第13話 エジルとスリーカラ

時間銃の練習開始から1か月後

いよいよとなった実弾練習は、まずは火薬の量を半分にした実弾で練習がはじまった。


「いいこと、いよいよ実弾を使うわ。火薬は半分だけど、決して銃口を人に向けないでね。さんざモデルガンで訓練したから大丈夫だと思うけど。」


防弾チョッキを取り出して説明する慶子

「念のため、メットとゴーグルとこれをつけておくといいわ。BB弾と違って射撃残渣も残るから、気になるなら使い捨てていいようなシャツを上着に・・・」


全部言いかけて止まる慶子

則子と美和は既に上半身水着で、下半身はアーミー風のショートパンツ姿


「先生、実戦ではメットもチョッキも使わないんですよね?」


「そう、どうせなら、なるべく実戦に近い服装がいいです!」


目のやり場に困る晴義、激しい股間への血液充満を隠しながら

「で、でもなんで水着・・・」


女性3人、晴義の股間の形状変化に気づきつつ

「これなら練習終わって、すぐにシャワーかかれるからよ!」


「撃ったあとの金属片が結構服や髪の毛につくってネットに書いてあるんです!」


「あら、そう・・・実はわたしも!」


そういうと、上着を脱ぎ捨て、上半身水着姿になる慶子

「まあ、ネットに書いてあることを読む限り、金属片は水ですぐに洗い落とせるらしい、、ので!」


「先生、スタイルいいー」


「お肌も綺麗ですね!」


「まだまだあなたたちに負けないわよ!」


「晴義もぬいだら?」


「う、くっ、いや、うあ、ぼ、僕はこのままの恰好でいいので。うっ、くっ」

男性自身の形状MAXを悟られまいと必死で股間をおさえる晴義、女性陣に背を向け、ぴょこぴょこと練習場のほうに歩き出す。


「先輩・・・バレバレ」


「まあ、あの状態で晴義に水着になられてもねー、変なもの目立たせるだけだからね」


「男の子ってわかりやすい・・・」


「先生、晴義に間違って撃たれたら、時の瞳でなんとか救ってください」


慶子、晴義の元気化した男性が自分の下腹部に押し付けられた時のことを思い出す。

消えた夫、椿坂正和との愛情行為がそこに重なり、熱くなる慶子の身体。


(いけないいけない。男子生徒の元気な股間を見たぐらいで色々思い出してしまうとは・・・わたしもたまっているのね・・・正和くん、あなたもホント罪な人よね・・・)




夜 ロッジの外


慶子らが合宿を行っているロッジに近寄ってくる1台の三菱デリカD-5と、それにつながれた牽引型のキャンピングカー。

車、ロッジ手前で停止するとその中から2名の女性らしき人影が出てきて、デリカのスライドドアをあける。


車の中から獣らしき影が3匹、ひっそりとした呼吸でぞろぞろと出てくる。

獣たちの左目がうっすらと青白い光の帯をひいている・・・時間犬だ。


3匹、音をたてることなくひたひたと歩き、ロッジを取り囲む。


月明かりに姿をあらわす人影。

インドから日本に渡来したルーデンスのメンバ、エジルとスリーカラの姉妹だ。


「コイル、いつでも準備いいかしら。」


「大丈夫よ。」


「8番コイルよね?」


「そう、一番安定してるやつ」


「じゃあ、やりますかー」




同、ロッジの中


バン!バン!バン!

