第弐拾壱話 来る決戦への準備哉
授業が終わり、生徒会室に集まる。
今日は多賀城市とあやめ祭り・多賀城市を盛り上げるために俺たちが考えた案を共有する日である。
その発表に向けて資料や内容の最終確認を現在行っている。
「誤字脱字もないし大丈夫だろ」
資料は
「こっちも異常なしですね」
パワーポイントは
「いやーみんな優秀で助かるよー」
……ように見える。
「おい、何高みの見物かましてるんじゃ」
「私は原稿を読むという大変大きな仕事を賜っているからいいんです~」
「言い方うざすぎる……」
「しかも今回は原稿まで考えてきたのです!私は事前に仕事も行い、これから仕事もある。よって今いばっていいのです!」
どーんと胸を張る。
「張る胸ないくせに胸張るなよ」
ビュン
何か俺の横を凄まじいスピードで駆けていった。
さらにおぞましい顔をして……
気づいたら捺希はダウンしていた。
ご愁傷様です。
「鈴望先輩。本当に原稿自分で考えたんですか?」
紫水が疑問の目を鈴望に向ける。
「ななななな、紫水君はナニヲイッテルノカナー?」
そして鈴望は何かに気づいたかのように目を見開く。
「はっ!まさか紫水君、一昨日の執行部女子会見てたの……?」
一昨日といえば俺は美術室にいたためこの話は知らない。
てか執行部女子会って何……いつの間にそんなのできてたの。
「え、何言ってるんですか?僕は一昨日生徒会室を後にして真っすぐ帰りましたけど……というより僕と捺希先輩帰ったあと何かしてたんですね」
「あ」
「「鈴望さん……」」
杏さんと凪さんががっくしと肩を落とす。
「墓穴掘ったな……」
「……ごめんなさい、しおりんと凪ちゃんが原稿をほとんど考えてくれました……」
「別にカマかけたわけじゃないのに勝手に自滅しましたね……」
要は一昨日捺希と紫水が先に帰ったあとに杏さんと鈴望と凪が残って、今日の発表する原稿を杏さんと凪に考えてもらってたってわけか……
「別に……杏さんと水無月に……に手伝ってもらったこと……隠さなくていいだろ……」
捺希がよろよろ立ち上がりながら鈴望に言う。
まだダメージは残ってるみたいだ。
「みんなが頑張ってくれてるなかで発表するだけじゃあれかなって思って原稿も考えようと思ったけど、私……そういうの苦手だから……」
鈴望はアドリブに強いが事前に話すことを準備するのは苦手な節がある。
「はぁーーーーーーー」
深く長い溜息をつく。
「別にそんなの気にするなよ。もともと原稿作るのも用意された原稿読むのも得意じゃないんだからアドリブでいいだろ。みんなそれわかってて鈴望を発表担当にしたんだから」
「でも……それでうまく伝わらなかったとしたら……」」
「はぁぁぁぁーー」
今度は捺希とは別の人物が大きな溜息をついた。
「鈴望さんは全然わかってないですね……」
「凪ちゃん!?」
凪にそんなことを言われるとは思ってなかったのだろう。
「何のために私たちも会議に参加するんですか。鈴望さんの言葉が万が一にもうまく伝わらなくたって私たちが代わりに説明すればいいんです。これは私たち生徒会執行部の案なんですから」
最後は笑顔で締めくくる。
鈴望は紫水のほうを申し訳なさそうに見る。
「ウソついたことは発表がうまくいったら許します。まぁ鈴望先輩のことだしうまくいきますよ。だから今ここで許します」
「紫水君……」
鈴望は紫水の頭をまるでペットをかわいがるように撫でる。
「えへへー全く素直じゃないんだからー」
「ちょっ、何ですかいきなり」
「なんか愛でたくなった」
「意味が分かりません……」
まるであの凹みようというか不安がりが演技のようにいつも通りの姿を鈴望は見せる。
「あの立ち直りの早さ見習いたい……」
「でも、あんだけ喜怒哀楽が激しくて大丈夫なのは鈴望だからだと思うけどね」
「それもそうね」
みんな緊張してると思ったけど想像以上にいつも通りで安心だ。
時計を見る。
「頼もしいな」
「それ本心で言ってる?今のこの状況で言われたらギャグにしか聞こえないよ……」
本心、本心だとも! たぶん……
あと15分で約束の時間である。
パンっ
手を叩き、視線を集める。
「はい、時間もそろそろだし会議室向かって準備するよ」
4階から資料や機材を持って1階の会議室へ。
「おい、碧。顔、固いぞ」
「ん?あぁちょっとね」
5人には言っていないが俺にはこの会議中にやるべきことがある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます