第5話 エルフの少女
足音の正体は道端で出会った、あの女性だった。女性は家の中にいる俺を見て驚いた顔をしたがすぐ様、
「目を覚まされたんですね!もう、ご気分はよろしいんですか?」
と、尋ねてきた。
俺は無言のまま、ただ目をパチクリとさせていた。完全に挙動不審な俺と女性との間で、気不味い沈黙の空気が流れる。
「……よければ、そちらの椅子に架けて休んでもらっても構いませんよ?」
女性が優しい言葉をかけてくれた。
勧められるがままテーブルの側にあった、背もたれもついていない簡易的な造りの椅子に座る。テーブルもあまり大きくはなく、直径1mぐらいの天板が円形の物だ(高さは椅子に座った俺の胸の下ぐらい)。
座ってから思ったのだが、何故か俺には女性の言葉が全て理解できている。女性がまるで普通に日本語を喋っているかの様に聞こえている。理由はまったくわからないので、そういうのをちゃんと説明してくれなかった、あの世の神様には腹が立ってきた。
女性は一旦俺に椅子を勧めた後、木のコップに水を入れて持ってきてくれた。俺はそれを一気に飲み干した。すると、女性がまた水を入れて持ってきてくれた後、壁の側に置いてあったもう一つの椅子(上に物が置かれてあったがそれを除けて)を、俺とテーブルで向かいあうように置きそれに座った。
「どうして、あんな所で倒れていらしゃったんですか?」
……なんと答えようか迷ったが、結局は小さな声で「いえ、あの……、少し気分が悪くて……」、とだけ絞り出すように答えた。
また少しの間、沈黙の空気が流れる。俺はさっきから根暗なオタク特有の、目線を合わせない感じでチラチラと女性の顔を覗き見ていたのだが、素晴らしく整った顔立ちをしている。初めて会った時にも思ったが、こんな綺麗な人を俺は今まで生で見た事がない。筋の通った鼻筋に、弓なりで形の良い唇。少し切れ長の眼の中でエメラルド色の瞳が輝いている。そして、薄めのブロンドの長いストレートの髪。一番気になったのが耳だ。どうみても上耳の辺りが長く尖っている。もしかしてエ・ル・フ・というやつではないのか?その事について尋ねてみたいのだが、俺は真面まともに異性と会話をした事がないので(例のいじめっ子の中のビッチを除いて)、とにかくまごついていた。
4人の勇者と1人の魔王 雑草という名の草 @kosukiti
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。4人の勇者と1人の魔王の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます