第8話別れ、そして未來へ、

その一週間後、僕が仕事からアパートに帰ると、玄関の前に美冬が立っていた。

「どうしたの?今日は検査で病院に泊まると言っていたのに。」

「早く終わったので、二人きりでお話しがしたくて、来ちゃった。」

「連絡をくれたら、病院に迎えに行ったのに。とにかく入って。」

僕は美冬をソファーに座らせ、ストーブのスイッチを入れた。

そして、毛布を美冬の肩からかけた。

「こんなに冷えちゃって、大丈夫?」

僕は美冬の横に座り、美冬の冷えきった体を抱えながら言った。

「ありがとう。どうしても話しておきたい事があったの。」

「なに?」

「私、圭吾さんと出会えて、とても幸せよ。」

「僕もだよ。」

「私にとって、圭吾さんはとても大切な人なの。」

「だから、圭吾さんが私と出会ったことで不幸になって欲しくないの。」

「不幸だなんて、僕はとっても幸せだよ。」

「今はそうかもしれないけれど、私がいなくなっても、いつまでも悲しまないで新たな人生を歩んで欲しいの。」

「いなくなるなんて言わないで。美冬がいない世界なんて、僕には考えられないよ。」

「でも、私の寿命は、あと半年も無いのよ。」

「ずっと一緒にいるって約束したじゃないか。美冬にもしもの事があったら、僕も一緒にいくよ。」

「だめよ、あなたは私の分まで長生きして。そして、新しい恋人をつくって幸せになって。」

「いやだ。僕の恋人は美冬だけだよ。美冬との別れなんて僕には、絶対に耐えられない。」

「最初は辛いかもしれないけど、きっと時間が悲しみを癒してくれるわ。」

「どうして、そんな事を言うの。もっと僕を頼ってくれよ。僕は君の悲しみを取り去ると約束しただろ。僕がずっと側にいるよ。」

「あなたには、十分感謝しているわ。あの日会って以来、私はあなたのおかげで、人生の最後にとても幸せになれたわ。」

「そんな、もう終わりみたいな言い方はやめてくれ。」

「私だって、出来ればもっと生きたいわ。十八年しか生きられないなんて・・。でも、これは私に与えられた運命なのよ。どうしようもないのよ。」

美冬の目から大きな涙がこぼれた。

僕も泣きながら美冬を抱きしめた。

二人は、抗うことの出来ない過酷な運命に、ただ泣きながら抱きしめ合うしか無かった。


「いっそのこと、このまま二人で死のうか?」

僕は美冬の耳元でささやいた。

「圭吾さん・・・」

美冬は、僕の目をじっと見つめていた。

「だって、それが二人にとって、一番いいことかもしれないよ。」

僕は、本気で二人で死ぬことを考えていた。

このまま時が止まって、ずっとこうしていられたら、どれだけ幸せだろうか。

今、二人で命を絶てば、それが叶うかもしれない。そんな気がした。

「やはり、私があなたから消えるしかないのね・・・」

美冬が小さな声でつぶやいた。

「えっ、何?」

「ううん、何でもないわ。」

「消えるって言った?」

「圭吾さん、私は運命には逆らわない。だから、最後まで生きるわ。」

「美冬・・」

「いま、二人で死ぬことは決して運命ではないわ。」

「でも、」

「あの時、運命が二人を選んだ様に、きっとこれからも運命が二人を導くわ。」

「どの様に?」

「それは、今はわからないけど・・。」

この先の運命を思い、二人は不安で仕方なかった。


「圭吾さん・・・」

しばらくの沈黙の後に、美冬が小さな声で言った。

「何?」

「私、こわいわ・・私達、これからどうなるの・・」

「美冬・・」

僕は、美冬をきつく抱きしめた。

「大丈夫だよ・・。二人でもう一度、雪虫を見よう、二人が出会った、あの場所で・・。」


そのまま二人は、僕の部屋で一晩を過ごした。

二人とも、不安で離れることが出来なかった。

美冬の体はとても暖かく、ぬくもりに満ちていた・・。


美冬には、わかっていたんだ。自分が死んだあと、僕が正常な意識を保てないであろうことを。

