第112話

「ダリルお兄ィっ!

 遅いよっ!」ってミーシャちゃんがさ、俺を見た途端にね。


「悪い、悪い。

 ロンダルトさん達の打ち合わせに巻き込まれてね」ったらさ、ロンダルトさんが慌てたようにな。

「ちょっ!

 ダリル!

 それは無いのではないかね!?」ってさ。


「いや、だってさ。

 俺は卵を届けた後に、素朴な疑問を尋ねただけだよな。


 それに対して大騒ぎしだしたのは、ロンダルトさん達だし。

 おまけにさ、ロンダルトさんは自分を犠牲にするようなことを言うしなぁ」

実は俺、あの発言に対しては怒っていたりする。


「なっ!

 ダリル!それを言うのかね!」って慌ててるが、知らん!


「アータぁ…

 どう言うことかしら?」って、底冷えするような声がさ。


まぁ、俺が遮るけどね。

「サマンサさん。

 ミーシャちゃんが限界みたいなので、先に夕食にしませんか?」ったらな、サマンサさんがに睨まれた。


こぇぇっ!

「庇うの?」ってさ。


だからさ。

「滅相もない。

 先にって言いましたよね。

 夕食後に時間を掛けて、ご存分に」ったげたよ。


「それもそうね。

 ミーシャを待たすのも可哀想ですものね。


 分かったわ。

 夕食後、存分に話し合いましょう」っうことで夕食ね。


いつもと違い静かな夕食となったんだが、ミーシャちゃんは食べることに必死だったから問題あるまい。

まぁ、いつもなら風呂を終えて寝る頃だからな。


しかも、いつもより豪勢で美味な料理なのだから、そら夢中になるわな。


あまりにも豪勢な夕食なので、サマンサさんに確認をば。


「今日は自棄に豪勢ですね。

 なにか目出度いことでもあったのですか?」ったらな、にっこり微笑んで。


「あら、ダリル君がマユガカの間引きを終えて、マユガカの卵を採取して来たじゃないの。

 そのお祝いよ」だってさ。


考えてみれば、スタンピード間際だったマユガカの大繁殖を抑えた訳だ。

さらにフォリゾン・エルフにとっては、必須とも言えるマユガカ卵の確保が成った訳で…そら、祝いたくもなるか。


このタイミングだな。

多少はフォローになるかは分からんが…


「まぁ、マユガカの卵は無駄になるかもしれませんがね」ってね。


したらサマンサさんが不思議そうに。

「あら、それは、どう言うことかしら?」ってね。


「実は… 」

俺はマユガカ成体の体液を、植物精製できないか尋ねたことを伝える。


まぁ、その際にロンダルトさんがさ、自分を実験体にしようとしたことも、キッチリ伝えたよ。


サマンサさんから、猛吹雪のような冷気が発せられたような気がして、ちと恐かったがな。


いやな、夕食を食べ終えたミーシャちゃんがさ、うつらウツラとしていたのに飛び起きたからな。

結構衝撃的だったわ。


退散じゃないが、風呂にでも…


「マスター、お知らせが」ってべティが実音でな。


念話でなく、実音で告げてくるとは珍しい。


「どうした?

 緊急事態か?」って尋ねたらな。


「精霊経由の情報なのですが、使節団の皆様方がモンスターに囲まれておられるようです。

 この侭ですと、全滅される恐れがありますが… どうなさるますか?」

いや、どうなさるますってアータ…


「助けに行くに決まってるだろっ!

 場所はどこだっ!

 すぐに出るぞ!」ったらな。


「戻って来るのかね?」って、ロンダルトさんが。


「いえ、さすがに使節団と合流したら、単独行動は無理でしょうね」

今がイレギュラーなのだから、仕方ないわさ。


「お兄ちゃん… 行っちゃうの?」って、ミーシャちゃんが寂しそうに。


「そうだね。

 急にだけど… ごめんな。

 けど、マユガカを間引く必要があるからさ、また来るよ」って、ミーシャちゃんの頭を撫でる。


「ほんとぅ?」

潤んだ瞳で上目遣いって…将来は、小悪魔ですか?


「ああ、約束だ」ってからな。

「ロンダルトさん、サマンサさん。

 お世話になりました。

 また来ますので」

「うむ、待っておるからな。

 ほら、同胞の危機であろ、急ぎなさい。

 後、里の者も頼む」っと、ロンダルトさんが真顔で。


「里に来たら寄ってね。

 腕に寄りを掛けた料理をご馳走しますからね」ってニッコリと。


「では、お世話になりましたっ!」って、ロンダルト邸を出る。


さて、急がないとなっ!

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潜む者 Kーヨッシー @k-yossy

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