第拾七話 合わさる歴史と今哉
「それじゃあ次は
「了解です」
そして自作の資料を発足した時に1人ひとりに配布されるファイルから取り出す。
「おぉすげーな」
「紫水君やっぱりこういうの得意だよね」
「まぁこれくらいしか取り柄ないですしね」
紫水は謙遜する。
もちろんこうやってパソコンを上手に使えるという点も任命した1つの理由だが、それが核となる理由ではない。
「またまたー素直になりなさいってー。ほら! 先輩に本当の気持ちを言ってみ?」
「いや、これが本心ですよ」
真っ直ぐな言葉がぶれることなく響く。
紫水は決して自分を過信しない。
その口から発せられる想いというものは飾られることのない裸のもの。
だからこそ脆く危うくも信頼に値する。
「そっかー! やっぱ紫水君は面白いし、良いやつだ!」
「はぁ……そうですか、まぁいいです。ありがとうございます。そろそろ説明に移りますよ」
「はーい」
立ち上がり説明を始める。
「まず結論から言います。配った資料を見ていただいてもうすでにわかると思いますが、私は多賀城市にいわゆるご当地VTuberを作ることを提案します」
数秒間の穏やかな沈黙。
「あの何か反応してもらわないと賛成なのか反対なのかわからないです」
この沈黙ももろともせず紫水は評価を求める。
「うん、めちゃくちゃいいと思う。ご当地VTuber作ってる自治体も多くなっているって話聞くし、キャラクターのデザイン次第だけど目を引くこともできるし、SNSとの相性もいいしね」
屈託のない評価をする。
いくつかVTuberの配信とか見たりするけどやはり人気がすごい。
その人気にあやかれるかどうかはデザイン・声・トークと色々要素があるため、運的な要素も強いかもしれないが、爆発力は凄まじいのではないだろうか。
「他の方々はどうですかね?」
他4人にも評価を要求する。
「いやーまさか紫水君からVTuberって単語が出てくるとは予想外で数秒固まっちゃったよー、でも紫水君が言うアンバランス感がいい!」
「僕結構VTuberの配信見るんですよ。それでいけるかもしれないと安直ですが思いました。それで
「と言うと?」
捺希がすかさず尋ねる。
「多賀城の歴史あふれる文化財とのアンバランスさです。今多賀城市は多賀城駅周辺はとても発展していますよね。それも現代の都市と歴史の組み合わせだと思います。突き詰めればそのアンバランスさでさえも魅力になると思います」
なるほどな……
確かにその2つは対極に位置しているかもしれないが、うまく使えばお互いを引き立てる色相環の補色のような関係になり得る。
「もしかして私すごいこと言った?」
「いや、そういう意味で言ってないだろ……」
「私もとても良い案だと思う。でも、誰がキャラクターをデザインをするのか、そして誰が声をあてるのかがとても重要だと思うんだけど……」
ここをクリアしない限り実現は夢のまた夢。
「杏先輩の言う通りです。では資料の2枚目を見てください」
紫水はこの質問が来ることが予想していたの如くスムーズに2枚目の説明に移る
「まず誰に声をあてていただくかですが、やはり多賀城市とゆかりがある方が良いと思いますが、残念ながら多賀城市出身の声優の方などはいませんでした。」
紫水の言う通りできるだけ多賀城市にゆかりのある方を起用したい。
そうすればさらに期待感と説得力を持たせることができる。
「ただそれは多賀城市出身に限定したときです」
「あ!もしかして……」
凪が何か気づいたかのように声を上げる。
紫水は珍しく口角を上げ、続ける。
「ここ
「「
紫水と凪の声が重なる。
俺と捺希と鈴望もその名前を聞き、納得する。
声優に疎くともその名前は知っている。28歳ながら様々なアニメに出演し、国民的アニメの主要キャラクターの声をあてており、大御所声優にも認められている。最近の声優は露出も増え、声だけが求められているわけではない。しかし、その流れに乗るように外見も良いのである。人気はとどまることを知らないが、今依頼をでき、承諾をもらえれば……
「頼んでみる価値はあるかと思います」
「まだ決まったわけじゃないけど楽しみになってきたな!」
みんなが歓喜の最中、紫水だけは顔を崩さなかった。
「ただ、問題なのは誰にデザインを担当していただくか……です。調べましたが多賀城市または多宰府高校出身のイラストレーターや漫画家の方は僕が調べた限りいませんでした」
キャラクターデザインはやはり命と言っても過言ではない。別に多賀城市にゆかりのある人でなければいけないわけではないだろう。しかし、ここまで来たのなら多賀城市にゆかりのある人に頼みたい思いがある……
ん? いや待てよ。
多賀城市にゆかりがあればいいのであれば心当たりがあるじゃないか。
「それ解決できるかもしれない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます