第14話 最強を目指して
誰の力も借りずに賊を退けられた。そうかと思えば、上空からフィーネの声とともに目の前の賊が全て吹き飛ばされていたみたいだ。
「ええっ? フィーネ様!?」
バッサバサと翼を動かしながら、彼女はゆっくりと降りて来た。彼女の背中には何故か姉弟子たちの姿が。
「探したよー探しまくっちゃったよー! しかも危ないところだったみたいだねー?」
「ど、どうしてここが分かったんですか?」
「いなくなったことに気付いたからだよ。大変だったんだよー。だけど、他の姉弟子たちに聞きまくってたら、アルルーナとアリナちゃんがリオくんを知ってるっていうもんだからー」
それにしては気付くのが遅すぎるような……。
他の姉弟子がどれくらいいるのか分からないけど、ようやく見つけてくれたわけか。
「リオ。よくやったわね。偉いわ」
「……ど、どうも」
木の枝を通じて賊たちと戦えたことを嬉しく感じたのか、ルーナが褒めてくれた。
「リオ……いい子」
アリナはあまり表情には出さないものの、自分の尻尾を使って俺の頭を撫でてくれている。フサフサした感触が何ともこそばゆい。
その光景を微笑ましく見ていたフィーネだったが、
「ずるーい!! わたしもリオくんを褒めたいのにー!」
「よく言うわよ。リオが一人で頑張っていたのを邪魔したくせに!」
「邪魔なんかしてないー! 降りようとしたら風が吹いて勝手に吹っ飛んでっただけだよー!」
「リオ、頑張ってた……フィーネの助け、無用だった」
「二人ともリオくんを助けようともしないで見てただけなのに、何でそう偉そうなの!!」
何やら雲行きが怪しい。姉同士は仲が悪いのだろうか。フィーネが一番強くて、一番上の立場かと思っていたけど……見たところはそうでも無さそうな。
「あ、あのー……ところで、フィーネ様が俺を見つけてくれたということは、この先のことはどうなるんですか? また別の姉弟子のところに行くとかじゃ……?」
落ちて来たところがたまたまアルルーナの所だったとはいえ、いい感じに教わってる気がするし、力もだいぶ戻って来た。
このままここで努力していけば、完全に衰退が止まりそうな気配も……。
「うーん、それなんだけどねー」
「え?」
俺としては、モフモフ度が高い姉弟子二人と一緒に頑張って行けばいいなと思っていたりして……。
しかし俺の行動を決めるのはそもそもフィーネ次第。強くなったと自覚しても、フィーネから見ればまだそういう段階じゃない可能性も。
「フィーネ。リオを連れて行くつもり?」
「そうだよー! リオくんは本来、もっと優しい子に預けようと考えてたんだ。だけどよりにもよって、スパルタのアルルーナの所に落ちてたなんてさー」
「……何ですって!?」
なるほど。優しい姉弟子か。落ちてしまったから仕方ないとはいえ、ルーナの厳しさはそんなに苦でも嫌でもなかったんだけどな。
途中でアリナにもモフれたし、賊相手とはいえ対等以上に戦えた。勇者の力を取り戻したとは到底言えないけど、いい感じに鍛えられている。
この状態で優しい姉弟子の所に行かされるのはさすがに……。
「……駄目。フィーネ。リオを連れて行かないで……リオ、頑張ってる。強くなろうとしている……」
アリナも俺を引き留めてくれているし、せっかく出会えたし力もついて来たわけだし、俺もフィーネに頼むしかないよな。
「むむぅぅ……アルルーナもアリナも文句を言うなんて! 肝心のリオくんはどうなの? スパルタアルルーナの所がいいのかな? 違うよねー?」
「俺は――」
「そう言えば衰退は止まってないよね?」
「まだですよ」
そう簡単に代々の呪いが克服出来るなら苦労は――
「それじゃあ……衰退するよりも先に最強を目指そうよ! それがいいよ、リオくん! そうと決まれば、リオくんを姉弟子総出で鍛えてあげちゃう!」
「へ? 姉弟子総出で!?」
「うんうん! アルルーナとアリナも連れて、みんなで一緒に暮らしちゃう! そうすれば段階も何も関係無くなると思うんだ! そうしよう! い・い・よ・ね?」
「…………仕方ないわね」
「みんな……一緒ならいい……」
フィーネの強引な発言と威圧には何も言えないのか、ルーナたちも頷くしかなかったみたいだ。
少しずつだけど力を取り戻しているとはいえ、全盛期の勇者に戻れたわけじゃない。運よくグリフォンのフィーネに助けられて、妹弟子と姉弟子とみんなの助けを得られてこうなってる。
「よぉーし! そうと決まればリオくんも背中に乗って! 出発するよー!」
「は、はい」
これから姉弟子たちに鍛えられれば、きっと代々続いた勇者の呪いもきっと解ける。
そう信じて、これから再び最強を目指そう。
姉弟子たちに教わればきっと――
衰退勇者は教わりたい ~弱った英雄は無用と追放されたので、もふもふな姉弟子たちに教わりながらのんびり生きます ~ 遥 かずら @hkz7
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