第拾八話 会議閉幕哉
「この問題解決できるかもしれない」
「それっていうのは……」
「
全員が誰?と言った顔をする。
「あ!もしかして……部長会議のときの……」
「そう、
「名前言われてもピンと来ないな……」
「私も……でも2年生で部長なんだ」
ういなは目立つタイプじゃないからなー……
「美術部は3年生がいないから必然的にね」
「会長が推薦するということは腕も確かということだと思いますが……実際どうなんでしょう?」
「腕は俺が保証するまでもない」
そう、俺なんかが評価をしなくたってもうすでに。
「ういなはもうイラストレーターみたいなもんだから」
そういって俺はういなのSNSのアカウントのURLをlineのグループに共有する。
全員がそのアカウントに目を通し、でてくる感想は……
「……うまい」
「上手……」
「綺麗ですね……」
「うま……」
「すごい……」
「でしょ?」
俺が描いたわけでもないのにドヤ顔したくなる。
というよりしてるかも。
ういなはSNSに自分が描いたイラストを投稿している。そして、その投稿には毎回最低3万のいいねはつく。多いときは7~8万近くまでいくときもある。
「身近にこんな適任者がいたとは」
「まさに灯台下暗しですね」
ういなが褒められるとなぜか俺まで嬉しくなる。
「アオ君って淡藤さんと仲良いんですか?」
「あーうん、小学校一緒だしね」
「え、じゃあ私とも一緒ってことですか……全然知りませんでした」
「ういなとは家の方向が違くて一緒に帰ったりはしてないし、教室にほとんどいたから知らないのも無理ない」
「これはういなちゃんに頼む以外なくない?多賀城市育ちで多宰府高校在校生。かつこんなにフォロワーいたら宣伝効果もすごいよ!」
鈴望の言葉を聞いて
「僕も同じ気持ちです。むしろ淡藤さんに描いていただけるなら嬉しいですよ」
これで全会一致
「じゃあ明日にでも俺がういなに話しておくよ」
紫水の案はこれでひと段落。
「次は私がいってもいいかな?」
杏さんが控えめに手をあげる。
「もちろん、ではお願いします」
すると杏さんは俺と同じようにある動画のURLをグループに共有した。
「まずはその動画を見てみて」
そういわれてURLをクリックする。
画面には悠然と咲き誇るあやめや
紫や白、桃色など様々な種類があり、常に目を刺激する。
だんだんと辺りは薄暗くなり、淡い雰囲気が醸し出されると凛と咲く花々をより一層輝かせるように光が照らす。
そして、花だけじゃなく遊歩道の端にも電飾がつけられ、そこを歩く人々は提灯を片手に歩いている。
それは神秘的で情緒あふれるものであった。
「私が提案するのはあやめ園のライトアップです」
あやめ園のライトアップは確か2019年だから今から2年前から始まったんだっけ……?
「でも、調べたらもうすでに行っていたの。だからこれをもっと宣伝するのはもちろん、できるなら多賀城碑や多賀城跡のほうにまで電飾つけられないかなって」
「あ、ほらさっき
俺たちが杏さんの意図を測り損ねていたためか慌てて補足をする。
「それにあやめ園に魅了された人がそのまま光に誘われるままに歴史に触れる機会にもなるかもしれないなって……そんなにうまくいく保証なんてどこにもないけど……」
どこか自信なさげな様子を杏さんは見せる。
動画でさえあそこまで引き込まれたんだからあの場にいたらさらに魅了されていただろう。
「説得力しかないな」
「実際に私たちもそうだったしねー」
「てことは……」
「もちろん、採用ってことで」
杏さんは胸を撫でおろす。
「最後は凪なんだけど……」
「あの……あやめの花言葉から何か関連させてできないかなって思ったんですけど、いまいち良いのが思いつかなくて本当にごめんなさい」
凪は深々と頭を下げる。
「まぁまぁそんな気にすることないって。考えようとはしたんだし、それに今日じゃなくてもいいしね」
「うんうん!花言葉に着目するのは面白いよねー」
あやめの花言葉……か。
「アオはあやめの花言葉知ってる?」
聞き慣れた声。でももう聞くことができない声が脳内に反響する。
忘れないよ。
あの日から。
あやめの花言葉。
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