第44話 文化祭の出し物決め

「じゃあ早速、夏休みの間考えてもらった案を元に、文化祭で僕たちのクラスがやる出し物を決めようと思います――」


 夏休みが終わり、高校の一大イベントである文化祭が近づいてきた。

 そのためクラス委員長であり、友人である吉田祐介よしだゆうすけが文化祭における出し物決めの進行を務めており、教壇に立っている。

 吉田の他にも一人の女子が教壇に立っているが、その子は書記だ。


 そしてその書記の女子(名前は知らない)は、発表された出し物の案を黒板に綺麗な文字で書き写していく。

 クラス全員の案が出し終わり、同じような案も多かったため、最終的に残った案はあまり多くなかった。



 黒板には縦書きでこう書かれてある。


―――――――――――――――――――――――


 文化祭出し物案


 ・お化け屋敷

 ・縁日

 ・売店(焼きそば、タピオカドリンク、スイーツ)

 ・メイド喫茶


―――――――――――――――――――――――


 ちなみにこれら以外にも、ロミオとジュリエットやシンデレラなどの劇、映画製作なども挙げられた。

 しかし劇や映画製作をするとなると、今からでは全く時間が足りないため却下となったのだ。


「やっぱりメイド喫茶一択っしょ! それ以外の選択肢はない!」


「男子たちはどうせ、柊木ひいらぎさんと桃井ももいさんのメイド服姿が見たいだけでしょ! ほんっと最低!」


「純粋も面白そうだからだよ! まぁ、少しは見たいって気持ちはあるけど……」


 ある男子が最後の一言を放った瞬間、周りにいる女子からの集中砲火を浴びることとなった。

 最低、キモい、変態、クズなどなど……罵倒が止まらない。


 今の話に名前が挙がった、好きな人である柊木瑞希ひいらぎみずきと幼馴染である桃井美羽ももいみはねは、関わりたくないのか二人とも目を瞑って耳を手で塞ぎ、見ていないフリをしている。

 そんな二人の姿を見て、俺と吉田は苦笑した。


 柊木さんは違和感なく、いつも通りに戻っていたため安心だ。良かった……


 それからも男子と女子によるメイド喫茶についての口論はどんどんエスカレートして行き、結局メイド喫茶は却下となったのだった。


「やっぱり無難に売店でいいんじゃない? 売店だったら準備だってすぐ終わるだろうし」


 メイド喫茶が却下された直後、一人の女子が大きく手を挙げて発言した。

 その意見には準備を面倒くさがる人たちが、続々と賛同し始める。


「確かに楽に準備できるのはいいけど、折角の文化祭なのにそれはつまらなくない?」


「文化祭なんだから楽しもうぜ!」


 ‴文化祭を楽しみたい‴という方が人数が少し多く、優勢だ。


 俺はどちらかと言えば準備が楽な売店派だが、俺が名乗りを上げたところでこの戦況は変化しない。

 それなら無駄に目立たず、傍観していた方が遥かにマシだ。


 机に頬杖をつきな傍観していたが、途中で寝落ちしてしまったせいか記憶が少し飛んでいたため、結局どうなったか気になって黒板の方を見る。

 すると、メイド喫茶の上に書いてある大きなバツ印が他の場所にも書かれてあることに気づく。


 なるほど……売店も却下されたのか。


 となると、残った案はお化け屋敷と縁日だ。


「この二つだったらお化け屋敷やりたいかも! 脅かす側なら絶対楽しいし、入ってきたカップルを思いっきり怖がらせてやりたいし……!」


 最後のは絶対に嫌味なのだろうが、この案に反対をする人は誰一人としていなかった。

 あまり他の人の恋愛事情は知らないが、このクラスは見事に闇に染っているみたいだ。


 周りを見渡せば、皆が皆悪い顔をしているのだ。

 吉田はそれを苦笑しながら見ていたが、俺はじっとこちらを見てくる男子たちの視線が怖くて怖くて仕方がなかった。


 どうして俺見られてるんだ……?

 もしかして、敵だと思われてる……?

 俺も彼女なんていないんだけどな……


 くして、俺たちのクラスはほぼ満場一致(俺以外)で、文化祭ではお化け屋敷をやることに決まったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る