火薬半分とはいえ、モデルガンと実弾の発射の違いを思い知らされるメンバ


「す、すごいですね、先生」


「は、反動がえぐいわね。」


「ええ、えらい違いだわ、やっぱり」


「これで火薬半分なのですか??ふえー」


「サポーターしてても、手首もげそうです。」


「慣れるしかないわ。」


そのとき、美和と則子の顔色がさっと変わる。


「!!」


晴義、慶子も遅れて何かに反応する。


「!!!」


「感じた?」


「ええ、感じたわ。時間の流れの歪みを」


「れ、連中がここまで来た?」


「・・・・見てくるからここにいて。動かないでね」


ほぼ水着姿だった慶子、急ぎ防寒用の着衣を整え、一人ロッジの外に出ていく。


「うわ、外寒っ・・・。」


暗闇の中、懐中電灯をつてながら周囲を見渡す慶子。


ロッジ裏がやけに明るくなっていて、パチパチと木が焼けてはじけるような音がしている。どうやら何かが燃えているようだった。


「何??」


ロッジ裏にまわると晴義が切った薪の山が大きな火柱となって燃えていた。

勝手に燃えるはずがないので、慶子はとっさにこれが放火だと感じた。


備え付けの水道から水をバケツに水を汲もうとしたとき、


きらり!!

暗闇に潜む獣の目に炎の光がが反射する。


「!!!何?!犬?」


改めて懐中電灯を標的に向ける慶子。


(グルルルルルルル・・・)

牙をむき出し、はぁはぁと呼吸をあげている大型の犬の姿が暗闇に映える。

「時間犬??!!しまった。連中にここの場所、バレていたのね!」


改めて周囲を懐中電灯で照らす慶子。

残りの犬と、それに寄り添うように立つ人影に気づく。

明かりに照らされ、目を細めながら数歩前に出るエジル、そしてスリーカラ。


「椿坂慶子さんね。」

「こんばんはです。」


「誰?!」


「あなたたちを最近追っかけまわしている者です。」

「まさかまさかの登場です。」


「えっ!!!」


真っ青な顔になる慶子。


「いきなり本体登場??!!・・・しかも2人がかりとは・・・」


「脅かしてごめんなさい。あのぅ、勘違いしないでほしいんですけど、今日はあなたたちに危害を加えに来たわけではないの。」


「まずはご挨拶と、ご相談ってところかしら。」


「・・・こういう場合、無理な相談のほうが多いのよね。」


二人の後ろで薪の山ががらがらと崩れ、火の粉が舞う


「わざわざ日本にまでやってきてのご相談ですよ。」


「色々と悪い想像をしていると思うけど、まずは落ち着いてお話ができないかしら。」


気が付くと、ロッジ入り口に晴義ら3人が集まって心配そうに慶子を見ていた。

3人も既に防寒着を羽織っている。


「先生、何かありましたか?」


「あれっ、僕が切った薪の山が燃えている・・・!!??」


すぐさま犬とエジルらの存在に気づく則子


「え!先輩、あれ誰!?犬もいるわ!」


「ほんとだ、いつの間に・・・」


「先生!大丈夫!?」


「来ないで!」


ロッジを飛び出そうとしている3人を制す慶子。


(時間犬3匹に得体の知れない2人組・・・女子らの能力値は不明、ロッジ内には銃があるけど、下手に中に逃げ込んで閉じ込められたような状態になるほうが危険なのかも??いやー、さすがにこの状況はどうしたらいいのかわからないわ!)


燃える薪の炎バックに立つエジルとスリーカラ

「あら、全員お揃いのようね。わたしはエジル」


「わたしはスリーカラ、エジルの妹です。」


「皆さん、よろしくね。」


「・・・。」


「な、なに。いきなりロッジの外で、どういう展開?」


「せ、先輩、あれ時間犬ですよねえ・・・」


「たぶんね・・・」


「あの2人、外国の人っぽいけど・・・割と薄着で寒くないのかしら」


「そこ、心配するところ?」(苦笑)


ややパニック気味の慶子を見つめる3人もどうしたらいいかわからず、ただじっとしている。


エジル、パチンと指を鳴らしながらスリーカラに指示を出す。

「スー、あれを出して。」


「はい。」


スリーカラ、スマホのような端末を操作すると、キャンピングカーのサイドドアが開き、保冷庫にタイヤがついたような機械が中から降りてきて、こちらに向かってくる。


冷気のようなものをしたたらせながらドロドロと近づいてくる保冷庫・・・


「な、なんなの?何をはじめようっていうの?」

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