第14話「旅する金のレストラン」

「貴殿も怪物との旅はつらかろう」

「もうホント、許してもらった上に同情されるなんて、今なら僕死んでもいいです」


 起きた鳥人さんたちに事情を話したら、許してもらった上に同情してくれた。

 涙があふれた。


「がんばれ、としか言えんが……ああ、とにかく頑張れ」


 たぶん鳥人さん言葉が見つからなかったんだね。まださっきのアレに口をつけた後遺症があるみたいだ。


「実は我らは傭兵家で、先日西の学術都市メーティスで少し有名になったところなのだ。その前にあの金のテーブルに良く似た銀のテーブルを使う旅のレストランで料理を馳走してもらい、そのあまりのうまさに驚愕してな。あれのおかげで戦にもうまく勝つことができた。力が湧いてきてな」


 へえ、すごいなあ。こっちのレストランとは真逆だよ。


「――ん? 銀のテーブル?」

「ああ、そうだ。黒髪赤眼の若い亭主がいて、金色のスライムと、あと白いゴーレムもいたな。珍しい合わせだった」


 黒髪赤眼。それはツェペリ君に聞いたお兄さんの――ヴラドさんの特徴だ。

 旅するレストランというフレーズもあるし、どうやらそれ、ヴラドさん本人っぽい。


「あの、僕もそれ気になります。その人はどこに行けば会えますか?」

「いやあ、それが分からんのだ。〈旅する銀のレストラン〉はひとところに留まらない。我らも二度目の来訪を誓ったが、まだ見つけられていなくてな。よほど運が良いか、情報を丹念にたどっていくしか方法はないだろう」


 うっわー、これ見つけるの苦労しそうだな。


「まあ、そのうち会えると信じているが」

「そうですね……でも気を付けてください。次もうちに捕まる可能性が同時に存在するので……」

「あ、ああ……というか君は一応ここの亭主なんだろう?」

「一応です」


 迫真の顔で言った。


「逃げられませんから……」


 それに、旅自体は楽しいのだ。

 ンタさんもまあ、僕の知らない情報を教えてくれたりはするし、一人で魔王城目指して旅していたころよりずっと楽しい。

 お金も一応ある。こうして生贄をささげているからね。……これやっぱり完全に賊だよね。でも僕気にしないことにしたよ。真面目に考えたらメンタルブレイクするからね。


「そ、そうか……まあ会いたいならあえてこの〈旅する金のレストラン〉の噂も広めてみよう。もしかしたら対抗心を燃やしてあの銀のレストランの亭主が近づいてくるかもしれない」


 鳥人さんが言った。

 ふむ、やっぱりひとまずはその方針を取るしかないか。


「ただ、これからも君だけは彼女のアレから客を救ってやってくれ……それがせめてもの救いとなるように……」


 任せて。回復薬系の薬草常備しとくようにするよ。


「では、そういうことでな……」


 三人の鳥人さんたちはそのままフラフラと飛び去った。律儀にもお金をおいて。

 ちょっと、ホントに僕涙が止まらないんだけど。


「おい! 馬鹿! そろそろ次に行くぞ!」


 嗚呼……死神が次なる獲物を求めて僕を呼んでいる。


「分かりました、分かりましたって! 今行きますから! お願いですからその鍋の中身を僕に向けてひっくり返そうとしないでください!!」


 僕の旅はまだ始まったばかりだった。


 ―――

 ――

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