第23話 Time Raiders
晴義たちが通う高校
体育の時間、凡ミスを繰り返し、同級生の男子にからかわれる晴義
授業中、集中できない様子で、窓の外をぼんやりと見つめている晴義
その様子を心配そうに影から見つめている檍美和・・・
その数日前
伊豆からの帰り
九月家のリビングで倒れ、慶子と美和に介護をうけた晴義
リビングテーブルで慶子と美和に向き合い、両親の身に何が起こったのか、聞いている晴義
美和からの話を聞いて、ますますうなだれる晴義
顔面蒼白で今にも倒れそうになっている。
気の毒そうに見ている慶子
「晴義くん、ショックだろうけど、これはあなたに一生まとわりつく事実だと思うの。あなたにはすばらしいお父様とお母様がいた。それも事実だから、受け止めて、彼らのことも忘れないでいてあげてほしい。あなたを産んでくれたご両親だから。」
「でも、そのとき・・・倒れた母は・・・僕の本当の母じゃなかったんですよね・・・!!」
「彼女もあなたのお母様よ。ここまでご立派に育ててくださった・・・!」
「時間軸を操作されて・・・僕の記憶からも消し去られた・・・!!いや、別の時間軸に連れ去られたのなら、そもそも記憶すらない・・・!!今だってこうして聞いていても、何にも思い出せない、思い出も何にも無いわけですから!」
(そう、思い出を書き換えられたわけじゃないから・・・)
慶子、心の中でそう呟きながら、時間軸の狭間に消えた元夫の椿坂正和のことをふと思い出す。
「僕の記憶・・・いや、僕の人生から両親を奪った・・・ルーデンスを僕は許さない・・・いったい、どんな理由があって、僕がこんな目にあわなきゃいけないんですかっ!!」
「晴義くん・・・」
「僕の両親・・・僕の母の思い出・・・みんな・・・みんな何処に・・・くっ、うっ、うううっ!!」
ばたりとテーブルにつっぷし、わんわんと泣き始める晴義
慌てて晴義にかけよる慶子と美和・・・。
現在
晴義たちが通う高校
放課後、慶子、則子、美和の3人が保健室に集まり、緊急会議を行っている。
保健室のドアには「担当外出中」の札が降ろされている。
晴義は会議参加の声をかけられたが、まだ到着していない雰囲気。
慶子と美和は先日の一件で晴義の家庭の情報を共有しているが、則子はまだ把握していないので彼女だけ割とのほほんとした態度でいる。
「九月先輩、なんか伊豆の一件以来、元気がすっかり無いですよねー。よほどルーデンス一味の戦闘が答えたのかしら。」
「いや、普通は誰でもあそこまでやられるとこたえますから。」
「学費にあてようとしたお金も燃やされちゃったし、フォローのしようがないですねえ・・・」
「まあ、幸い?ここ数日、やつらの動きもないですけどね。」
慶子、カレンダーをめくりながら
「そうね・・・、何をたくらんでいるんだか・・・でも、奴らはわたしたちの居場所も掴んでいるはずなので、殺すつもりならとっくに殺しているわ。やっぱりわたしたち・・・いや、晴義くんの力がほしいのよ。」
コンコン、とノックの音
女子3名、ハッとなり会話を止める。
晴義が遅れて保健室に入室してくる。
「すいません、遅れました・・・」
やはり元気がない様子の晴義。
則子かまわず会話を続ける。
「わたしたちに協力してほしい、ってルーデンスのインド人の姉妹は言ってましたけど・・・、一体何の協力をしてほしいのでしょう。」
慶子、パソコンの画面を操作しながら
「そこでネット検索で気になる記事を見つけたわ。」
「またネットですか・・・」
ネットの記事の画面
<世界に眠る財宝、次々と・・・何者かに盗掘されたか>
<フロレンティンダイヤモンド 発見されるも・・・直後に行方不明か>
