第4話 魔女の家

 また目が覚めた。

 ここはどこだろう?まだボンヤリとした視界の先には、木で組んだ天井が見えた。仰向けの状態で寝かされているようで、下にはわらが敷かれてある。何故か下半身にだけ、上にも藁がかけてあった。

 上半身を起こしてみる。すると、後頭部が少しだけ痛む。貧血で引っくり返った時に打ったからかもしれない。回りを見渡してみると農機具のような物が、壁際に雑多に並べかけられてあった。どうやらここはのような建物の中らしい。下半身が妙にスッキリしているのでかけてあった藁を除けてみると、下には何も履いていなかった。そういえば倒れる前に、たっぷりとあったはずの尿意が消えてしまっている。俺は事の顛末てんまつを想像し、思わず顔を手で覆った。

 しかし、異世界に来てからいきなり気絶してしまうとは、とても危い。そのまま殺されてしまう可能性もあった訳だ。倒れた俺をわざわざここまで運び、藁の上に寝かせておいてくれたのには、運んできてくれた何者かの優しさを感じる。まだ危険が去った訳ではないかもしれないが、何かあったときには自分のでなんとかしようと思う(例の神様から貰ったやつ)。

 そろそろと立ち上がり、側に並べて置いてくれてあった自分の靴を履いた。ちなみに俺がこちらに来た時の格好は、俺が死んだ時の服装のまんまであり、上は長袖の白いブラウスに、下は黒のスラックスの一般的な学生服だ。

 靴を履いて納屋の外に出てみた。外は今、昼間の様で明るかった。納屋の周りには空き地が開けており、周囲には林が広がっている場所が多かった。納屋の側にも少し大きな建物がある。外観からしてたぶんこちらが、誰かが住んでいる本宅のような気がした。

 納屋の入り口に自分のズボンが干してあったので、それを履いた。パンツもあったが、濡れていたのでズボンだけを履く。ズボンも濡れていたが、下半身丸出しのままで歩き回るのは流石に恥ずかしい。

 辺りをそろそろと見渡しながら歩いてみても、人の気配がしなかった。仕方がないので本宅らしき建物を訪ねてみる事にする。本宅は屋根の位置からして、二階建てのような感じがした。奥に少しだけ広い15坪程度の広さの建物だ。

 本宅は地面より少しだけ床が上がっている造りで、玄関の前に二三段だけの小さな階段が付いている。それを上がって扉をノックしてみる。「コンコン」と扉を叩いてみたが、中からはなんの物音もしなかった。更に何回か叩いてみたが、やはり反応はない。しょうがなく取っ手を持って扉を開いてみた。鍵は掛かっておらず扉は簡単に開く。中を覗いてみると、やはり誰かの生活スペースのようだ。家具やなんらかの家庭用品が、いろいろと置かれている。部屋の中央にはテーブルと一脚だけ椅子があった。

 一階は一部屋だけの間取りの様だが、中央の右際辺りには梯子があり、あれで二階に上がれるようだった。

 家の中にもやはり人の気配はない。もう一度、外に出て探してみるべきか考えていた時、扉を開け放しした玄関の方から、誰かの足音が聞こえてきた。

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