荷さんが食べたいんだけど…。」

らいとはやれやれといった顔で言ってくる。

「ああ…わ〜ったよ!じゃあ今日はお稲荷さんにするか?」

僕はニコニコしながら返事をする。

「うんっ!」

実は、この行商の油揚げ屋さんは最近この街で噂になっていて、僕もギルドでシャノワールさんに話を聞いていたのだ。僕達が店の前で話をしていると、店主は笑顔で挨拶をしてきた。

「こんにちは!いらっしゃい。うちの店の油揚げは『天の大豆あまのだいず』という豆を使ってるんだ。倭国の地で採れた大豆から作っている油揚げなんだ!中々取れない大豆だから貴重なんだぜ!」

僕達が興味津々で聞いていると店主は油揚げの試食をさせてくれたんだ。

「んん??」

僕は口の中に入れると甘みが深く何とも香ばしくとても美味しかった。

「これは…うまい!」

隣りで食べているらいとも納得の味だったようで思わず口に出して言っていた。僕はらいとにお願いをしてみる。

「らいと!この油揚げ!この油揚げだよ!これでお稲荷さん作って欲しいな…」

「わぁったよ…これでうまいお稲荷さん食おうぜ!」

僕がお願いをするとらいとは納得してくれたようだ。

「やったね〜!らいと!じゃあ作ってね!」

僕は上機嫌になった。

「嬉しいな、こんな美味しい油揚げのお稲荷さんが食べれる!」

僕達は油揚げを買うと出店を後にする。多少値段は張るけどたまには…ね。僕達は帰る途中お稲荷さんの話をしながら歩いていたんだ。すると通りに出た所で人が倒れているのを発見したんだ。

「あ!ねぇ?らいと!あんな所に人が倒れているよ!?」

僕がそう言うとらいともその人を見つけたみたいだ。

「あ!本当だ…助けに行こうぜ!」

僕達が駆け寄るとその人…いや…その獣人はうつ伏せで死んだかのように動きもせず倒れていた。

「大丈夫ですか?……ん?…狐の…獣人……かな?」

僕が声をかけるとらいとも獣人を見て答える。

「そうみたい…だな。そういや今朝も狐の獣人を街で見かけた気がする………こいつ…かなぁ……?」

らいとは首を傾げながら言うと獣人は呻き出し言葉を発した。

「う…うぅ……み…みずを………?」

僕は急いで生活魔法を唱える。

「え?あ、う、うんっ!えっと…生活魔法…『クリエイト!ウォーター!!』」

魔法で出したペットボトルの水を獣人に渡す。

「はい!水だよ!」

獣人はペットボトルの水を受け取ると夢中で水を飲む。

「あ!ありがとうでござる!んぐ、んぐ、!んぐ…ぷはぁ!」

水を飲みした獣人は生き返ったと言わんばかりに身体を動かす。

「ああ〜〜助かったでござる!!ありがとうでござる!二人とも!!」

獣人はそう叫ぶとスっと起き上がる。獣人のその姿は太くて長めの尻尾をニョキっと立て目は鋭く口は大きく開き正に狐!と言う顔をしていた。着物を着ていて腰の鞘には刀を携えている。姿を見れば侍?といったような身なりをしていたのだった。すると、らいとが獣人に声をかけた。

「おお!よかったな獣人!」

獣人はニコッと笑顔を返すと僕達に語り出した。

「拙者は倭国の侍に憧れる狐の獣人、『幽狐ゆうき』でござる。実は拙者、最高の油揚げを探すべく旅をしていてな。拙者…恥ずかしながら極度の方向音痴でな…この街の近くの森で迷子になってしまい、やっとこの街に辿り着き空腹で喉も枯れ果てここで倒れたという次第でござる…。」

僕は幽狐に問いかける。

「貴方は倭国からきたのですか?」

そう言うと幽狐は答える。

「左様でござる。」

幽狐はニコニコして頷き、ふと我に返り僕達に質問をしてくる。

「ところでお二人は最高の油揚げの噂…聞いた事はござらぬか?」

僕はシャノワールさんが言っていた油揚げの事なのかを深く知るため確かめるべく聞いてみた。

「最高の油揚げ…か………その油揚げってどんな物なんですか?」

すると幽狐は語り始めた。

「拙者の住んでいた倭国の生まれ故郷には幻の油揚げと言われる『朧揚げ《おぼろあげ》 』と呼ばれる油揚げがあってな…生まれつき身体の弱かった拙者はある時、大病を患い生死をさまよったのだ…。そんな時、母上がその幻の油揚げを食べさせてくれた。拙者はそれから徐々に病気が良くなり大人になるとその病気も治ったのでござる。」

幽狐は目に涙を浮かべて続けた。

「そんな思い出でもあり……拙者を生まれ変わらせてくれた油揚げをもう一度あの油揚……。」

幽狐が話し終えるとらいとが口を開く。

「あ!そう言えばさっき街に油揚げの行商人がいて俺達買ってきたよな?」

僕は頷き、らいとの言葉に続けた。

「最高の油揚げ売ります…だっけかな…旗にそう書いてあった気が…。」

僕達は油揚げの行商人の話を幽狐に伝えた。すると幽狐は真剣な顔で聞いてくる。

「なんだと!?その行商人は今どこに!?」

幽狐に押されて僕は答える。

「確か…まだこの街にいると思う…よ………?」

するとらいとが提案してきた。

「じゃあ早速、幽狐を案内しようぜ!」

幽狐は立ち上がると涙を拭い僕達にお礼を言ってきたんだ。

「かたじけないでござる…。」

こうして僕達は油揚げ屋さんを探したのでした。

僕達の住む街の中央、噴水のある公園、この公園の入口の脇で僕達が立ち寄った店は今朝は開かれていたのだった。が…今はもうどこにもその店の姿はなかった。僕がキョロキョロしながら辺りを見回すと油揚げが入った袋を持って歩いていた女性を見つけて声をかける。

「すみません…ちょっと聞きたいのですが。」

僕が質問をすると女性は不思議そうな顔をして言った。

「どうしたの?」

僕は行商の油揚げ屋さんの事を尋ねた。するとこの公園では一時間前くらいに店をたたんだらしい。詳しく話しを聞くとその女性が今日最後の客で、もうこの街を出るとの事だった。そこで、この街の中を手分けして探すことにした。

「じゃあ手分けして聞き込みいくか!?」

らいとがそう言うと僕も続く。

「そうしようよ!幽狐!」

そして幽狐も答える。

「わかり申したでござる。」

僕達は三人分かれて街に散らばった。そして話を聞いて回り行商人を探し歩いた。

僕が中々情報を掴めず公園に戻るとらいとが座り込んでいた。

そして僕はらいとに声をかける。

「中々いないね!らいと!見つかった?」

「いねーな!もういないんじゃないか?」

らいとも首を振り言った。

僕達が諦めかけていると幽狐が戻ってきて声をかけてきた。

「お二人共!!行商人はもうこの街を出たみたいでござる!!」

幽狐はそう言うと僕達はやっぱりかと顔を見合わせる。

すると幽狐は僕達の元まで来ると息を整えながら話す。

「でも、先程この街から旅立ったらしく、今なら追いつくのではないかと言われ申した!!」

僕達は顔を見合わせ頷いた。

「追いかけよう!!」

らいとは駆け出し僕も後に続き答える。

「うん!!」

こうして僕達は街を出たと言う情報を頼りに行商人を追いかけた。街を出ると数名の通行人がいて行商人の事を尋ねると半刻ほど前にここを通り西に向かったらしい。僕達は急ぎ足で行商人の後を追った。数キロほど進んでも誰の姿もない…。諦めかけた僕達。すると…らいとが急に立ち止まる。何かに気づいたみたいだ。

「近くに何かの気配を感じるぞ…あそこだ!」

らいとはそう言うと気配のする方向を指さした。

「行ってみようよ!」

僕がそう言うと二人も頷きその方向に走る。すると幽狐が何かを発見して叫ぶ。

「あ!あそこ!!お二人!!あそこにモンスターに襲われてる行商人がいるでござる!?」

らいとは走りながら答える。

「助けようぜ!!!」

僕も後を追いながら答える。

「うん!!イノシシのモンスターかな!?」

「あいつに突進されたらやばいぜ…。」

らいとは冷静に言う。すると後ろから幽狐が言った。

「あいつはイノシシモンスター『猪鬼ちょき』でござる!!」

近づいて行くとその猪は僕達を見つけ、突然咆哮をあげた。

「ぐおぉぉぉ!!」

すると猪鬼は人型に変化したのだった。そこには獣人化した猪鬼が立っていた。

「なにっ!?あいつ…獣人だったのか…」

らいとはそう言うと間合いをとり立ち止まる。

猪の顔にガタイのいい筋肉質の身体。分厚い毛皮でできた防具を身にまとい巨大な斧を手にしている。体当たりだけでも十分攻撃出来そうな巨体だ!すると猪鬼は叫びながら言った。

「ぐはは…お前ら何者だ?俺様は猪の獣人、『猪鬼ちょき』!この近くの山に住む山賊だ!ここを通りたきゃ身ぐるみ全部置いてきな!」

猪鬼はそういうと僕達を威圧してくる。声だけでも大きく空気が揺れる程。凄いパワーを持っている事は何となく感じる。らいとはそのパワーを分析しながら言った。

「あいつ…なんとか足止めしないと…だな……」

その時、僕は閃いた。

「任せてよ!じゃあいくよ…『生活魔法!!ペイント!!』」

僕は集中し魔法を放った!僕の両手から赤色のペンキが吹き出し猪鬼を赤く染めあげた。

「目潰しか?やったでござるか!?」

幽狐がそう叫ぶと猪鬼はワナワナ震え狂いだし僕達に猛突進してくる。

「ぐおぉぉぉ!!」

その突進を必死に避ける!

「やべぇ!猪突猛進とはよく言ったもんだぜ!

真っ直ぐ突進してくるから目潰しあまり関係なかった!!」

らいとはかわしながら叫ぶ。

「うわっっっ!!」

僕もなんとか攻撃を避けた。すると猪鬼はそのまま僕達の後ろにあった大岩に激突すると大岩は粉々に砕けたのだった。らいとが僕に言う。

「みら!?あいつ…突っ込んでくるだけだけどパワーがハンパねぇ!気をつけろ!」

猪鬼が砕けた岩の下から身体の埃を払いのけ立ち上がるとらいとは猪鬼の前に立ち塞がり僕に叫んだ。

「みら…俺が囮になる…足止めを頼む!」

らいとは僕を信頼してくれている。僕にできる限りの事を考え僕の中で作戦は出来上がった。

「わかった!あいつの足を狙うよ!!」

すると猪鬼は話しかけてくる。

「馬鹿め!お前達が何をしようと俺様のパワーの前では無力だ…大人しくぶっ壊れろ!」

猪鬼はそう叫ぶと僕達に猛突進してくる。僕は武器を構える。

『マジカルステッキ!鎖鎌変化!』

僕の新しい武器マジカルステッキの出番だ!

マジカルステッキはその姿を変化させて鎖鎌へと形状を変える。そして…。

『ギムルチェーン…!!』

僕の投げた鎖鎌は猪鬼目掛け回転を増し飛んでいく!

「たぁぁぁ!!」

僕が叫ぶと猪鬼の足は鎖で縛り付けられ猪鬼は派手に転ぶ!見ていた幽狐が叫ぶ。

「足止めになったでござる!」

らいとが僕に合図をしてくる。

「よし!やったぞみら!?」

だが…猪鬼が転倒した先を見ると土煙が消えていき立ち尽くす猪鬼が怒り震えている。

「小賢しい!貴様らぁぁぁ!!」

猪鬼はそう叫ぶと頭上で斧を振り回している。僕達は猪鬼の斧からくる風圧に押される。

「凄い風圧でござる!」

幽狐も猪鬼の技に押されてるみたいだ。そんな僕達を尻目に猪鬼は力を溜め始めた。

「猪鬼ってやつ…凄く皮膚も身体も硬そうだね!?じゃあこれでどうかな!?」

僕は構えると武器を変化させ叫ぶ。

「いくよ!『マジカルステッキ!剣変化!…』」

「そして!『ストレージサーベル!! 』」

僕のスピードに乗った剣技は猪鬼の身体を斬っていく!だが……

「浅い?やっぱり皮膚が硬い!!」

すると猪鬼は貯めていた力を解放する。

「フン!鋼の身体は簡単には切れん!いくぞ!『猪突激連波!!』」

猪鬼は僕達目掛け渾身の技を繰り出した!!僕達に巨大な衝撃波が襲いかかってくる。

「くっ!くぅっ!!」

幽狐は衝撃波をくらい吹き飛ばされる。らいとは僕の前に立ち塞がる!その衝撃波は恐ろしく強烈だけど吹き飛ばされように耐えている!