<ナチス黄金列車 新たな証言 謎の発掘現場で殺人か>
<エルトゥールル号の財宝 実は無くなっていた 複数の証言>
<旧ソ連軍の隠し財宝 公然と消える財宝と関係者>
「というかんじで、ここ数年の間に次々と世界中から財宝が何者かの手によって消えているの。」
則子がやや興奮した口調で言う
「組織的大規模なトレジャーハンター??・・・その何者かってのがルーデンス一味ですか?それが彼らの目的?」
慶子、落ち着いた口調で返す
「どうかしら。金銭目当てなら、とっくにその目的は果たしていると思うの。だって、こんなに盗んだところで、ブラックマーケットに出すとしてもそれなりに入手ルートの隠蔽やブローカーとの折衝も大変だろうし、資金洗浄もやっかいよ。ましてやリアルマネー化したところでまず一生かかっても使いきれない額だし・・・。」
「確かに・・・」
「組織立って金を集めたとはいえ、このお金を私利私欲に利用しているとは思えない、ってのがわたしの考えです。」
「なるほど・・・、お金の使い道かあ・・・」
「で、記事を見て思ったの。注目すべきは・・・」
「・・・注目すべきは?」
「はい、ここで問題です、さて注目すべき点は何でしょう。」
「えー、いきなり・・・、ヒントください。」
「記事のタイトルから察しましょう。」
「ぜんっぜんわかりません!」
「先生」
突然晴義が口を開いた。
「あ、晴義くん、どうぞ。」
「盗まれた財宝は大昔のものではなく、せいぜい19世紀から20世紀にかけ、財宝と化したもの、または発見後に何者かに盗まれたものばかりではないでしょうか。ピラミッドの秘宝やリマの秘宝など、古代の秘宝などは入ってないので。」
「ピンポン!正解よ。」
則子、ちんぷんかんぷんな表情で
「へえ・・・そうなんですね。」
慶子、ネットの記事をスクロールしながら
「盗まれた財宝は重機などで物理的に掘り出したものじゃないと思うわ。これは時間軸の操作による発掘・・・つまり『秘宝が埋められたときの時間軸操作』によって復元された財宝よ。しかも手の届く範囲・・・時間軸をかろうじてコントロールし易い時代の過去の財宝ね。」
美和が言う
「それでも半世紀から1世紀以上の時間軸を操作をすることになりますよね。いくら財宝が眠る狭い範囲の時間軸操作とは言っても、そんなことって・・・」
美和、会話の途中でハッ、となる
伊豆のロッジで聞いたエジルとスリーカラのセリフを回想する。
伊豆で晴義たちと会話するエジルとスリーカラの回想シーン
エジル、スリーカラ、少し強面の表情で
「あるわ、方法が」
「そう、あるの。地球全体の時間を戻す方法・・・」
則子も続く
「そうでした。あのインド人姉妹が言ってましたね。地球全体の時間を戻す方法だってあると・・・。」
「地球全体の時間軸すら操作できるのなら、限定した地域の時間軸を操作するなど、彼らにとってはたやすいこと・・・なのですね。」
慶子、ネット記事を見つめながら
「そうね。あと、時間軸を操作するだけでなく、この記事などを見ると、軍の高官たちを買収して、発掘行動を隠蔽、そして現地で協力させていたようね。」
「でも彼らは結局発掘の後には殺されている・・・。」
「用が済んだので消されたんでしょうね。」
「たぶん、そうやって金の力を使って各国で活動しやすいよう、政治家や軍関係者を取り込んでいるのでしょう。」
「政治家と軍属を味方に・・・そして時間軸をも操る力・・・まさに好き放題・・・」
「まあ、たくさんの財宝を持ち出すにも国別に協力者だって必要だし」
「お金の前に正義は通用しないのかしら。」
晴義がネット記事に貼られていた写真に気付く
「先生、その写真・・・」
「あ、気付いたわね。そう、この写真ね。」
夜間に撮られた写真・・・森林の上空に光りながら浮かぶ怪しげな物体の写真。
かなり遠距離で撮られていることと、夜間なので、鮮明には写ってないが、それなりに大きな物体が空中に浮いていることが伝わってくる。
「記事によると地元の住民がたまたま通りかかった時に異変を感じ、撮ったものだそうよ。地元紙ではUFO扱いね・・・確かにはっきりは写ってないけど・・・これが何か察しはつくわよね。」
晴義が即答する
「超伝導コイル・・・!!」
「そう。発掘現場にコイルを持ち込んで、コイルを共鳴させたパワーで巨大な時間軸を操ることに成功している、ってことになるわね。」
則子がおちゃらける
「はい、財宝の盗人はルーデンスたちに決定ーーー!!」
美和、真面目な表情で
「でも伊豆のときにも彼女らに指摘しましたけど、100個や200個の超伝導コイルや複数の時の瞳、そして時間巫女の力を総動員しても、地球全体の時間を戻すなんてできっこない・・・」
慶子、重々しい表情で
「巨額の闇資金、政治家、軍人のとりこみ、超伝導コイルの運用、そしてわたしたちへの協力要請・・・」
「地球規模で時間軸を操作するってことに、かなり本気度を感じますね。」
慶子、パソコンを操作し、チャットツールをたたいて
「馬酔木くん、いる??」
チャットの画面に「MASUKI」の文字が出て、音声通話がはじまる
「はいはい、おりますよー・・・なんかいつになく重々しい表情ですね、先生。」
「単刀直入に聞くけど、あなたルーデンスに超伝導コイル、複数納品しているわよね。」
「また藪から棒に・・・って、あれか」
「ええ、あなたしかそんなことできないでしょ。」
「ま、そうですよね。」
「あなたの二重スパイ行動は前から知っているのよ。とぼけても無駄です。」
「僕はただの商人でして、クライアントの秘密やご購入下さったユーザー個人との秘密は守っています。二重スパイ呼ばわりはやめてほしいですね。」
則子がすかさず反応する
「ん?個人との秘密?!」
慶子、少し慌てて、その場をごまかすようなそぶり
「・・・守秘をキープしているなら結構よ。ただ、あなたの発明品の使われかたは把握しているのかしら?」
「クライアントが僕の商品をどう扱おうと勝手な話だと思いますけど」
「それがわたしたち、いや、地球全体に悪影響を与えるものだとしたら?」
「そんな商品、他にもいくらでもあるじゃないですか。化石燃料、フロンガス、電磁波、果てはニュークまで、きりがないですよ。先生はそれら創造者に全て文句をつけられましたか?」
「あなたが身近な存在だから言っているのよ。」
「僕は統一場理論の研究者であって、死の商人ではありません。その派生で作った発明品は平和利用もできるはずです。原子力だってそうでしょう?」
「くっ・・・」
晴義が割って入る
「馬酔木さん」
「お、なんだい、晴義くん。・・・直接会話するのは初めてかな」
「はい、そうかもしれません。えーと、さっき平和利用の話が出てましたけど、馬酔木さんは何故超伝導コイルを世界的に発表しないのですか?常温超伝導技術は現時点、世界のどの研究施設でも成功していませんよね?」
則子も叫ぶ
「ほんとだ!発表すれば世紀の大発明、ノーベル賞モノじゃないですか。」
パソコンに浮かぶMASUKIの文字・・・少し沈黙があって・・・
馬酔木の落ち着いた声がスピーカーから流れ出す
「晴義君・・・その質問の答えは簡単だよ」
「え?」
「わからないかい。人類にこんなすばらしいものを与えてはいけないんだよ。」
「え・・・・・・・」
慶子が割って入る
「じゃあ、何故ルーデンスには売り渡すのよ!」
「その答えも簡単ですよ。彼らは僕がそう使ってほしい、という理想的な使い方をしてくれている。また、実に有意義な運用データとレポートをくれるからです。それらは次の研究、次の発明に生かされる。研究者としては、これ以上嬉しいものはありません。」
慶子、何も言い返せない
「ぐっ・・・。」
「えーっと、会話はもう大丈夫ですか?」
「馬酔木くん、あなた、ルーデンスの最終目的も知っているの?」
「それはクライアントとの守秘に関わる質問ですね。知っててもお教えできません。」
「まあ、そう言うわよね・・・。あと・・・ひょっとしてこれもルーデンス?あなたが協力した?」
慶子、馬酔木のチャットにネットの記事を画面共有する。
<ビットコイン 1兆ドル 資金洗浄されたか>
「何者かが恐ろしい額のビットコインを奪い、洗浄したってニュースなんだけど」
「ニュースは知ってますが、同じく何もお答えすることはできません。」
則子がつぶやく
「どうやってリアルマネー化できるんですか、そんな額・・・。」
馬酔木が説明する
「詳しくは知りませんが、どうやら数年かけて数ドルずつ、シルクロード上の闇取引でキャンセル処理を経て、現金にしていたようですね。」
「あなた、これにも関与してたのね。」
「ノーコメントです。」
「なんでバレないんですかね。こんなのすぐにバレそうですが。」
「闇取引上の被害なので、申し出るやつも少ないか、果てしなく頭のいいやつが、バックにいるのか・・・。」
「ねえ、事態は深刻化してきているの。せめて奴らの資金調達や資金洗浄の手伝いだけはやめてちょうだい。」
「なんともお答えできかねます。」
「じゃあ、友人のよしみで何か教えてよ。わたしだってあなたの発明品、それなりに大枚叩いて購入したわよね。」
「そうですねえ・・・慶子先生はいいお客様ですからねえ・・・じゃ、まあ、小さく呟くのでそれがたまたま聞こえたってことで」
「・・・。」
「なんか近々、『実験』するらしいですよ。」
「え、奴らが?何の実験?」
「あれ、しまった聞こえちゃいましたか。えーっと、まあ、聞かなかったということでお願いします。」
「ちょっと、何の実験なのよ!」
「これ以上は・・・さすがに」
「ひょっとして、あなたもその実験に立ち会うのかしら」
「さて、どうでしょう・・・」
そのとき、慶子のスマホにSMSの着信が入る
慶子、スマホの画面をさっと見て、少し歯ぎしりする
「くっ・・・」
則子は慶子の表情が変わったことを見逃さなかった。
「・・・。」
「じゃ、お聞きしたいことは以上で大丈夫ですかね。僕は仕事があるので、この辺で。」
シュン・・・・と
チャットの画面からMASUKIの文字が消える。
シーンとなる保健室
則子が空気を読んで、声を発する
「馬酔木さん、相変わらずお顔を出しませんでしたねえ・・・いつか見せてくれるのかしら。」
慶子が吐き捨てるように言う
「見なくていいわ。今となっては、ロクでもない男よ。」
「えー・・・」
慶子、生徒に悟られないよう、先ほどスマホに着信したSMSのメッセージを再び見る。
馬酔木からの着信だった
慶子のスマホの画面
SMSの着信文章
馬酔木「久しぶりに逢って話しませんか?」
複雑な表情の慶子
馬酔木が経営する工場「花田モータース」
同、馬酔木の研究室
慶子らとの会話を終え、チャットをクローズする馬酔木。
別のチャット画面から声が聞こえてくる。
どうやらルーデンスの一員、バランのようだ。
「馬酔木、いるのか」
「はい、おりますよ。」
「奴らには実験のこと、うまく伝えたんだろうな。」
「ええ、ついさっき、なんとなく。」
「そうか。」
「本当に見せちゃうんですか?」
「あらかじめ見せておこうというジュリアの考えだ。俺はもう知らん。」
「ドン引きしなきゃ、いいですけどねえ。」
