第弐拾弐話 生徒会執行部&多賀城市哉
「いやー
多賀城市長
しかし、すぐにその雰囲気は変わる。
「1週間と短い期間で無理を言ってしまって申し訳ない。今日皆さんからもらった意見や考えが面白いものであればそれは即採用したいと思っている。だから遠慮することなく、気負うことなくあやめ祭りのために多賀城市にためにどんなことを考えたのか教えてほしい」
私たちが緊張していることを見抜いてか優しく諭すように前置きをしてくれる。
相変わらず不思議と雰囲気というかオーラがある人だ。
空気が変わった。そんな気がする。
「それでは早速だが発表してもらってもいいかな」
先週の会議と同じように寄り道なしに本題に入る。
市長の問いかけに
「今日はお忙しい中時間を作っていただきありがとうございます。早速ですが、私たち多宰府高校生徒会執行部が考えた案を共有させてもらます。スクリーンまたはお手元の資料を見ながら聞いていただけると幸いです」
さっきまで不安で押しつぶされそうになっていたのが嘘みたい。
出だしは好調そうね。がんばれ鈴望さん。
「まずは前提として多賀城市は圧倒的知名度不足にあると思います。いや、言いきりますね。あります。なので多賀城市の存在を多くの人に知ってもらう、魅力を発信するというところに重点を置いて考えました」
市役所の職員の方々は言い切ったことに驚きを隠せていなかったようだ。高校生がここまではっきり言うとは思っていなかったのだろう。
市長はどこかワクワクしているそんな気がした。
「なので。多賀城市の悠久浪漫大使に一昨年任命され女優として活躍している一枝牡丹さんを起用してCM作成を提案します。これが1番手っ取り早いです」
これにも職員の方々はざわつく。
「うん、とても明確でいてシンプル。いいね」
市長には好感触。
「ありがとうござます」
鈴望さんは笑顔で返す。
「これは多賀城市全体のPRでもいいと思いますし、あやめ祭りに限定したものにしてもいいかなと思います。一枝牡丹さんも多賀城のことをSNSで発信することは多いので実現性もあるかなと考えます」
スクリーンには実際に一枝牡丹さんが発信している内容の画像が写っている。
「次は奈良時代の貴族衣装の着付け体験とその衣装を着たまま多賀城市内を巡ったり、あやめ園内を歩くことができたりしたらとても素敵かなと思いました」
これは鈴望さんと白藍くんが提案したものだ。
「普段着れない和装には多くの人々が興味があるし、奈良時代の貴族衣装ってところにも独自性があるかなと思います。そして、これもSNSでアピールするのに利用します」
「というのは?」
「私
自分達でモデルと言ったせいか多少を笑いが起きている。
鈴望さんまだ白藍くんが不特定多数の女性に見られること認めてないな……
「そんな笑わないでくださいってー、私たち結構イケてると思いません?」
私と凪さんに目線をやり、おどけて言う。
注目が集まるため少し恥ずかしい。
「あぁそうだね。君たちのような大和なでしこが宣伝するとなると効果は絶大かもね」
「それ本当に思ってます?」
「もちろんだとも」
「ありがとうございますー」
「知名度アップのための案は次ので最後になります」
鈴望さんがそういうのと同時にスクリーンにキャラクターが大きく映し出される。
奈良時代の貴族衣装に身にまとい、その色は紫を基調としており黄色や淡い桃色などの曲線や模様が施されており、とても目を引くものとなっている。また、髪型はハーフアップであやめの花と山茶花の花を髪飾りとして使用していおり、つややかな黒髪にさながら咲き誇っているようでとてもきれいである。
「これは?」
「いわゆるVtuberと呼ばれるものです。最近は様々な自治体がご当地Vtuberを設けています。単純かもしれませんがこれに多賀城市も乗ろうという考えです」
「このイラストは誰が描いたものなんだい?」
鈴望さんはこの質問が来ることがわかっていたのか。千坂くんと目くばせをして、千坂君が立ち上がる。
「これは我が校の美術部部長
このタイミングでスクリーンも画面が切り替わる。
「もうすでに彼女のSNSでこのイラストを投稿しております。皆さんこれどれくらいの反響があったのかというと」
さらにスクリーンは映像を変え、評価部分がアップされる。
それに合わせて会議室がざわつく。
なぜならいいねが10万、拡散ボタンが8万であったのだ。
「彼女はイラストレーターとしても現在活動しており、イラストを投稿すると必ず多くのいいねが押され、多くの人が拡散します」
1度間をあける。
「しかし、今回のこのイラストの反響はこれまでで最高の数になります。彼女は私が描いたことを明記してくれれば無償で提供しますと言っております」
懸念点の1つである予算。その懸念点を質問される前にこちらから情報を提供し、つぶす。
「そして、声は誰があてるのかですがこれに関しては多賀城市にゆかりのある人を取り上げたいということでこの多宰府高校の卒業生で声優として大ブレイクしている谷社遍さんに担当していだければと思っております」
「確かに最近はご当地Vtuberを設けている自治体も増えていることだし、何よりも多賀城にゆかりのある方をできるだけ採用しようという考えが素晴らしいね。とても面白そうだ」
「ありがとうございます」
どこか控えめに言葉を返し、千坂くんは腰を下ろす。
最後あやめ園のライトアップについては火曜日の会議でも皆に見てもらったものを使いプレゼンをした。これに関しては去年1度行っているためそれをベースに付けくわえたいことを加えてプレゼンは終了した。
浅山市長は立ち上がり、私たちをじっと見つめて話始める。
「うん、どれも素晴らしいよ。それぞれの想いの断片がこちらに刺さってくる。新鮮でいてシンプル。何も恐れていない様子がとても良い。今発表してもらったことはこの時点で採用させてもらう。けれど形式上1度持ち帰らせてもらってまたこちらで決定をする。決まり次第また連絡をさせてもらうよ。君たちが準備できそうなことは準備していてくれると助かる」
市長は私たちの案がとても気に入ったのかべた褒めである。
何か裏があるのだろうか。
いや、なんとなくだけど、浅山湊は本心で語っているそんな気がする。
「それじゃあ今日はこれくらいでいいかな」
「あの、まだお時間大丈夫ですか?」
会議を締めようとした瞬間千坂くんが言葉を発しそれを許さない。
室内の注目を一身にうける。
「大丈夫だが、何かあるのかい?」
「はい。もう1つ聞いてほしいことがあります」
千坂くんの目はどこか悲しげで自信がないようにみえた。
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