「くっ!耐えろみら!」

「うぁぁっ!」

僕も吹き飛ばされないよう必死に耐えた。だが猪鬼はフルパワーを見せる!僕達の身体も衝撃波で吹き飛ばされそうだ。

「がああっ!」

僕の盾になっていたらいとの身体も宙に舞い落ちる!

「ぐうっ!」

そして僕も吹き飛ばされらいとの隣りに落ちてしまった。

「うあぁっ!」

僕達三人は地面に叩きつけられ苦しむ。それを見ていた猪鬼は笑いながら声をかけてくる。

「ふん。お前達なんぞに俺様が負ける訳なかろう?ハッハッハ!これに懲りたら身ぐるみ全部置いて立ち去れ!」

猪鬼はそう叫ぶと僕達を見て笑っている。すると猪鬼は行商人の元へ行き、笑いながら言った。

「こいつが持っていた油揚げは本当に美味かったぜ!……」

そう言うと猪鬼は僕達の目の前で行商人の首を掴み持ち上げ締め始める。

「こいつはこの油揚げに命をかけてるんだとよ。だから命がけで油揚げを守ると反抗してきた。だがな…この俺様に反抗した…罪は重い!!!!!」

僕は足が震え動けずにいた。らいとも隣りで拳を握り今にも飛び出しそうだ。

猪鬼は行商人の首更に締め上げる。すると行商人はもがきながら声を発した。

「…いいだろ別に…私が精魂込めて作ったのだから。人を笑顔にし…人を助ける事が出来る油揚げだ!お前なんかに一口も食わせたくないっ!」

幽狐は呆然と見ていたけど静かに沈黙し身体の奥底に力を感じ取れた。それを見て僕は何か得体の知れない力を感じたんだ。

行商人が涙を流しながら叫ぶともっと締め付けられた。行商人は程なくガクッと動かなくなった。

「!?おっさん??」

らいとは叫ぶと立ち上がる。目を閉じ静かに魔力を溜め始める……。猪鬼は動かなくなった行商人を地面に捨てると行商人を見て言った。

「ふん…死んだかと思ったらまだコイツ息があるな…まあいい…ここに居る全員を俺の餌にしてやる……。」

僕はそれを見て身体を起こし膝をつき武器を変化させていく。そして僕は語った。

「そう…そんな優しい油揚げ屋さんを侮辱したコイツは許せない。油揚げ屋さんは…どんな人にも優しい油揚げを作ってくれるんだ…お前の好きにさせないっ!!」

僕は叫び猪鬼に攻撃を仕掛けた!

「猪鬼!これならどうだ!?『マジカルステッキ!ブーメラン化!生活魔法!実体鏡!ブーメラン分身化!フェザーウィング!!』」

僕の硬い刃のブーメランは実体鏡で分身し無数の刃が猪鬼の身体を切り刻んでいく。

「ぐおおおおぉ!!」

猪鬼はもがきながら苦しむ。

「おお!!皮膚を覆ってるものを削ぎ落としたでござる!!」

幽狐も興奮し叫ぶ!するとらいとの魔力も溜まったようだ。猪鬼の前に立つとらいとの手にしたレールガンがキラリと光る。銃を構えらいとが叫ぶ。

「うおおおおぉ!!皮膚が硬いなら焼いちまうぜ!!!『レールガン!!!サンダーショット!!!』」

らいとの超圧縮された巨大な雷は猪鬼の全身を捉え焼き尽くす!