「ジュリアの考えでは、この実験でドン引きされても、九月晴義は結果ターミナル(最終地)での『行い』にも出現するだろう、とのことだ。」
「・・・また時の瞳で未来でも見ましたかね。」
「どうかな。女のカンか・・・DNAtの呼応か・・・」
「で、実験の下準備は順調なんでしょうか。」
「お前は自分の心配だけしていればいい。」
「そうですか。」
「また連絡する。」
「はいー」
バランとのチャットを終える馬酔木
ふとスマホを見るとSMSの着信が入っていることに気付く。
慶子からの返信のようだ。
馬酔木、それを見て少しにやりとすると、鏡を見てひげ面の顎をなでる。
「では、少しおめかししますか・・・」
引き出しから爪切りを取り出し、プチパチと伸びた爪を切り始める馬酔木。
翌日の夕方
花田モータース入り口前
就業時間となり、工場で働いていたパートの主婦たちが帰り始めているところに、椿坂慶子が運転するゴルフ3カブリオレが入ってきて、工場の敷地内で停車する。
車から降りるカジュアルな姿の慶子、よそ見もせず知ったような足取りで工場奥にある馬酔木の研究棟へと向かう。
その様子を見ている1人の主婦・・・馬酔木の不倫相手
立ち止まって慶子の背中を目で追うが・・・やがて諦めたように前を向き、帰路を歩きはじめる。
馬酔木の研究棟前
エントランスで呼び鈴を押す慶子
しばらくするとスピーカーから馬酔木の声が聞こえてくる
「ようこそ、慶子先生。」
「来たわよ。」
「怖い顔も綺麗ですね。」
「会話はここではいいから。エントランス、開けないの」
「ちょっとそこで待っててください。僕が降りていきますよ。部屋の片づけが間に合わなかったので・・・今日は外でしませんか。」
「・・・好きにしてちょうだい。」
馬酔木の研究棟の裏
ガレージの扉が機械的に開いて、中から馬酔木が運転するベントレーが飛び出てくる。助手席には慶子の姿が。
馬酔木は髭を綺麗に剃っている。
車内
車を運転しながら、助手席の慶子を目でなめるように見ている馬酔木
膝上のスカートから出ているすらりとした足をとくに見つめている。
視線に気付いて、注意喚起する慶子
「ちょっと、前を見て運転してよね。」
「いまどきの車は勝手にレーンキープして、勝手に停まってくれるので、これぐらいのよそ見はいいのさ。」
「・・・。」
「ホテルの予約してあるんだ。2年ほど前に一度泊まったところ。直前だったので、空きのあるホテルしか選べなかったけど」
「・・・どのホテル?」
「ストレングス」
「あそこね、思い出したわ。」
「お風呂がビューバスのお部屋でございます。」
「前もそうだったわね・・・。」
「懐かしい?」
「どうかな。」
「先生も、もはや時空戦士ですよね。疲れた身体を僕が癒して差し上げましょう。」
「時空戦士か・・・アニメだとわたしたちの扱いって、そんなかんじになるのかな。」
「今夜は戦士の休息、ということで。」
「そんなに疲れたように見える?」
「見えますね・・・。」
「いやだ、いっきにふけたかしら・・・短い間に色々あったわ。」
「いえ、お綺麗ですよ、先生・・・。」
ストレングスホテル
同、その高層階にあるスイートルーム
部屋に入る2人
寝室にはキングサイズのベッドがある。
慶子、ハンドバッグをソファーに置くとベッド脇のミニバーの扉をあける。
ずらりと並んだ酒のミニボトルが目に入る。
「相変わらずやばいわね。この雰囲気・・・」
「だんだん思い出してきたよね。」
「お酒いただきます。」
「どうぞどうぞ・・・女子は感度もあがるもんね。」
「それもあるわね・・・やばいわね・・・」
「あ、ウェルカムドリンクでシャンパンが別途用意されてますよ。」
