第31話 それぞれの思惑 ※視点変化あり
※※
私――九条琉那は、明日に控えたお義兄ちゃんである
本当は
それに一緒に選びに行ったら、お義兄ちゃんの大好物がスイーツだということがバレてしまう。
そう、私がお義兄ちゃんの誕生日に渡すプレゼントは、家族以外誰も知らないお義兄ちゃんの大好物、スイーツなのである。
理由は単純明快。
お義兄ちゃんの大好物だし、絶対に他の二人(美羽ちゃんと
これで被ったら逆にすごいと思う。
「ケーキはもう買ってあるから……」
お義兄ちゃんはスイーツと言っても、洋菓子より和菓子派だ。
どっちみちお母さんがケーキを買っていたため、洋菓子ではなく和菓子を買うしか選択肢がないけど。
そのため、和菓子コーナーを目掛けて、少しでも早く帰れるように小走りする。
早く帰りたい理由はただ一つ。
美羽ちゃんや柊木さんに見られないため。
この二人に見られないように、わざわざ開店してすぐにこのショッピングモールにやって来たのだ。
「え……これすごくいいじゃん!」
私が目をつけたのは、季節の高級上生菓子と書かれた和菓子。
ちなみに上生菓子というのは、季節に相応しい趣を取り入れ、和菓子職人が伝承の技術を駆使して、一つ一つ丁寧に手作りで作り上げられた和菓子だ。
中には、
これなら私だって食べたいし、お義兄ちゃんは絶対喜ぶ。
……ひ、一つだけなら食べさせてくれるよね。
もちろん私のためではなく、お義兄ちゃんのために購入して、颯爽と家路についた。
※※
私――桃井美羽は、明日に控えた幼馴染である九条晴也の誕生日プレゼントを選びに、ショッピングモールに一人で来ていた。
本当は琉那ちゃんを誘って一緒に選ぼうと思ってたんだけど、もう正々堂々と勝負すると決めたし、誘うわけにはいかなかった。
正直、私以上に晴のことをわかっている人がいるとは思えないし、わざわざ‴敵‴と一緒に選ぶなんて愚行にも程があるしね。
そうして結局、朝から選びに行こうと思っていたのに寝坊してしまい、昼からショッピングモールに来ていた。
「晴は私にすごくいい物をプレゼントしてくれた。私も晴に驚かれるくらいいい物をプレゼントしなきゃ!」
そう思い、ショッピングモールにある色々なお店を回って、必死に考えて考えた結果。
「ダメだ〜! 全っ然いいのが見つからない〜!」
晴の好きそうな財布、ネックレス、香水など色々考えたが、全くいい物が見つからなかった。
「どうしよう……もう今から違うところに行っても、どのお店も閉まる頃だし……」
現在時刻は二十時。
どのお店も二十一時には閉まってしまうため、今いるショッピングモールで選ぶ以外に選択肢がない。
仕方がないけど、最終手段だ――――
※※
私――柊木瑞希は、明日に控えた九条晴也の誕生日プレゼントを選びに、ショッピングモールに弟である
決して私が男子へのプレゼントで、何を選べばいいのか分からないから付いてきてもらった、なんてことはない。
本当にただ凑が「俺も行きたい。どうしても行きたい」って言っていたから、仕方がなく一緒に来ただけであって、私から頼んだりなんかしてるわけがない。
(本当は『いつも彼女役やってあげてるんだから、少しは私の協力もしなさい!』と言って、男の子への初のプレゼント選びを手伝ってもらうために、弟と来ているのである)
「ねぇ凑、あなたはどんな物を貰ったら喜ぶの?」
「そりゃあ好きな人から貰った物なら何でも」
はい、こいつ役に立ちません。
これだからチャラい男子は嫌いなんだ。
「姉ちゃん……? 俺何か変なこと言った……?」
「もう凑帰ってくれる? 用済みだから」
「ひ、酷い……! 折角付いてきてあげたのに!」
こんな役立たずを付いてこさせたのは間違いだった。
絶対に要らなかったでしょ、こいつ。
折角いつも色々なプレゼントを女子から貰っている凑に、選ぶのを手伝ってもらおうと思っていたのに!
「わ、分かった! 俺もちゃんと手伝うからさ!」
「本当かしら? もし役に立たなかったら……」
……どうしてあげようかしら。
凑が通っている中学校で、凑には彼女がいないってバラしてあげるのは悪くないわね。
「はい! 全力でサポートするので、それだけはご勘弁を!」
どうやら言わずとも分かっているらしい。
さすが何度もこのネタで脅してきただけある。
それからしばらく凑に助言を貰いつつ、色々なお店を回っていい物を探したものの、結局何も見つからなかった。
まぁ、凑が役に立たなかったということはなかったし、凑に彼女がいないことをバラすのはやめてあげよう。
でも、どうしよう……明日は九条くんの誕生日なのに……
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