「ぐあぁあああっ!!」

雷で身を焼かれ苦しむ声をあげた猪鬼はフラフラになっている。幽狐は驚いて言った。

「凄いでござる!!こんがりきつね色でござる!!」

猪鬼は膝をつき口を開けて呆然としている。

「ふっ!皮膚が硬ぇなら中まで焼けちまえ!!!」

らいとが捨て台詞をはいて僕に合図をした。僕は幽狐に伝える。

「後はトドメだね!!!」

「幽狐???」

らいとが困惑していると…その時…辺りにふわりと薄い霧が立ち込めてきて幽狐はフッ…と消えた。辺りは静寂に包まれる。

「くるか…殺気が立ち込めてきた!」

らいとが察知して呟く。幽狐の声だけが辺りに響き渡る。

「いくぞ!僕の技……『弧月流:上弦、朧!!』」

どこからともなく幽狐が姿を現し敵を真っ二つに斬った!

「ぐああああぁあああああっ!!!」

猪鬼は切り裂かれ断末魔の叫び声をあげ絶命したのだった。それを最後に猪鬼は消え去っていった。

「やるな!侍!!」

らいとは笑顔で幽狐に声をかける。

「ありがとうでござる。お二人も本当に強いでござる…まだまだ世の中強い人が沢山いるでござるなぁ…」

幽狐がそう言うとらいとも返す。

「いや、幽狐も流石侍だ!やるじゃねぇか。」

「うん。本当に凄かったよ!」

僕はそう言ったけど本当は二人がキレた時めちゃくちゃ怖かった…でも優しい二人に戻ってくれて…。ほっと胸をなでおろしたのでした。そして…僕達は行商人も連れて街に戻り傷を癒しました。

数日後……

「お二人共、本当にありがとうでござる!」

僕達にお礼を言う幽狐。

「油揚げ結局全部イノシシに食われちまったな……」

らいとが残念そうに言う。

「そうだね……残念……」

僕も本当に残念だった。でもそんな幽狐が一番ガッカリしてるよね。幽狐を励まそうと考えていると…。

「あの油揚げ屋の油揚げは正確には違ったでござるよ!」

幽狐はニコリとして言った。

「そうだったのか?」

らいとが返すと幽狐は語り出す。

「拙者が幼少期に食べた、拙者を救ったあの油揚げは今回の油揚げ屋の父上が生前に作っていた時の物だったらしいのでござる…彼はそんな父の跡を継ぎ今は修行をしているそうでござる。拙者は彼の心意気を応援してるでござる。きっといつか最高の油揚げを作ってくれると信じているでござる。」

らいとはニコリと笑って言った。

「そうか!あいつが幻の油揚げを作った親父の息子だったのか!」

「あの人ならきっと幻の油揚げ作ってくれるね!」

僕がそう言うと幽狐は答えてくれた。

「拙者も楽しみにしてるでござる!」

そう言って幽狐は僕達に笑顔を向ける。

「拙者も今回の戦いで力不足を感じたでござる。まだまだ修行が必要って事でござるな…では…二人とも…またいつか会いに来るでござるよ!」

幽狐は手を振り立ち去っていく。らいとは後ろ姿を見ながら声をかけた。

「ああ!また遊びに来いよ!幽狐!」

「気をつけて旅続けてね!幽狐!」

僕も挨拶をすると幽狐は立ち止まり言った。

「お二人共!では、さよならでござる!」

こうして幽狐はまた幻の油揚げを作ってもらう為、そして自分を強くする為に旅立っていきました。

「幽狐…方向音痴。大丈夫…かな?」

僕は思い出して言うとらいとは答える。

「何とかなんだろ」

数分後……

「あ〜〜〜っ!!」

そして僕はある事に気づき叫んだ。

「ん?どした?みら?!」

らいとは僕に聞いてくる。

「そう言えばらいと!!油揚げなくなったじゃんかーーー!!!」

僕達は戦いの末、買っていた油揚げは粉々になって無くなったのでした。

「うお!!わぁーったよ!また他の油揚げ買って作ってやるから落ち着けみら!!」

らいとはそう言いながらも焦っている。

「らいと…?食べ物のうらみって……」

僕がらいとを睨むともっと焦って言った。

「ごめんごめん許せ!!」

「五目稲荷と普通のお稲荷さんどっちも作ってよね。」

その時の僕の顔は凄く意地悪な顔だっただろね。らいとがやれやれと言う顔をしたので僕はおかしくなり笑ってしまった。らいともつられて笑ってくれたんだ。

こうしてまた苦難を乗り越えた僕達は成長できたの…かな?

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