第43話 幼馴染とプール
夏休み最終日。
誰もが憂鬱に感じる日に、俺は幼馴染である
元々は皆で海に行くことになっていたが中止になってしまい、今年は水着回はお預けかと思いきや、最終日にしてやって来たのである。
夏祭りの件もあって、女子と二人でどこかに行くというのはまだ不安だ。
しかし、美羽のことを注視して見失わないようにしようと心に決め、プールに行くことに決めたのである。
「なんか‴警察‴いるんだけどー。あっちの方にもいたし、何か事故でもあったのかな?」
「でもパトカーの中にいるだけだし、ただ止まってるだけだろ」
プールに入場するための券売機に向かってる途中、隣を歩いているカップル(?)が話していることが、否が応でも聞こえてきた。
「……警察?」
警察が来ている。
ということは、この周りで事故か事件が起きたのだろうか。
しかし、事故や事件が起こったというのは考えにくい。
なぜなら被害者が近くにいないし、警察官がパトカーの中にいるからだ(さっきのカップルも話していた)。
でももし本当に、事故や事件が起きたのなら。
美羽が狙われる可能性だって、無きにしも非ずだ。
また夏祭りの時と同じようなことが起きたら俺は……
「大丈夫だよ。きっと」
「……そう、だよな」
美羽は俺が動揺していることに気づいたのか、声をかけてくれたお陰でなんとか冷静さを取り戻す。
「ありがとうな、美羽」
「うん」
‴警察‴という言葉を聞いただけでその場に立ち尽くしていたため、当然美羽も俺に合わせて立ち止まっている。
「時間取らせてごめん、もう大丈夫だ」
そうして券を買って、早くプールに入ろうと思い歩き出した瞬間、パトカーの中にいる警察の人がパトカーから降りて近づいてきた。
周りの人がこちらをジロジロ見ながら「なになに?」とか「あのカップルが何かしたの?」などとふざけたことを言っている。
俺たちは何もしてないし、カップルでもない!
「
警察の人は言い終わってから敬礼をし、パトカーに戻って行く。
なるほど、父さんが派遣してくれたのか。
これで一安心だが、プール内で美羽がナンパされる可能性だってある。
その点では俺が注視しなければならない。
持ってきた水着に一瞬で着替え、更衣室から少し離れた待ち合わせ場所に向かう。
今日は花火大会と同じような目に遭わないようにしようと心に決めたため、絶対に、何としても美羽より早く待ち合わせ場所に行かなければならない。
彼女一人を待たせたらと思うと、嫌な予感しかしないからだ。
そして女子更衣室の出入口から目を離さない(
「晴〜! お待たせ〜!」
「ッ……!?」
驚きを隠すことが出来なかった。
こちらまで走ってくる時も、揺れている豊満な胸をなるべく見ないように少し視線をずらしていたため、近づいてきてからようやく気づく。
胸の圧倒的存在感に。
去年も美羽とは一緒にプールに来たのだが、その時よりも遥かに大きくなっている。
女子高生でこの胸の大きさは、きっと一割も存在しないだろう。
そして美羽が着ている水着は、純白のビキニだ。
シンプルイズベスト。
この純白のビキニのお陰か、元々の透明感が際立って見える。
しかし、この美羽の姿を見て、美羽に話しかける者は誰一人としていなかった。
男だけで来ている人も、チャラそうですぐにナンパしそうな見た目の人も。
自然と歩きを止め、美羽を目で追いながらもただ呆然と立ち尽くしているだけだった。
正直俺も、美羽が近くに来てから五秒くらいは固まっていたかもしれない。
気づいたら腕を組まれていて、密着して歩き出していたのだから。
密着すると、やはりこの大きさでは腕に胸が当たってしまう。
この柔らかさと弾力に意識が持っていかれ……じゃなくて!!
「ちょっ……! 美羽、なんで腕組んでるんだ!?」
「私ちゃんと腕組んでいいか聞いたよ〜? でも晴は無反応だったからいいかな〜、って思って」
「良くない良くない! その……む、胸が当たってるじゃないか!」
「別にいいよ〜。だって……わざと当ててるんだもん」
……グハッ!
自分で言っていても恥ずかしいのか、頬だけでなく耳まで赤くなっている。
恥ずかしいならしないで欲しいんだが……俺の理性がもたないし。
結局そのままプールまで歩き、二人一緒に着水する。
歩いている間、色々な男から注目を浴びていたが、視線がやばかった。めっちゃ怖かった。
どうやらこの後も、絶対に美羽を一人にさせるわけにはいかないようだ。
それからはしばらく、流れるプールや二人で滑れるウォータースライダーなどに行って遊び、夏休み最終日にして充実した一日を過ごすことが出来た。
今日はずっと一緒にいたため、美羽が他の男からナンパされることはなかったし、事件が起こることもなかった(本当に良かった……)。
帰る時にはずっと外で見張りをしてくれていたらしい警察の人たちにお礼をして、帰路に就いたのだった。
明日からはまた学校が始まる。
休み明けということもあって憂鬱だが、久しぶりに四人で話せるというのは楽しみだ。
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