第17話 マスター・ムーンライト

則子と美和が不思議そうな表情でエジルとスリーカラに尋ねる

「いや、まさかまさかですよ。わたしたちの力をもっと悪徳な使われ方に利用されるもんだと思っていたので・・・。」


「それがあなたたちの大きな目的としたら、大した思想だと思うけど、何の徳があってそれをしたいわけですか?宗教的な理由からかしら。」


エジル、スリーカラ、それを聞いて黙り込む

ひどく悲しそうな顔をしている2人の表情に気づく晴義


(なんだ??2人ともものすごく悲しそうな顔になって・・・)







数分後


ロッジ内 地下室



ジュラルミンケースに入ったお金を見ている4人


「お金、マジで置いていったわね・・・。」


「先生ったら、受け取らなきゃいいのに。このお金の出所も怪しいですよね。」


「いやだって、外のテーブルの上に置いたままで帰っていっちゃうんだもの。置いておけないでしょ。」


「いくらあるんですか、これ」


「ざっと1億かしら・・・」


「い、1億円??」


美和が遅れて地下室に降りてくる。

「先生、連中まだ外にいますよ。」


「え??」


「あのでかいキャンピングカー、停まったまんまです。」


「何をたくらんで・・・」


「まさか僕たちの返事を待っているとか・・・」


美和が言った。

「連中、絶対信憑性ないです。わたしは協力はしません。」

則子も続いた。

「はい、怪しさが先にたちますね。」


「・・・。」


同調してこない晴義に向かって美和

「ごめんなさい、そもそも時の瞳って今の世の中では営利目的で使われるものなのよね。もちろん昔はそうではなかったけど・・・だからいきなり地球規模で時間をリセットするために、って言われても、なんだか嘘めいてて聞こえちゃうの。」


慶子、過去のバトルを思い出しながら

「わたしたち、一度は殺しにかかられたわけだもんね。そう簡単には信じられないわよね。」


「そうですよ。殺しにきたあとで暗黒の未来を変えるためとか言われても、ねえ・・・。」


「地球がダメになっていっているのはわかるわ。でも、彼らのリーダーがどんな未来をみたのか、説明も証拠もないですもの。」


「偽善者集団よ。絶対に営利目的で動いているはず。暗黒の未来がどうとか、わたしたちを仲間に引き入れるための口実にすぎないと思います。」


晴義はお金の入ったジュラルミンケースを黙って見ている。

慶子、晴義を見つめる。

(晴義君の家庭にはご両親がいないわ。どんな生活をしているのか、今まで聞いてこなかったけど・・・彼にはリアルな問題よね。連中、いやな作戦でせめてくるわよね・・・!!)


「とりあえず、このお金、連中に返してきましょうよ。まだ外にいるんでしょ?」


晴義、それを聞いて一瞬ぎょっとなるが、何も言えないでいる。


慶子、晴義の様子を見ながら

「返しにいっても受け取らないでしょうし、仮に無理に返してもまたロッジ脇とかに置いていかれるのがオチだわ。とおりかかった一般人にこんなにお金が入ったアタッシュケースを拾われてここにガサ入れが入ってしまうという可能性もあるし、これは一旦預かるしかないわね・・・。」





深夜

ベッドで寝転びながら物思いにふける晴義

ふと、窓の外をみると、エジルらのキャンピングカーから明かりが漏れているのが見えた。


気になってロッジ外に出ていく晴義、湖畔に停車しているキャンピングカーに近づいていく。


キャンピングカーからはインド映画で流れているような陽気で騒がしい音楽が聞こえてくる。

どうやらエジルが酔っ払いながらカラオケをしているようだが、タミル語で歌っているので、何の歌かわからない。


「な、なんなんだこの人たち・・・まるで旅行にでも来ているような・・・。」


呆れた晴義、ロッジに戻ろうと踵を返すと、


(パシャリ・・・)


水音がしたのでその方向を振り向くと、いつのまにか湖畔に誰かが立っていて、目が合った。


「はっ!!」


驚く晴義とは反対に、落ち着き張った様子でスリーカラが晴義を見ていた。

ネグリジェが月明かりに映え、逆光でスリーカラの細く美しい身体が透けて見えた。

緩やかに膨らんだバストは、下着をつけていないのかバストトップに乳首がうっすらと透けて浮かんでいた。

湖畔に素足のまま立っていて、水に濡れないようネグリジェのすそを持ち上げているのだが、膝上までたくし上げられていて、ふくらはぎが薄暗い月明かりでも艶めかしく光っていた。


