学園

「ほぉ~でかいな。ここが王立学園か」


 国王との会話から2日後、クリスは王立学園の目の前に立っていた。


 クリス自身は学園に通わずに賢者や大賢者になったので、名前こそ聞いたことはあったが、実際に見るのは初めてでスケールの大きさに驚いた。

髙い塀に囲まれた学園を眺めながらゆっくりと入り口へ向かって歩くと、両側に衛兵の立っている門が見えてきた。


「すいません」

「はい、いかがされましたか?」

「本日からこの学園で教師をやることになったのですが...」

「さようでございますか、ではこのまま真っすぐ歩いていかれると、校舎の入り口が見えてきます。そこに受付のかたがいらっしゃるので、そこで詳しく聞いてみてください」


 そう言いながら、門を開けてくれた。


 クリスは衛兵にお礼を言い、そのまま真っすぐ歩いて校舎のほうへと向かった。少し門から距離があり、3分ほど歩いたところでやっと校舎の入り口が見えてきたのでそのまま中へ入り、受付嬢に

本日伺った要件を話した。担当者を呼んでくるから少し待っていてほしいと頼まれ、近くに置いてあった椅子にゆっくりと腰を下ろした。


 5分ほど待ったころに、先ほどの受付嬢と一緒にもう1人の女性が近づいてきた。


「クリス様、お待たせいたしました。学園長のところまでご案内いたします」


 その女性が俺の名前に敬称をつけていたことに、受付嬢は少し驚いていたので、目の前にいる女性がこの学園で相当上の立場なんだろうなと予想できた。


「あぁ、ありがとう。よろしく頼むよ」


 俺はそう言いながら席から立ち上がり、女性の後ろをついていきながら学園長のところへと向かった。

 前を歩く女性は淡々と進んでいき、5階にある学園長室の前まで一言もしゃべることなく到着した。

 女性は扉をノックし、


「学園長、クリス様をお連れいたしました」


 というと、中から「入りなさい」と一言返ってきた。

 女性に続いてクリスは中に入ると、目を瞠るような美人が待っていた。


「初めまして、王立学園の学園長をしております〖ティアナ・ダールベルク〗と申します。よろしくお願いしますクリスさん」


 強いな。クリスは学園長をみてそう思った。それもそのはず彼女は現役を退いているが、元大賢者10位の実力者。

まだ現役を続けられるのではないかと思うくらい、彼女から漏れ出る魔力は濃かった。


「存じておりますよティアナ殿。クリス・リチャードです。流石元10位だけはありますね。とてもお強いようで」

「いえいえ、昔に比べたらだいぶ力も衰えましたよ。それに10位だったのは、たった1年間だけでしたので」


 少し照れながらも学園長は謙遜していたが、

 当時弱冠18歳にして賢者見習いの称号を取得しそこからたった15年で大賢者まで昇りつめた。そして35歳の時に現役引退し、王立学園の学園長の座に就いている。

 そんな彼女を〖グレイス王国〗で知らない者はほぼいないだろうし、学生にとっては憧れの存在だ。

 それに年齢は40代近いはずだが、20歳代といわれてもわからないくらいの美貌を持っていることから男性ファンが今でも数多くいるそうだ。


「そんなご謙遜なさらずに。あと僕をここまで案内してくれた彼女も相当な実力者にみえますね」


 学園長の横に立っている彼女を見ながらそう言うと、


「ふふっ、流石ね。彼女は私のお手伝いをしてくれているんだけど、元賢者の称号を持っていたのよ」

「お二人に比べたら全然ですよ。初めましてクリス様、ティアナ様のお手伝いをしている〖ニコル〗と申します。よろしくお願いします」


 部屋に案内するまでの彼女と違いとても笑顔が素敵で可愛らしかった。

 俺は少し照れながらも、短くよろしくと返した。


「それにしても本当にこの国最強の賢者様が、まだ弱冠19歳だったとはね。噂では聞いていましたが、驚きましたよ。正直まだ少し疑ってる自分がいるわ、ニコルはどう?」


 学園長がそう驚くのも無理はない、俺は基本祝賀会やパーティーなどめんどくさいことが嫌いだから欠席するようにしているため俺の顔を実際に知っているのは

 この国でも上位貴族や賢者の一握りだけだ。なので俺の正体に関する噂は様々なものが飛び交っている。


「はい、私もまだ少し信じられていないです。クリス様も強そうに見えますが、学園長ほどにどうしても見えないんです」

「ははは、見た目的にそう思われても仕方がないですね。まぁお時間あるときにでも、実力をしっかりお見せいたしますよ。で、そろそろ本題のほうにはいりませんか?」


 雑談が長く続いてしまったので、クリスはそう切り出した。


「そうだったわ、まず今回教師のお仕事を引き受けてくださりありがとうございます。クリスさんには、今年入学した生徒のSクラスを担当してもらいたいと思っております。」

「あぁ、お礼はいいさ。国王から十分にされている。Sクラスにはどんな生徒たちがいるんだ?」

「Sクラスは、基本的に上位貴族の実力者が揃っています。一部平民出身者もいますが、あまり仲は良くないみたいです」


 なるほどな。ある程度予想はしていたが、貴族の子供は基本的にプライドが無駄に高いからな...。この仕事一筋縄ではいかなそうだな。


「わかった、それで生徒たちには今日から会えるのかな」

「はい、もちろんです」

「では、案内をよろしく頼むよ」


 クリスはゆっくりと立ち上がり、学園長とニコルの後に続き、Sクラスへと向かっていった。


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最年少大賢者の俺が、なぜか教師をやることになったのですが みやび @bigboy0402

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