3 ヒラリー邸
第4幕
ヒラリー邸、ヒラリーの部屋
ノッポ
「へへ、どんなもんだい、これくらいの鍵ならお茶の子さいさいだ。
でも今日限りでこの稼業はおしまいだ。三人で約束したからな」
「おっと誰か来る」
「えーと、どこへ隠れようか、このクローゼットの中だ」
ヒラリー
「モレル、わしゃ、そんな浮気なんかしてないよ」
「信用してよ、お願い」
モレル
「いいえ信用できません。あなたを信用して何度裏切られたことか。今度もきっと」
「メイドのバーバラがあなたとパレス夫人が親しく話しをしているところを見ているんですよ。これが証拠で何が違うのですか」
ヒラリー
「誤解だ。誤解だ。明日の夜会にどうぞと招待していたんじゃよ」
「バーバラのやつ、余計なことを言って、このおしゃべり」
バーバラ
「あの~お言葉を返すようですが、ダンナ様、私、他にもいろいろと・・」
ヒラリー
「うむ!」「わかった。わかった。新しい服を買ってもいいぞ」
バーバラ
「ほんとうですか。わっ、ありがとうございます」
モレル
「まあ、なんてことを。」
「私のはどうなりまして!私もこの1年あまりクローゼットの服を取っ換え、引っ換え着て、新しい服など一着も持っていませんよ」
「これ、この通り」
(クローゼット開ける。ノッポ、釣り下がった洋服の後ろに隠れるが、頭が見える)
ヒラリー
「わかった。わかった。いいよ、いいよ。一着でも十着でもどうぞ。」
モレル
「わっうれしい」
「そうと決まったらバーバラ。さっそく阪急百貨店へ買いに行きましょう」
ヒラリー
「やれやれだわい。それにしても危ないところだった」。
「今のうちにパレス夫人からもらったラブレターをちょっと拝見」
(クローゼットから出たノッポがヒラリーの後ろからのぞく)
手紙
明日の夜会、午後7時、バラの花咲くテラスで待っています
ヒラリー
「うひひひひひ、やった!ついにパレス夫人とデートが出来るぞ!」
第5幕
海の見える丘
ロビン
「マリー、君は本当に純粋な人だね。一点の曇りのない澄みきったダイヤの輝きそのものだ。それに引き換えこの俺ときたら、自分のことしか考えない勝手な男さ。
君のような輝く瞳を持つ人には、やっぱり俺が相手ではふさわしくない」
マリー
「いえ、ロビン。あなたはやさしいわ。本当はやさしいのよ」
「お願いロビン、もう自分をいじめるのはやめて」
「私は、私はロビンを愛しているわ」
ロビン
「ありがとう。マリー、愛しているよ。こんな俺でも愛してくれるのかい」
「幸せだ。俺は世界一の幸せ者だ」
(デユェット 愛のうた)
ロビン
君をはじめて見た時から、俺の心はときめいた
君の澄んだ瞳の中に、君の心の美しさをみた
愛してもいいかい 愛してもいいかい
人を愛することを忘れていた この俺が 君を愛してもいいのかい
マリー
愛してほしい、愛してほしい、あなたはやさしい人
愛してほしい、愛してほしい、あなたの愛がほしい
第6幕
阪急百貨店前
(幕間 パレード にぎやかに通る)
ロビン
「モレル夫人とこんなに親しくなれるなんて夢のようです」
モレル
「いえ、こちらこそ、あの変な年寄りに言い寄られて困っていました」
「助けていただいて本当に助かりました」
「バーバラからもお礼を」
バーバラ
「ロビン様がいらっしゃらなかったら、きっと今でも奥様にまとわりついていましたよ、あのじいさん」
「あら、まだ居る」
ロビン
「とっとと失せないか」「さあ、これをやるから早く行け」
オヤッサン
「おありがとうございます。これで当分暮せまさあ」(去る)
モレル
「あー気持ち悪かった。私、ちょっと疲れましたわ」
ロビン
「それなら私の知っている店で少し休んでいきましょう」
バーバラ
「そうしましょ。そうしましょ。早くいきましょう」
(舞台回転)
クラブ・ファランドール
女主人
「いらっしゃい、ロビン。今日はご夫人づれなのね」
ロビン
「マダム、紹介しよう。こちらはシーサイドの支配人ヒラリー卿の奥様、モレル夫人、そしてメイドのバーバラさんです」
女主人
「まあ、まあ、それはお見それしました。ようこそ、こんなむさくるしいところへ」
「ピーター、ピーター。一番上席の部屋へお通しして」
(席につく)
ロビン
「モレル夫人、早速ですが、ひとつお願いを聞いていただきたいことがあります」
モレル
「まあ、ロビンさん。改まって何ですの、どうぞ何なりと」
ロビン
「マリー。マリー。ちょっとこちらへ」
「モレル夫人、マリーペイジといいます」
「この店で歌っているのですが、先日、シーサイドのオーディションの時に風邪をひいて、失敗したのです。
もう一度、彼女にチャンスをいただけるようヒラリー卿にお口添えいただけませんか」
モレル
「まあ、そういうこと。ロビンさんいい人ね。いいですとも。他ならぬロビンさんのお願いですものね、バーバラ」
バーバラ
「ああ、私、失恋しちゃったあ、せっかくロビンさんにモーションかけようと思っていたのに」
モレル
「何を言ってるの。それは私だって一緒。だってロビンさんは、昔のコールマンによく似てらっしゃるもの」
「そうと決まれば善は急げ、マリーさん、明日の夜会にどうぞいらして。
そのときに歌ってもらいますわ。私も楽しみにしていますからね」
マリー
「ありがとうございます。夢のようだわ。ロビン、ありがとう」
ロビン
「さ、そうと決まったら風邪を引かないように、大切に、大切に」
バーバラ
「あん、もうやってられない。奥様、早く帰りましょう」
モレル
「ほんとうね。お熱いこと」「ホホホホホ」
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