だから、自分の苦しみなど顧みず、なんとか僕を説得しようとしたんだ。

それも知らずに僕は、ただただ美冬を困らせていた。


そして、その時は突然訪れた。


二月のとても寒い日、職場に秋絵から電話が入った。

「もしもし、圭吾さん。」

秋絵の緊迫した声を聞いた瞬間、僕は最悪の事態が起きたことを直感した。

美冬は家で急に意識を失い、救急車で病院に運ばれたと言うことだった。

僕は、祈る思いで病院に急いだ。

体中が震えていた。

病室へ入ると、医師や看護婦、そして秋絵が美冬のベッドのまわりを取り囲んでいた。

「圭吾さん、はやく!」

秋絵は泣きながら僕を促した。

人工呼吸器を付けられた美冬は、目を閉じ苦しそうにしていた。

「美冬!だめだ、僕を置いていかないでくれ!」

僕は美冬の手を握りながら叫んだ。

僕の声が聞こえたのか、美冬の目がゆっくりと開き、僕の顔を見て微かに微笑んだ。

「美冬!しっかりして。」

秋絵が泣きながら叫んだ。

美冬は最後の力を振り絞って、僕に向かって何かを話しかけた。

「な、なに?何を言ったんだい?もう一度言ってくれ、美冬!」

人工呼吸器を通して美冬の口が動いたのはわかったが、声が小さくて聞き取ることが出来なかった。

美冬は、そのまま目を閉じ、静かに息を引き取った。


美冬の顔は、雪のように白く、とても綺麗だった。


僕にとって、美冬は白く、弱い、儚い雪虫と同じだった・・。


わずか三ヶ月ほどしか一緒にいなかったが、僕の中で美冬は、無くてはならない、失うことが出来ない存在になっていた。

僕の体から、何かが抜け落ちていくのがわかった。

悲しいと言う感情を遥かに越えて、生きる気力を完全に失っていた。

僕は、現実を直視することが出来ず、病院を抜け出した。

そして、死に場所を探して街のなかをさ迷っていた。

気づくと、僕はテレビ塔の下にいた。

どうやってここまで来たのか、全く憶えていなかったが、おそらく最後に美冬との出会いの場所に来たかったのだろう。

辺りは深い雪に覆われていた。

僕は、そこでしばらくたたずんでいた。

頭の中は真っ白だった。ただ、これから一人で生きていくことは出来ないという事だけ考えていた。

どこで死のうか、再び歩き始めた時、突然後ろから腕を掴まれた。

振り向くと、秋絵と叔父がそこにいた。

「やっぱり、ここだったのね。急に病院からいなくなって、探したわよ。」

「・・・」

僕は何も答えなかった。

「圭吾君、大丈夫か?」

僕は叔父の問いかけにも答えず、再び歩き始めようとした。

「待って!あなたに渡すものがあるよ。」

「僕に?」

「そうよ、これを渡す様に頼まれていたのよ。」

秋絵はコートのポケットから一通の手紙を出して、僕に差し出した。

「こ、これは・・」

「美冬が、自分が死んだ後にあなたに渡して欲しいと。」

僕は、その場で手紙を開けた。


圭吾さん、あなたを残して先に死んでしまって、ごめんなさい。

こうなる事はわかっていながら、あなたの優しさにあまえてしまいました。

自分の寿命を考えれば、あなたと付き合うべきではありませんでした。

あなたに悲しい思いをさせている事が、本当に辛いです。

でも、最後にあなたと過ごせて、とても幸せでした。

だから、お願いです、もうこれ以上私のためにあなたを不幸にしたくてありません。

死なないで下さい。私の最後のお願いです。

そして、いつか、また雪虫を見てください。

その雪虫が、私だと思って。


「うわぁ・・」

僕は、大声で泣いた。

「美冬の思いを大切にしてあげて。」

「ど、そうすればいいんだ!どうやって生きていけばいいんだ!」

「美冬との思い出を素敵な経験として生きていって。」

「ううっ、く、苦しい・・・」

「大丈夫!圭吾さん!」

僕は胸に強烈な痛みをおぼえて、雪の中に崩れ落ちる様に倒れた。


その後の記憶は、ほとんど戻らなかった。

