6話

 喉が渇いた。

 俺は暗い部屋で体を起こす。

 そこが自分の部屋かどうか混乱したのは、様相がいつもと違ったからだ。

 俺は服を着ていない。ベッドに布団もかかっていない。

 何より決定的に違うのは、横から小さく寝息が聞こえることだ。


 痛み回る頭を押さえて思い出す。

 初めて触れた膣の感覚を思い出す。

 まともに目にした女性の裸体を思い出す。

 美月。

 俺はこの子と今日初めて会ったはずなのに。偶然学部が同じなだけの知らない女のはずなのに。

 俺は知ってしまった。この子の胸の感触も、つたない舌づかいも、どんな声を上げるのかも、へったくそな口淫も俺を見上げる瞳も。

 俺は汚してしまった。


 しかも、もう昨日だ。


 俺はコップを呷った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

再開の欠片 North @NaoNorth

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る