第111話

「それは、誰かに聞いた話かね?」って、ロンダルトさんが問い詰めるようにな。


なんか責められてるようで…解せんのだが?


「いえ、俺の思い付きですが?

 ビールや珈琲豆をも植物精製してますよね。

 ウインナーやハムにソーセジとか、チーズやヨーグルトにバターなどの加工品ですら、精製可能と聞いてます。


 だからマユガカ成体の体液も可能なのでは?って思ったんですよ。

 なにか不味かったですかね?」


俺が告げるとさ、皆が深刻な顔で話始めたよ。

どしたんだろね?


「諸君、どう思うかね?」っと、ロンダルトさんが唐突に。


「さすがに直ぐ判断できんな。

 なにせ、生き死にが掛かったことだけになぁ」


「だが、可能性はあるであろうて」

「そうさな、マユガカを育てんで良いとなれば、色々とメリットがあるでな」


そんな感じで、喧喧諤諤けんけんがくがくってな。


俺の質問が卵採取前や採取失敗時ならば言い訳に聞こえただろう。

だがな、既に採取を終えた後だからな。


「マユガカの飼育は行おう。

 だが、植物由来の物も造り出して確認せねばなりまい」

そうロンダルトさんが告げるとな。


「だが、それで造り出した代物が、実用性に耐えるかを、どのように調べるのだ?」

里人の1人が、そう問う。


当然だろうな、マユガカ成体の体液が生きるために必要な生き物は、フォリゾン・エルフのみだ。


代替え実験などは行えないのだから…


「それは里長たる私が行おう。

 里長の義務でもあろうからな」ってことをな。


そんなロンダルトさんの発言に、すぐさま里人の1人がさ。


「脚下じゃ。

 ロンダルトは里に必要なればこそ、里長になったのじゃぞ。


 そのような者が、命に関わる実験などするでないわっ!

 この老い先短い儂がやれば良い」って言うと…


「待った!

 長老はダメだっ!

 アンタ失ったら、里の祭事や仕来たりで困るだろうに。

 だから…俺がやるよ」


「おお、そうか、頼めるか」

「いや、止めないのかよっ!」


コント?


騒ぎが止まらんのですが。

だからさ。

「罪人で試すとかできんの?」って尋ねたんだわ。

したらな。


「里に罪人などはな…」って、困ったようにロンダルトさんが。


だからな。

「前里長とかが、ミイラ状態で生きてるんだよな。

 あいつらって、マユガカ成体の体液は不要なのかい?」


俺が尋ねると、ハッとしたようにな。


「確かに、体液切れの兆候があった者へと、体液を与えたとの報告があったな。

 ならば、あの状態でもマユガカ成体の体液は必要と言うことだ。


 もともと死罪である者達なれば、植物由来の代替え品を試すには、適していると言えるだろう。

 皆はどう思うかね?」


ロンダルトさんが尋ねるとな。

「無辜の民にて試すよりは、遥かに良かろうて。

 それにアヤツらは、それだけのことをしてきたのじゃしな」


「「「異議なし!」」」


「決定だな。

 この実験が成功すれば、マユガカを飼育する必要もなくなる。


 マユガカ飼育の手間がなくなるのもだが、時々発生していた事故の心配からも逃れられるからな。


 さらに飼育しているマユガカの全滅に怯えることもなくなる訳だ。

 是非とも成功して欲しいものだね」


そうロンダルトさんが締め括ったので、俺はお暇することに。


「では、俺はここで。

 ロンダルトさんは、遅くなりそうなのですか?」


ついでに尋ねると、ロンダルトさんは懐中より時計を取り出してな。


「もう、このような時間かね。

 続きは明日で良かろう。


 今日は解散とする」って、席を立つ。


「やれ、解散じゃわい。

 今日は飲むぞぇ」

「長老は、いつもじゃね?」

「百薬の長じゃからの」


てな感じで騒がしく解散してるな。

そんな中、俺はロンダルトさんと一緒に、ロンダルト邸へとな。


ミーシャちゃんにはさ、直ぐ帰るったんだが…意外と掛かったな。

こら怒ってるかな?


急ぎ足で移動する俺に、ロンダルトさんがな。

「なぜ、そこまで急ぐのかね?」ってさ。


だから理由を告げると、苦笑されたよ。


「なれば急がねばな」ってさ。

さすがはドタコンだね。


そして屋敷へと到ると…腹を抱えたミーシャちゃんがな、机に突っ伏してたよ。


ありゃ、こりゃぁ、悪いことしたかなぁ。

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