第拾陸話 夫婦漫才哉
「ってことがあったんだよねー」
と
当の
「捺希先輩そんな縮こまんなくていいじゃないですか。この一件で捺希先輩の評価変わる人なんていませんよ。むしろ人を頼るというのは案外難しいことだと僕は思います。それができるのは自分の弱さと向き合った人だけです。」
そして、なぜだか実感が籠っている気がした。
「人を頼ったところで必ず助けを得られるとも限らないしね。
「ちょちょっとしおりん何言ってるのかな~?私は嬉しくなんかなかったんだけど?」
「ふふふ、はいはい」
「あー絶対わかってない!」
「あーそうだよな。ありがとな、
「切り替え早いね~」
鈴望はニヤニヤしながら聞く。
「うるせっ」
ううんと咳払いをして捺希が話始める。
「えーまず多賀城市のPRできるところを最初に確認したいなと思う」
「松尾芭蕉も訪れその感動をおくの細道にも記し、国の重要文化財にも登録されてる――」
「
鈴望が割って入って言う
捺希は少し鈴望のほうに視線をやるだけで気にせず進める。
「東北随一の文化交流拠点の整備の中心となる――」
「多賀城図書館ねー」
またまた鈴望が割り込む。
それでも捺希は気にせず進めていく。
「古代東北の政治・文化の中心で日本100名城の1つの―――」
「
「誰がわかるんだよ!」
捺希の手刀が鈴望に炸裂する。
ようやく鈴望にツッコむ。
「宮城・東北の歴史・文化を楽しみながら体感できる――」
「……」
「いや、割り込んでこいよ!」
「最後はナツが言いたいのかなって」
「じゃあ今までのも言わせろよ!」
これではまるで……
「
他3人が思ってたことを紫水が代弁してくれる
「「誰が
「とまぁこんな感じでざっと挙げましたけど、多賀城市民しか知らないもしくは多賀城市民すらこのことを知らないかもしれない」
切り替え早いなー……
「というわけでSNSに力を入れるて情報を発信していくよーってことは前提で」
「万葉衣装・平安衣装の着付け体験を提案します!」
俺たち4人の頭に上には疑問符が浮かんでいる。
「ほら、浅草とか京都とかに旅行しに行くとさ着物着る人多いじゃん。普段着れないし、街の雰囲気にも合っているしで。それに皆憧れがあると思うんだよねー和装ってやつに」
確かに俺も小学校の頃、万葉衣装着たけどテンション上がったことを覚えている。
インパクトは結構強いかもな。
「でも、それって来てもらう前提ですよね?」
「そう!凪ちゃんの言う通り!でも、私SNS使う前提でって言ったよね?」
鈴望は意味ありげに笑い、自信満々に宣言する。
「ズバリ!私と凪ちゃんとしおりんがモデルとなって万葉衣装・貴族衣装を着て多賀城の歴史的な場所を背景に写真を撮り、それをSNSに挙げよう作戦!」
「なるほど……」
「鈴望先輩のこと今初めて頼れる先輩って思いましたよ」
「紫水君!?」
「で、でもモデルなんて私恥ずかしんですが……」
凪は恥ずかしがり屋なところがあるから、全国に自分の写真が公開されることには抵抗あるだろう。
「凪ちゃん大丈夫!凪ちゃんはカワイイ!それをこの美少女鈴望先輩が保障する!」
ウインクしながら勢いよくグッと親指を立てる。
「自分で美少女言うな」
ドンとまたまた手刀が炸裂する。
「あぅ……」
「私は結構やりたいかも……」
杏さんは鈴望の案に前向きである。
「やけに前向きだね」
「うーーんそうね、強いて言うならさっき千坂君にカワイイって言われたからね~」
悪戯に笑いながら俺に言う。
その顔は心臓に悪い……
「言ったけど……」
「それとも千坂君は可愛くないですよ~とかいう女の子がいいの?」
猫撫で声でいわゆるぶりっ子の真似をする。
ニヤリと俺の反応を楽しむように顔を覗いてくる。
「そういうわけじゃないけど……」
「なら、いいでしょ?」
なんか杏さん俺に対しての接し方変わってないか?
信頼されてきてるってことかな。
「凪ちゃん嫌なら無理しなくても全然大丈夫だよ?私としおりんやるし……」
凪はこういうことやるタイプではない。
「や、やっぱり私もやります……」
そして、少し悩み、出された答えは俺の予想を覆すものだった。
「ホントに!?」
鈴望も喜びと驚きが混じった反応を見せる。
「どういう風の吹きまわし?」
素直に疑問に思ったことを聞く。
「いえ、今までの私のままではいけない。そう思った。本当にそれだけです」
そこには殻を破らんとする固い意志が込められていた。
これまでに見たことのないような目をしていた。
「そっか、凪が自分で決めたならそれでいいよ」
「ありがとうございます」
いつもの笑顔を見せてくれる。
「私たち美少女3人が揃えば怖いものなんてないよ!」
「……」
「ツッコまないんかい!?」
「あの、1ついい?」
「んー?どしたしおりん?」
「これ、私たちだけじゃなくて男性陣もやるのはどうかしら?もし衣装があればだけど」
「衣装は博物館から借りられるから大丈夫だと思うけど、男性陣いるかな?華がなくない?」
「おい!」
捺希がツッコむ。
「でも、スタイルも悪いわけじゃないし、3人とも顔が整っていて系統も違って、女性から評価高そうだけど……」
凪も後ろで頷いている。
「俺たちは別にどっちでもいいよね?」
捺希と紫水に答えを求める。
どちらも首を縦に振る。
「えーでも……」
鈴望だけが渋っている。
「あ!」
急に杏さんがクイズの回答が閃いたかのように鈴望に耳打ちする。
「~~~~~~~~~~~~でしょ?」
「な、な、そ、そんなわけないでしょ~しおり~ん」
めちゃくちゃ棒読みだ。
「じゃあ、男性陣も貴族衣装で宣伝するってことでいいよね?」
「うぐぐぐぐ……」
眉間にしわを寄せている。
「白藍k―――」
「やろう!ナツもアオイも紫水君も貴族衣装着よう!全員で奈良時代行っちゃおう!」
杏さんの言葉を遮るようにして大音量で鈴望の声が響く。
「いや、鈴望先輩うるさいです」
「紫水君!?」
結局全員で奈良時代の万葉衣装・平安衣装を着る運びとなった。
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