10分だけ咲く花
澪凪
残り香も美しい
「回り道して帰ろ!」
その言葉を口にする時は大体君は泣いている
そして近くのサイゼに行き、ドリンクバーとポテトのセットで終電まで話し込む
「ねえ、聞いてる?」
聞いてるさ、同じ内容を何度もね
「もう!男の子ってみんなそんな感じなんだよね!」
こっちの気もしらないで偉そうに話す君
「君は、どうしたいの?」
君は僕が発した言葉で、目を潤ませ泣き始めた
やらかした、そう思うまでに時間は掛からなかった
どうしたいもこうしたいも、君の言いたいことは分かっているのに
あくまで僕は話を聞いているふりをして
僕が望んでいる答えを引き出そうとしている
「ごめんな、急には答えられないよな」
分かってるならいい…、泣きじゃくりながらそういう君の顔は、僕だけが知っている顔だろう
君は知っているのだろうか
僕は君が思っているほど優しい人間ではないこと
「ごめんね…優しいね」
そんなこと言わないでくれ
僕はエゴで君と一緒にいるだけなんだ
「帰ろうか」
どちらが先に言ったのかは分からない
帰り道に手を繋いだ
その時間はずっと金木犀の香りがしていた
10分だけ咲く花 澪凪 @rena-0410
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