コンタクトケース
澪凪
視力Bの君と視力0.01もない私
2つ並んだコンタクトケース
狭いユニットバスの縁に置いてある
どっちがどっちのか分かるように
蓋に「な」「い」と書いて
お互いに書きあった初めての夜を思い出した
「なぎさ、俺の眼鏡どこ?」
「いーくんの眼鏡はここ!」
そんなバカップルみたいな会話も楽しかった
いつからか君は部屋に来なくなって
「い」と印がついたコンタクトケースは
いつでも使えるように綺麗に乾燥している
ねぇ、いおり?
君が置いていったコンタクトケース、まだ使えるんだよ?
まだ、私のコンタクトケースの隣に置いてあるよ?
色々聞きたいことはある
問いただしたところで私の欲しい答えは返ってこない
「なぎさ、俺のコンタクトケース捨てていいよ」
その瞬間いーくんは、いおり先輩になった
ならばせめて最後に
月が綺麗に輝く日に
コンタクトケースを捨てよう
まだ、月は綺麗なのに
君が見てる月とは違うみたいだね
さようなら
コンタクトケース 澪凪 @rena-0410
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