というか、当時も意識がはっきりしない状態だったと思う。

おそらくその後、自分のアパートに運ばれ洗脳を受けたのだろう。

生きることへの絶望感と美冬のために行き続けなければならないという思いが葛藤し、僕の精神は崩壊寸前だった。

僕は自分の弱さから、愛する人の願いを叶えるために、その人の記憶を消し去ることに同意してしまった。


徐々に意識が戻ってくるのがわかった。

普段の目覚めとは明らかに違い、激しい疲労感と頭痛が僕を襲っていた。

「どお?どこまで思い出した?」

秋絵が目覚めた僕に問いかけてきた。

「そんなにあわてたらだめだよ、秋絵。」

叔父が、秋絵を制する様に言った。

「はい。」

「気分はどうだね?頭は痛くない?」

「はい、頭は痛いですが大丈夫です。」

「顔色が良くない。そのまま何も考えずに休んだ方がいいな。」

「いえ、それよりお二人に報告する方が先だと思います。」

「うむ、そうか。圭吾君がそう言うなら聞こうか。」

「はい。記憶はほとんど戻ったと思います。」

「当時の激しい苦しさも思い出した、という事かね?」

「はい。」

「それで、大丈夫なの?」

秋絵が心配そうに尋ねた。

「確かに、当時の胸の苦しみは甦ってきました。でも、それよりも美冬の思いやりと優しさをあらためてわかって、自分がとても情けないです。」

「それは、どういう事?」

「当時の僕は、美冬を失いたくないという気持ちが大きすぎて、自分のことしか考えられなかった。」

「それはしょうがないわ。」

「でも、美冬は自分が死んだ後の僕を心配していてくれた。」

「それにもかかわらず、僕は彼女を困らせてばかりいた。」

「でも、あなたは美冬の希望どおり、こうして生きているのよ。美冬もきっと喜んいるわ。」

「そのために、僕は美冬との大切な思い出を捨ててしまったんだ。」

「捨てたなんて!あの時は、そうするしかあなたを救う方法は無かったのよ。」

「うむ、記憶を封印することは、私達が提案したことで、君はそれを受け入れただけだ。そんなに自分を責めない方がいい。」

「大丈夫です。今こうして記憶を振り返り、美冬の思いをしっかりと受けとめる事が出来たと思います。もう、死のうなんて考えません。」

「それを聞いて安心したよ。私達も君の記憶が戻って当時のような状態になってしまう事が心配だったんだ。」

「僕は悔しいです。当時、美冬の気持ちをきちんとわかってあげていれば、彼女を安心させてあげれたのに。美冬に申し訳なくて・・。」

僕は涙で声が詰まった。

「圭吾君、いいじゃないか。何年かかっても美冬の気持ちがわかったんだから。」

「そうよ、美冬もきっと喜んでいるわ。」


秋絵の家を出たのは、夜中の零時近くだった。

二人は、もう少し休んでいくよう勧めてくれた。

確かに疲れていたが、とにかく一人になりたく、そして急いでやらなければならない事があったので、タクシーを呼んでもらいアパートに帰った。

僕は部屋に入って直ぐに電話をした。

「もしもし、彩香。」

「圭吾、どうしたの?」

「どうしても、会って話したい事があるんだ。」

「わかったわ、私、札幌へ行くわ。」

何かを直感したのか、彩香は詳しい事は聞かずに、そう答えた。

僕は電話を終えると、疲れきった体をベッドに横たえた。

深い眠りが襲ってきた。


そして、夢をみた・・。


暖かい日差しが降り注ぐ花畑を小さな女の子を連れた僕と美冬の二人が楽しそうに歩いている。

一面、色とりどりの綺麗な花が咲き乱れており、たくさんの蝶々が飛び交っていた。

女の子は、二、三歳くらいだろうか、お下げが似合うとても可愛い子で、ピンク色のリュックを背負い、二人の間で両手をつながれて、楽しそうに歩いている。

美冬もとても健康そうに笑っている。

三人の笑い声がまわりに拡がり、そして反射して帰ってくる。

僕はとても幸せな気持ちで胸がいっぱいになった。


これは、僕と美冬が思い描いた夢だ!

そして、叶わなかった夢だ。


しばらくすると、三人のまわりに蝶々ではなく、たくさんの雪虫が舞っていた。

女の子は嬉しそうに雪虫を追いかけていた。

僕達二人は、女の子の様子を見守っていた。


突然、夢の中の美冬が僕の手を力強く握りしめてきた。

僕は美冬の方を振り向くと、美冬は僕の目をじっと見つめていた。

「それじぁ、そろそろ、行くね・・。」

「う、うん・・。」

「あなたに会えて、本当によかった。ありがとう。」

「お礼を言うのは、僕の方だよ。」

「僕は、素敵な家庭をつくるよ。そして、必ず幸せになるよ。」

「美冬との約束をはたすから、安心して。」

美冬は、にっこりと微笑むと、握っていた手を離し、僕に背を向けて歩き始めた。

いつの間にか、女の子の姿もなく、僕一人がその場に残されていた。

「ありがとう。美冬!」

僕は、泣きながら美冬に向かって叫んでいた。

僕のまわりを、雪虫がふわふわと飛んでいた。


「わざわざ来てくれて、ありがとう。」

「ううん、いいのよ。」

僕と彩香は、テレビ塔の下で待ち合わせをした。

あの日、僕が記憶を取り戻した日から二日後、彩香は急いで札幌に来てくれた。

「どうしても、ここで君に話したい事があるんだ。」

「話して、私、聞きたいわ。」

彩香の表情には、何か覚悟の様なものがあった。

「十年前、僕はこの場所で、運命の人と出会ったんだ。」

「運命の人?」

「そう、そして十年間、その人のことを記憶から消し去っていたんだ。」

「消し去る?」

彩香は、少し怪訝そうな顔をした。

「変な話しだと思うだろうけど、僕の話しを聞いて欲しいんだ。」

僕は、これまでの事を全て話した。

「とても信じられない様な話しだけど、今のあなたを見ていると、納得出来るわね。」

じっと話しを聞いていた彩香がゆっくりと言った。

「本当に?」

「えぇ、あなた、札幌に来て、何か人が変わったみたい。」

「うん、僕はここへ来て、大切な過去を取り戻すことが出来たんだ。そして、それは僕のこれまでの考えを大きく変えたんだ。」

「どう変わったの?」

「これまでの十年間、僕は大切な人を亡くしたことで、真剣に人を愛することを避けて来たんだ。たとえ、記憶を消しても無意識のうちに、そうして来たと思う。」

「だけど、今は違う。本当の愛の大切さをあらためて知ったんだ。」

「正直、君とのことも真剣に考えることが出来なかった。それでも君は僕から離れないでいてくれた。」

「そうね、私も悩んでいたわ。あなたの気持ちは私には向いていないんじゃないかと。このままだでは、お別れするしかないと・・。」

「本当に、申し訳ない。」

「今更、こんな事を言えないのは十分わかっているが、もう一度、君とのことを真剣に考えたい。」

「亡くなって十年も経つのに、あなたをこんなに変えることが出来るなんて、すごい人ね。」

「そうなんだ。僕はやっと変わることが出来たんだ。」

「そうね、あなたは、その人のおかげで愛の大切さを取り戻した。」

「でも、あなたの話しを聞いて、私の不安は益々大きくなったわ。」

「えっ、どうして?」

「あなたが記憶を取り戻したことで、あなたの中で彼女の存在がとても大きなものとして甦ったんじゃない?」

「二人の運命的な絆に私が入り込む余地はあるのかしら?」

「今は、もういないんだよ。」

「確かにそうだけど、十年間の空白があったからこそ、今甦った彼女の存在は、あなたにとって、とても大きい様な気がするわ。」

「そ、それは・・」

「それに、たまたま、あなたが記憶を取り戻した時に私と付き合っていただけで、あなたにとって私である必要があるのかしら?私がその人の代わりになれるのかしら?」

