C子 4
売りだけで十分な稼ぎだったのだが、C子はお金の出所のカモフラージュとしてバイトも続けていた。
その日は雨が降っていた。
1人の常連客の予定が入っていたので迎えに来てほしいとC子から連絡があった。
早めにコンビニへ到着し、また駐車場でC子を待つ。
傘を持っていなかったのかバックを傘代わりして小走りで車へ乗り込む。
『お待たせ!』
『...え?ヤバイ、うそでしょ...』
そう言ったC子の視線の先に傘を持った親子がコチラを見ていた。
『ママと妹だ...どうしよう』
二人はコチラに近付いてくる。
無視するわけにも逃げるわけにもゆかないので窓を開けて対応する。
『あの...実は彼氏なの。雨だから迎えに来てもらっちゃった』
『...うん、大丈夫。ちゃんと夜には帰るから。』
『え?!...うん、わかった、じゃあ日程とか決めておくね』
高校生であるC子の彼氏というには、あまりにもガラが悪く見えただろう。
母親が心配するのも当然か。
後日C子の家にあいさつに来いと言われてしまった。
C子の家は平屋タイプの団地だった。
居間と寝室と台所しかない家に7人で住んでいた。
母親に居間へ案内されて食卓の前にC子と並んで座る。
妹弟達は寝室の部屋に隔離されていたが、襖を少し開けて除いているのが分かった。
次女三女は中学生、四女と弟は小学生だ。
しばらくすると父親が玄関から入って来た。
坊主に日に焼けた肌、汚れた作業着、いかにも≪ガテン系≫な風貌。
私はあわてて立ち上がり頭を下げて挨拶をする。
父親は対面に座った後、手にしていたコンビニ袋から発泡酒を取り出して無言でグビグビと飲み始める。
母親はそれのツマミを台所から持ってきて、父親の横へ座る。
予想通り私への印象は悪く、頭ごなしに罵倒し始める。
「むすめはまだこどもだろう」「おまえのとしでていしょくにつかないのはおかしい」
「ふまじめにいきてきたのだろう」「このはんざいしゃめ」「おまえもろりこんなんだろう」
「ふつうじゃない」「あたまがおかしい」
私はただ謝ることしかできなかった。
C子と離れたくなかった。
金のためとかではなく、ただ楽しく話して遊んで、
笑ったり泣いたり、そんなことができる相手を失いたくなかった。
C子は横で泣いていた。
机の下で私の手を痛いほどに握っていた。
母親が席を立ち電話を始める。
ほどなくして警察が来て私は連行され、事情聴取を受けることになる。
二度とC子に近付いてはならないと言われた。
帰り際、婦警さんにC子からのメモ書きを渡された。
『アタシが成人するか、一人暮らしできるようになったら、必ず連絡するから』
『ごめんなさい。ありがとう。ディズニー行ってみたかったな。』
10年以上経つ今、まだC子からの連絡はない。
でもそれでいいのかもしれない。
ただ、たまに思い出してしまう。
正解 inu_ga @weedtrip
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