サクラ

夏谷奈沙

サクラ


 ふわり、と花びらが宙を舞う季節になった。


 風に揺られて楽しそうにする君を僕はずっと見ていた。


 止まりそうで、止まらない。


 力尽きるギリギリまでひらひらと遊ぶことをやめない。


 おひさまを一身に浴びて、きらきらと輝いてさえいる。


 そんな君を僕はずっと見ていた。


 どうしてそんなにも楽しそうなのか。僕にはわからない。儚く散ってしまうくせに。


 ふと花びらが僕の頬を撫でる。


 それが僕の目の前をひらめいて、受けとめようとすると僕の手を、ふわり。といたずらに躱すから、慌てふためいてしまう。


 別に受けとめなくてもよかったけれど、受けとめたくなった。受け止めなきゃ、だめだと、そう思った。


 不恰好な姿勢を直して手のひらを見ると、耳元でクスクスと笑い声が聞こえる。


 ただの一枚の花びら。


 でも、どれよりも大切で、特別な一枚。




 サクラ、君がどこにいても、何になっても、僕は君を見つけるよ。


 愛してる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サクラ 夏谷奈沙 @nazuna0343

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