エピローグ

「どう?」


「安直だね」


「ゔっ」


「まず私を殺すな?」


 そう言いながらも、彼女は笑ってくれた。


「でもね。一つだけ詩の中で、現実と共通している事があったよ」


「えっ…………パーカー買いに行ったことあったっけ」


「さぁ? どうだろうね」


 忘れているのか?

 それは非常にまずいぞ。

 彼女の僕弄りネタに追加されてしまう。

「物忘れが酷い」と。


「残念だけど、買いに行ったことないよ」


 ニヤニヤしながら彼女は告げる。


「揶揄うなよ!」


「ごめんって」


 そしてどちらからともなく吹き出した。


「あれ、もうこんな時間だね。今日はそろそろ帰ろっか」


 彼女が腕時計に目を落として言った。僕は壁にかけられた時計を見る。


「まだ四時だよ?」


「奏大……いつも言ってるじゃん……あの時計は止まってるって……」


「あ……」


「しかも窓の外を見てご覧なさいよ」


「真っ暗……」


「やっぱり奏大は奏大だねぇ」


「何だよそれー」


「だから、私は奏大が好きだって言ってるのさ」


 そう言って逃げるように、彼女はそそくさと帰ってしまった。残された僕は彼女の座っていた椅子を眺める。


「これが小夜曲の最終章……?」


 そう呟いた僕の背後で、真っ白な光が夜空を駆け抜けた。

 その光に背中を押されたように、行ってしまった彼女を追う。

 いい所だけ彼女に取られるわけにはいかない!


 必死で走って追いついた彼女に、後ろから抱き着いて、柄にもないけど、耳元で囁いてみる。


「ありがとう、僕もだよ」


 頬が真っ赤になった僕らが顔を背けたまま手を繋いで帰る頭の上を、ここ数年で一番眩い流星群が、囃し立てるように流れ過ぎていった。

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星降る夜に輝く詩 鈴響聖夜 @seiya-writer

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