「だ、だれ・・・」


一瞬で顔が赤くなり、股間が熱くなる晴義、やや屈んだ体制になってしまう。


「マーレイ ヴァナカム、晴義くん。」


「ま、まーれい?」


「タミル語で『こんばんは』、という意味よ。」


「え、あ、そうなんですね。こ、こんばんは。」


「うふふ、あれ??緊張してる?」


「え、いや、えっと、いや、別に緊張しているわけでは!」


「あはは、そうですか?それはえーと、緊張じゃなくて・・・」


スリーカラ、血液充填MAXで膨らんでいる晴義のジャージの張り具合に気付く。

晴義、悟られて焦りだし、背を向けがちな姿勢でスリーカラと話す。


「あ!いや、その、えーっと、ちょ、ちょっと、・・・寒くないの?真冬の湖畔でそんな恰好でさ!」


スリーカラ、水際まであがってきながら

「・・・寒くないわ。わたし、デリーの生まれなの。デリーはもっと寒いわ。」


「で、デリー・・・北インド?」


「そうよ。これぐらいの寒さなら、Tシャツで暮らしちゃう友人もいるわね。」


スリーカラ、晴義に近づいてくる。ネグリジェに透けた素肌を隠す素振りもない。

お香と高そうな香水が混じったのような彼女の香りが晴義の鼻孔を満たしていくと、股間にぎゅっと血液が集まり、ますます焦りが大きくなっていく。


「そ、そうなんだ・・・」


「ふふ、小気味いい寒さよ。ねえ、日本っていい国よね。綺麗で穏やかで。どこもかしこも色々整っていて。」


「そ、そうですか。どうも・・・インドはそうでもないのですか。」


「インドも素敵な国よ。でも、日本のそれとはちょっと違うかも。貧しい人も多いわ。今、言葉では言い表せない・・・。晴義君も機会があれば実際に行って見てみてね。」


「そ、そうですね。・・・い、インドにはルーデンスの本部があるのですか?」


「本部ってわけじゃないけど、誌を共にするメンバはインドに多いかも。でも、基本は世界中にいると思うわ。」


「ルーデンスの数を把握できてない・・・?」


「そうね、晴義くんのようにまだ自分の力に目覚めてない人は特に・・・」


「僕はあなたたちの仲間になったほうがいいのでしょうか。」


「わたしはそう思っているわ。」


キャンピングカーから酔っ払ったエジルのカラオケが最高峰となった歌声が聞こえてくる。


「楽しそうだ。」


「ええ、姉は陽気で素晴らしい女性よ。」


「ちょっと怖そう・・・でしたけどね。」


「仲間になればわかるわ。みんないい人よ。」


「僕らが仲間にならなければ?」


「・・・力づくでも従ってもらうことになるわ。」


「そ、そうなんですか。」


「ふふふ・・・闘いたくは・・・ないわね、わたしたち。」


「・・・そうですね。」


月にかっていた雲が動き、月明かりで湖畔全体がさらに明るくなり、スリーカラの肢体が晴義の目によけいに艶めかしく映えた。


ごくり・・・と唾を飲み込みながら晴義

「・・・もう少し、僕らに考える時間をください。」


「ええ、もちろん。返答は急いではないけど、時が過ぎれば過ぎるほど、時を戻すために膨大なエネルギーを必要とするの。悠長でもないわ。わかってほしいの。」


「明日先生たちと話すよ。」


「椿坂慶子さんね、彼女はいい先生のようね。」


スリーカラ、ぐっと身体を晴義に近づけると、耳元でささやいた。


「じゃあ・・・また何処かで逢おうね、九月晴義くん」


晴義、どきっとしながらも身体が硬直して動けない。

スリーカラ、晴義の目を見ながら、前を通り過ぎていく。

彼女のつけている香水に混じってスリーカラの体臭まで感じられる近さだった。


(ギン!)

一瞬で時の瞳を発動させ、スキだらけの晴義の動きを止めてしまうスリーカラ。


柔らかなスリーカラの指先が晴義のジャージの下でぎんぎんに大きくなっている男性自身にすうっと一瞬触れる。


「かわいい、ふふふ・・・」


指先でその堅さも確かめるようにジャージの上から男性の先端をすりすりと撫でまわすと、晴義の前を通り過ぎ狭間に時の瞳を解いた。


元に戻った晴義、スリーカラにされたことを認知できてないままびくっ!!となり、身体全体に電流のようなものが走るのを覚える。


「!!!」


そしてハッ!と振り返えると、裸足で水際をしぶきをあげながら湖畔を駆け、キャンピングカーのほうへと向かうスリーカラの後姿が見えた。

駆け足で去っていく最中ふわりとまくれあがった彼女のネグリジェの下、なにもつけていないスリーカラの美しい下半身が一瞬月明かりの具合でぼうっと浮き上がり、それがまるでスローモーションのように晴義の目に飛び込んでくる。


「・・・!!」


先ほど彼女が触れた晴義の男性自身の先端がはち切れそうな大きさに膨れ上がっていた。





同、ロッジ内

数分後


ベッドで毛布にくるまる晴義。

真っ赤な顔で、少し荒い息をしているが、その表情は快楽に満ちていた。


ゴミ箱にティッシュの塊を投げ入れる晴義。

悟られまいと、いくつかのプリント紙をぐしゃぐしゃと丸めると、ゴミ箱内のティッシュをそれで覆い隠した。

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