第12話 聖女様と盗み聞き
◆聖side◆
潜入成功です!
まさかマナさんも、私がコスプレまでして尾行するとは思ってもいないはず。
……いえ、決してストーカーではありませんよ。これは、マナさんが夜野君に変なことを言わないか監視するためです。……本当ですからね?
それにしても、凄く雰囲気のあるお店です。
学校の近くに、こんな綺麗な喫茶店があるなんて知りませんでした。紅茶も凄くおいしいですし。
あっ、このショートケーキ、甘すぎず美味しい……!
それに紅茶にもよく合って、ついつい手が進んでしまいます……!
「はふ……はっ!?」
い、いけない、いけない。今日はマナさんの監視が目的なのでした。
さあマナさん。あなたは私が近くにいるとは微塵も考えていないでしょうけど、私のことをばらさないか、今日はしっかり監視させてもらいますよ!
◆真日side◆
まさかセイさん、俺らを追って来たのか? わざわざコスプレで変装までして。
てか、バレないと思ってるのか? 俺がどれだけセイさんのコスプレを見てきたと思ってる。あんなの、変装の内に入らないぞ。
コーヒーをすすって、横目でセイさんを見る。
紅茶をすすり、ショートケーキを食べて頬を緩めている。
わかる、ここのケーキ美味しいもんな。
「真日? どうしたの?」
「ん? いや、なんでもない。それで、【トワノセイ】さんの話だったか」
「!?」
ケーキに夢中になっていたセイさんが、体をびくつかせてこっちをチラチラ見てくる。
なんか、可愛いな。
「そうだな……端的に言えば、SNSで呟いている通りの感じの人だった」
「ちょっと抜けてる感?」
「そうそう。一生懸命だけど、どこか抜けてる感じというか」
「~~ッ! ~~~~ッッ!!」
言い返したいけど、言い返せない。そんな感じでこっちを睨んできた。
あれ、本当に隠れてるつもりなのか?
「でも本当に優しくてさ。俺がコンビニ飯ばかり食ってるって知って、飯作ってくれたんだよ。それがどれも絶品でなぁ」
「まさか、最近セイさんが呟いてるあの料理って……」
「ああ。俺のスタジオで作ってくれた料理だ」
「うわっ! 何それずっるい! しかもあれを見る感じ、ほぼ毎日……?」
「ああ。ちょっと意気投合して、ほぼ毎日来てる」
「それ、【トワノセイ親衛隊】が聞いたら卒倒しそう」
最近、SNSで現れた【トワノセイ親衛隊】アカウント(非公式)。
セイさんのアカウント、セイさんファンのアカウントしかフォローせず、また呟きもセイさんに関することばかり。
男か女かもわからないが、巷ではもっぱらおっさん扱いされている。
「結構どぎついつぶやきが多いし、注意しなよ?」
「ああ、わかってるよ」
俺はともかく、セイさんに何かあったら俺まで悲しいから。
でもそんな特定される真似はしてないし、問題ないとは思うけど。
コーヒーを飲んでいると、咲也が肘をついて「でも」と口を開いた。
「セイさんの撮影をしてから、真日って生き生きしてるよね」
「……そうか?」
「うん。前はもっと事務的にやってたというか、もう少し疲れた感じだったもん。あ、もちろん楽しんでないってわけじゃないよ。前も楽しんでたと思うけど、今はそれ以上というか」
あー……確かにそうかも。
セイさんと一緒にいると楽しいし、顔見知りだから気を使わなくてもいい。
それにアシスタントとして色々手伝ってくれるから、仕事もだいぶ楽になった。
栄養のある料理のおかげで、最近は調子もいいし。
「そっか。セイさん、真日のこと助けてくれてるんだね。ありがたや」
「ああ。本当に助かってる」
セイさんがいなかったら、もしかしたらどこかで潰れてたかもしれないからな。
改めて言うのもなんだけど、本当に感謝してる。
と。
「ま、マスターさんっ、お会計を……!」
「はい、ありがとうございました」
ん? あ、セイさん。
急いで清算し、ばたばたと店を出て行ってしまった。
「あの人、どうしたんだろうね。ちょっと慌ててるみたいだけど……仕事かな?」
「さあ……?」
何をそんなに慌ててたんだろうか。
俺、セイさんに関して、何かまずいこと言っちゃっただろうか。
それだったらまずいな。帰ったらセイさんに何を言われるかわかったもんじゃない。
「悪い、咲也。俺もこの後用事あるから、今日は帰るな」
「ん、わかったよ。今日は僕の奢りでいいから」
「助かる」
とにかく帰って、弁明しないと。
荷物を鞄にしまい、俺は急いでスタジオに向かっていった。
聖女様の裏アカと秘密の活動を知ってるのは、プロカメラマンの俺だけです。 赤金武蔵 @Akagane_Musashi
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