第37話 夏休みの過ごし方

「よっしゃーー!! やっと夏休みだー!!」


「なーなー! 夏休みどこ行く?」


「やっぱり海しかないっしょ! 綺麗なお姉さんを見に!」


 夏休み前の最後の授業が終わり、クラス中が歓喜に満ち溢れていた。


 そして突然だが、クラス中から聞こえてくる話にツッコミを入れさせてもらう。

 海に行く目的違くね!? (間違いない)


 ……そして、クラス中が歓喜に満ち溢れている中、俺たちは教室の隅で夏休みの過ごし方について話していた。


 ちなみに俺たちとは、俺と好きな人である柊木瑞希ひいらぎみずき、幼馴染である桃井美羽ももいみはね、友人である吉田祐介よしだゆうすけの四人のことである。

 最近はもう、この四人が固定メンバーとなっている。


 最初の方は美羽が柊木さんのことを敵視していたような気もするが、最近は全く敵視していないように見える。

 何があったのかは知らないが、こっちの方が平和で楽しい。


「ね〜ね〜! 皆でどこか行こうよ〜!」


「行くならやっぱり海かな」


「海は当たり前だよ〜!」


「他には……」


 夏の定番である海は全員の了承を得ることなく、確定で行くことになった。

 ちなみに了承していないのは、俺と柊木さん。


 俺は別に構わないが、柊木さんはどうかと視線を送ってみる。

 クラスの男子たちが綺麗なお姉さん目当てで海に行くと言っていることもあって、嫌ではないだろうかと思ったが、全然そんなことはなかった。


 むしろ逆で、今ここにいる四人の中で一番楽しそうな顔をしている。


「花火大会!! 花火大会に行きたいわ!」


「花火大会もいいね〜! 皆で着ようよ!」


 美羽の不用意な発言により、クラス中の男子たちは急に静まり返った。


 恐らく、男子一同は同じことを想像しているのだろう。

 学校内で一番目に可愛いと言われる柊木さんと、二番目に可愛いと言われる美羽の浴衣姿を。


 そして再び、いや先程よりも大きな声でクラス中の男子たちは叫び始める。


 分かるよ!

 俺も早く見たいもん! いや、今すぐにでも見たい!


「あー、ごめん。花火大会はちょっと……」


 ここで断りを入れたのは吉田だ。

 まぁ、それは無理もないだろう。

 吉田には咲華花恋さいかかれんという彼女がいるし、花火大会くらいは彼女と過ごしたいに決まっている。


 と、いうことは…………


「そっか〜……じゃあ、三人で行こ〜!」


 俺と柊木さんと美羽の三人で花火大会!?!?


九条くじょうずるいぞー!」


「くそう……あまりにも俺が可哀想だっ……!」


「どうしてあいつなんだ……!」


「神様が俺の味方をしてくれない!!」


 こんな感じで、四方八方から批判が聞こえてくるが、今はそれどころではない。


 花火大会……めっちゃ楽しみです!!



 しかし、夏休みはやることがいっぱいだな……


 学校で行くことが決まった、海と花火大会。


 そして、前に柊木さんへのお詫びとして二人でどこかに行く約束もあるし、義妹である九条琉那くじょうるなにも美味しいスイーツ屋さんに連れて行く約束をしている。


 あとは読書でしょ? 読書でしょ? それに読書をしなければならない(少しは勉強しろ)。


 さらに突然美羽が家にやって来て、俺をどこかに連れ出すということも何度かあるだろう。

 去年の夏休みなんて、ほぼ毎日のように連れ出されたし。

 別に嫌ではないけど、程々にして欲しいとは思う。



 明日から夏休みだ。

 来年の夏は受験のために猛勉強しなければいけないし、今年の夏は勉強なんてせずに、楽しんで楽しんで楽しみ尽くしてやる!! (だから少しくらいは勉強しろ)

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