第拾四話 本格会議哉
「はい、今度こそ始めるよ」
結局会議を始めることができたのは30分後だった。
「この会議の主旨を最初に確認しておくけど、あやめ祭りの運営に携わるうえであやめ祭りの来場者数アップと今後の多賀城市の知名度アップのために取り組めそうなことをこの3日間で考えてきてもらった。今日それを共有して金曜日に多賀城市に提案する」
5人が頷く。
そして一呼吸おいてまた話始める。
「それで考えを共有する前におそらくみんな考えてきたものっていうのはある程度一緒なんじゃないかと思う」
また5人を見て、呼吸を合わせ……
「「「「「「知名度不足」」」」」」
声が揃った。
そうなのである。6人の考えが揃ったことは驚いたけど。
多賀城市は歴史や日本史の教科書に掲載されるほど歴史的な街。
しかし、それが現代の知名度と結びついていない。
奈良時代に遡ってみよう。
奈良(平城京)・大宰府・多賀城は政治の中心であり、日本の多くの人が知っていたであろう。
そうそれはさながら東京・大阪・名古屋の三大都市圏である。
ただ今はそれから1200年後。
1200年後でも奈良と大宰府は立派な観光地なのにどうして多賀城は……
と少し落ち込みつつも落ち込んでいる暇なんてない。
どんな問題・課題でも現状が正しく把握できていないと対処の施しようがない。
逆に言えば現状が把握できているということはそれに鑑みた解決策を講じていける。
「というわけで多賀城市自体の知名度アップをはかりつつ、あやめ祭りも都度ピックアップしていくというのが無難かな。とりあえず俺から考えてきたこと発表するよ」
「俺が考えてきたのは
「……シンプルだな」
「うん、あまり奇を衒う必要もないかなって。CMはあやめ祭りに限定したものでもいい。流れるのが宮城県内だけでもいい。一枝牡丹さんを起用したCMってことが大事。それがSNSで少しでも拡散されることを願う。あとはあやめ祭りの開催期間中にトークイベントなんかを開いてそれに参加していただく。もし、参加が決まったら県内のマスコミは放っておかないだろうな」
「でも、引き受けてくれますかね……」
「それと予算がネックですね」
凪と紫水が懸念材料をだす。
そう、地元の著名人に協力を仰ぐというのはきっと最初に考えとして挙がってくる。ただ、予算やスケジュールなどの関係で頓挫してしまうケースのほうが多い。
「でも、そんなこと碧だってわかってるだろ。それでもこうやって俺たちに共有したってことは何か勝機があるから、だよな?」
「これを見て」
そういって自分のスマホの画面を差し出す。
「これは?」
「一枝牡丹さんのSNS。これを遡ってみてみると1週間から2週間くらいのペースで多賀城について何らかの投稿はしているし、多賀城市の公式のアカウントの投稿にも必ずといっていいほど反応している」
一枝牡丹について調べているうちに公式のSNSアカウントを見つけた。それを遡ってみてわかったこと。
それはこの人は多賀城のことが好きなんだということ。
そこに一縷の望みを見出した。
この申し出に対して快諾してくれるかもしれないと。
「確かにこの人今年の成人式にも新成人にビデオメッセージ送ってたし、引き受けてくれる可能性は高いかもな」
力強く頷く。
反応を見る限りこれは金曜日に提案していいものとして全員の賛成が得られたようだ。
「とりあえず俺はこれで終わり。次は捺希お願いできる?」
「おう、いいよ」
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