「た、確かに美冬は僕にとって大きな存在で・・」

「ちょ、ちょっと待って!」

「えっ。」

「今、美冬って言った?」

「うん。」

「彼女の名前は、美冬というの?」

「そうだけど。」

「十年前に病気で亡くなった、十八歳で・・・」

「まさか、その子の名前は、中野、中野美冬?」

「どうして、知っているの?」

「信じられないわ!こんなことがあるなんて!」

彩香の表情は驚きに満ちていた。

「どういう事?」

「私と美冬は、東京で幼なじみだったのよ。」

「えっ。」

「美冬は小学校の時に札幌へ引っ越して行った。そして、十八歳で亡くなった・・。」

「そう言えば、東京に一人だけ、親友の幼なじみがいると言っていた。」

「美冬があなたの恋人だったなんて・・。」

二人は、衝撃的な事実を前に言葉を失い、しばし呆然としていた。

「こんな偶然が本当にあるなんて・・・。」

彩香がぽつりと言った。

「そうか、そうだったんだ!」

「どうしたの?」

「君が美冬の唯一の親友だったと聞いて、やっとわかったよ。」

「何が?」

「君と出会ってから美冬の夢を見るようになったんだよ。叔父さんも夢を見るきっかけがわからないと言っていたんだ。僕もわからなかった。」

「君だからこそ、僕は美冬を思い出し始めたんだ。たまたま君と付き合っていたわけではないんだ!」

「私だから?」

「そう。君と美冬が親友だったからこそ、無意識のうちに僕は君の中に美冬を見つけ出したのかもしれない。」

「でも、私とあなたが出会ったのは偶然だわ。」

「いや、単なる偶然じゃなかったんだ。僕も美冬も、そして君も。」

「えっ。」

「三人が運命で結びついていたんだ!」

「まさか。」

「僕と君も出会う運命だったんだ。」

彩香は、少し考え込んでいた。

「そうね、そうかもしれないわね。」

「本当に愛する人に出会えたのに、一緒に過ごせたのがわずか三ヶ月だなんて、心残りだったでしょうね。」

彩香の目からは涙がこぼれ落ちていた。

「きっと、美冬は自分の叶えられなかった夢を僕達に託すために、二人を引き合わせたに違いない。」

「あの子、早くにお母さんを亡くして、自分も病気がちで入退院を繰り返して・・、美冬には幸せになってもらいたかった・・・」

「美冬のためにも、二人で幸せになっていかないか?」

「そうね、美冬は、最後の一時でもあなたと出会えてよかったわ。そして、私達が幸せになることで、美冬の想いも叶うことになるのね。」

「うん。」

「わかったわ。二人で頑張りましょう。」

「ありがとう。」

僕は彩香の肩をしっかりと抱き寄せた。

太陽の陽射しを浴びて、まわりの雪がキラキラと輝いていた。

「僕は、札幌に来て冬が大好きになったんだ。」

「どうして?」

「冬はとても寒いけど、こうして寄り添うと、大切な人のぬくもりを感じることが出来るんだ。」


二人は、この不思議な運命のつながりをかみしめる様に眼前に広がる美しい雪景色を見つめていた。


今になって、わかった様な気がする。美冬が最後に言った言葉が、


いつか、私のことを思い出して・・・。


僕のために、自ら自分の記憶を消すことを選んだ美冬も、やはり、愛した人の記憶の中で生き続けたい、と思っていたに違いない。


僕は、そう思う。















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雪虫舞う街で、 @mikei

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