第28話 勉強会(?)

 大体の高校生にとって、一番嫌な時期。

 それは定期テスト期間と呼ばれる、定期テスト二週間前辺りから勉強を始めなければいけない時期。


 俺の高校では、赤点もとい三十点未満を取った場合には、特別補習として放課後に残って居残り勉強をしなければならない。

 皆はそれが嫌で嫌で仕方がないため、定期テスト期間は必死に勉強を頑張るのだ。


 今回は高校二年生になってから初めての定期テストだが、中間テストなため、このテストが終わっても休みになることはない。

 どうしてこの学校は定期テストが五回もあるんだ! 勉強なんてやりたくないのに! (もう高校辞めてしまえ)


 そして今日、なぜか俺の家で勉強会を開くことになった。

 そのメンバーは、俺、幼馴染である桃井美羽ももいみはね、好きな人である柊木瑞希ひいらぎみずき、最近仲良くなった吉田祐介よしだゆうすけの四人だ。

 まぁ、ざっくり言えば校外学習で同じ班になったメンバーだ。


 このメンバーを頭の良さ順で並べると、柊木さん、吉田、俺、美羽の順だろう。

 柊木さんと吉田は才色兼備で有名だが、美羽はいつも赤点ギリギリ回避できるくらい。

 ちなみに俺は、全部平均ってところだ。


「はぁ……勉強したくないな〜」


「美羽、お前は一番やらなきゃやばいからな?」


 四人で俺の家に向かっている途中、美羽だけはどうしてもやる気が出ないのか、うつむきながら歩いていた。


「でもさ〜、勉強ずっとしててもつまらないよ?」


「つまらなくてもやらなきゃダメなんだよ」


 再び「はぁ……」と息をついて俯く美羽。

 確かに勉強をずっとしていて、楽しいと思ったことはない。

 将来的にやっといた方がいいから、ただやっているだけだ(それでも平均って……)。



 そんなこんなで家に着き、二階にある部屋に皆を案内すると、驚きの声が上がった。

 男子の部屋には思えないくらい綺麗だとか、全然家具ないなとか。

 確かに俺の部屋には勉強机やベッド、本棚くらいしかない。あまり物欲がないから仕方がないじゃないか。


「あ、俺お茶とかお菓子取ってくるから、適当に勉強始めててくれ」


はる、手伝おうか?」


「大丈夫だよ」


 美羽、気遣いは嬉しいが、お前は勉強しろ?

 それにお茶とお菓子を持ってくるくらい、一人で出来るからな。

 俺が準備している間、お前は吉田と柊木さんにしごかれとけよ。



 一階に戻り、適当にお茶とお菓子を用意していると、今帰ってきたのか義妹である九条琉那くじょうるなが制服姿で話しかけてきた。


「お義兄ちゃん、ただいまー。誰か来てるの?」


「おう、おかえり。美羽と柊木さんと新しく友達になった――――」


 しかし、俺の話を最後まで聞かずに、琉那は走ってどこかに行ってしまった。

 階段を上っている音が聞こえるから、二階に向かっているのだろう。


 用意したお茶とお菓子を持って、俺も続いて二階に行くと、琉那が美羽の手を引いて自分の部屋に入っていくのが見えた。


「おい琉那! 俺たちはこれから勉強するんだ。あまり邪魔しないでくれよ?」


「ちょっとだけ美羽ちゃん借りる! ちょっとだけね!」


 なぜかちょっとだけを二回言って、それからしばらく部屋から出てこない二人。

 一体どんな話をしているのかは分からないが、美羽にはそろそろ勉強させなければならない。


 それに、そろそろ美羽が戻ってこなきゃ俺が死んじゃうから。

 柊木さん(学年上位)と吉田(学年上位)のスパルタ指導から助けてくれ……



 晴也はるやが柊木さんと吉田にしごかれている間、美羽と琉那はかなり小さな声で口論をしていた。


「どうして美羽ちゃんは柊木さんと仲良くしてるの!? お義兄ちゃんとの関係を邪魔するんじゃなかったの!?」


「いや〜、ごめんね琉那ちゃん。でもさ、私気づいちゃったんだよね」


 琉那は何を? と聞こうとしたが、グッとこらえて押し黙り、続きを促す。


「私と柊木さんが料理対決した時あったでしょ? その時に気づいたの。やっぱり柊木さんも私と同じくらい晴のこと好きなんだな、って」


「でもそれは元々……」


「そう、本当は元々気づいてた。でも気付かないフリをしてた。だってしょうがないじゃん。気付かないふりでもしなきゃ、晴の近くにいれない。私たちはあの二人にとって邪魔な存在だから」


「確かにそうだけど……」


「だから決めたの。私は二人の邪魔をするんじゃなくて、正々堂々勝負して、柊木さんに勝つって」


 琉那は美羽の話を聞いて、色々なことを考えていた。

 どうして私に話してくれなかったのか。

 私も美羽ちゃんのように、正々堂々と勝負しなきゃダメなのか。

 でも、それでは勝ち目なんてないじゃないか。


「琉那ちゃん、ごめんね。私一人で勝手に全部決めちゃって」


「いや、それは別にいいけど……私も正々堂々真正面からぶつかろうかな……」


「いいと思う。一緒に頑張ろうね」


「うん……」


 美羽は変わった。

 いつ、どこで、何があったのだろうか――――

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