空を飛んでみたいな

俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き

空を飛ぶこと

「空、とんでみたいな」


「は?」


親友がいきなりそんな事を言い出すので、私は思わずあたりの強い返しをしてしまった。


親友とは幼稚園来の仲で、こいつ少し変わってるなとは思ったが、いきなり空を飛びたいだなんていい出すとはさすがの私でも予想外だった。


「全日空がいい?それともJAPAN AIRWAY?」


私は飲み慣れた75円の紙ジュースを飲みながらそう尋ねた。


「飛行機じゃねえし」


親友は笑って、つっこんだ。

傍から見たら何なのコイツラって感じのやり取りだが、私は彼女とのこういう距離感が好きだった。


「空飛びたくない? 機械とかそういうの使わないで生身でさ。鳥みたいに翼使ってさ。」


親友はわざわざ立ち上がって、両手を開き上下に動かして鳥のマネをする。


「別に」


「マ? なんか空とべるって便利そうじゃない? 景色とか良さそうだし、なにより楽そう。」


そっけない私の返答に、彼女は大真面目で答えた。


「でも空飛ぶのって疲れるらしいよ。腕から胸筋から色んなとこの筋肉使って羽ばたくしか無いし。やめたら落ちて死ぬし。私達は歩くの止めても死なないけど、奴らその瞬間地面にドーンだよ。」


私はいつかのTVでみた豆知識を使い、彼女の夢を正面から打ち砕いた。


「マジか。楽じゃねえじゃん。」


聴いた彼女は、絶望と言った表情でつぶやく。


「それに、私達が空を飛びたいって思うように、鳥たちは地面歩きたいって思ってるよ。」


私は空を飛ぶ鳥たちを見つめながらそう言った。


「そうだね。飛ぶのやめるわ」


彼女はさっきまであんなに力説していたのに、すっかりほだされて自分の弁当に向き合い直った。

本当に、熱しやすく冷めやすい人だ。


「うん、そうした方がいい」


私は空になった紙パックを押しつぶしながら、そう言った。

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