「バーボンでいいわ。」
慶子、グラスの底に酒を注ぐと、そのままぐいと一飲みにする。
数分後
ビューバスのシャワールームで夜景を見ながら愛しあう慶子と馬酔木
シャワーにかかりながら馬酔木に後ろから抱きしめられ、耳元に嫌らしい言葉を囁かれる慶子
「欲しかった?」
「・・・う・・・」
「そうだよね、先生・・・」
「・・・欲しかった・・・欲しかったわ!」
数十分後
月明かり差し込む部屋
ベッドの上で繋がりあう慶子と馬酔木
慶子の顔がいやらしい悦びに満ちた表情となり、馬酔木に翻弄されていく。
「先生、プレイ中に時の瞳を使うってのはナシにしてくださいね」
「うん・・・そんな余裕・・・ないから・・・ああっ!!」
3時間後
裸のままベッドに横たわっている慶子と馬酔木
慶子、馬酔木の胸に寄り添ったまま、少し寝息をたてている。
「う、うん・・・あ・・・」
深い眠りに入りかけたところで、目を覚ました慶子、馬酔木の腕の中にいることを認識する。
「あ・・・ごめんなさい、少し寝てしまって・・・重くて腕痛いでしょ、ごめんなさい。」
「いえいえ、全然重くないです。羽のように軽いです。」
「相変わらず口が上手よね・・・。」
「気持ちよかった?ストレス取れました?」
「ええ、ストレス・・・少しとれたかも。」
「無理しないで時々こうやって僕に癒されればいいのに。」
「なんだろね。前も言ったけど、たぶんあなたを好きになれないってのがわかってるから、本気になれないんだと思うわ。」
「だからこんな安易な関係でもいいじゃない。」
「だって、わたしだけじゃないでしょ、こういう関係・・・。」
「まあ、僕は独身者なので・・・。お許しを。」
馬酔木、そう言いながらベッド脇に置いてあったニコチンキャンディを口に放り込む。
「タバコ、吸わないの?」
「先生、タバコ嫌いでしたので・・・今日は我慢してます。」
「そうやって、女子の扱いは相変わらず上手ってことよね・・・。」
翌朝
ルームサービスの朝食を食べ終えたあとの散らかったテーブル
ベッドの上、またプレイを楽しんだ様子の2人
慶子、ベッドからゆらりと裸の身体を起こして、朝の光を身体に浴びながらうーんと伸びをする。
「・・・ねえ、そろそろチェックアウトの時間じゃないの?」
寝ぼけ眼の目をこすりながら答える馬酔木
「もう一晩、このまま泊まってもいいですよ。」
「・・・いや、昨夜からあなたに翻弄されっぱなしなので、帰ります。」
「素直じゃないなあ・・・さっきもあんなに激しかったのに」
「・・・生徒と今日約束をしているのよ。」
「九月晴義くんたちですか。」
「そうよ。そろそろいかなきゃ。」
「じゃあ、また次の機会に・・・」
「ねえちょっと、約束忘れてない?」
「え、ああ、そうですね・・・。」
馬酔木、ベッド脇に置いてあったカバンをあけ、時間銃と銃弾の入ったケースを慶子に見せ、カバンごと慶子に渡す。
慶子、カバンの中身を確認する。
ケースには「HM」と文字が刻まれている。
「時間銃とヘイゲマスニウム弾・・・、ありがとう。これはこれでいいわ。」
「弾は多めに奮発しています。取扱いに気をつけてください。」
「ええ、大丈夫よ・・・それとあと、もう1つ・・・教えてくれる約束よね。」
「ええ、まあ・・・」
「そういう条件で昨夜から逢ったのよ、教えてちょうだい。」
「・・・。」
「彼らがたくらんでいる『実験』ってやつ」
「・・・。」
「どこでその『実験』は行われるの?どんな『実験』なの?」
「・・・。」
「教えてくれる約束よね。早く教えてちょうだい。」
「・・・。」
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