第27話 体育の時間
先日、俺たち二年生は校外学習として、有名な某遊園地に行った。
一時はどうなるかと思ったが、最終的には楽しむこともできたし、また遊園地に行く約束もできて、本当に良い一日だった。
しかし今日、校外学習の次の日にも関わらず、登校しなければいけない。
校外学習の次の日くらい休ませろ! と、大半の生徒は思っているかもしれないが、俺は別にそうは思わない。
確かに疲れているから休みたい、という気持ちはあるが、それよりも好きな人に会えるという気持ちの方が強いからだ。
いつも通り幼馴染である
そして、六時限目である俺の一番嫌いな科目、体育の時間がやってきた。
今日は男子がバスケットボール、女子がテニスをやる日だ。
体育が好きな高校生は多いかもしれないが、俺みたいな孤立している生徒にとっては苦でしかないのだ。
特に二人組を作れ、という指示が苦でしかない。
間違いなく余り物だからな。
「じゃあ、まずはドライブ練習をする。いつものように二人組を作ってくれ」
バスケットボールでいうドライブ練習とは、ドリブルでディフェンスエリアに切り込み、ゴールに向かう練習だ。
でも、俺にはその肝心な相手がいないわけだが……
「
俺に声を掛けてきた男子、彼の名前は
昨日の校外学習で一緒の班だった奴だ。
「え……いいのか?」
「もちろんだよ。いつも同じ相手だとつまらないし、九条くんはバスケ上手だし練習になるからね」
そう言ってから見せた爽やかな笑顔は、もし周りに女子がいたらイチコロになっていたであろう、破壊力抜群の笑顔だった。
それから十分ほど吉田とドライブ練習をすると、五人一組のチームを四つ作り、
もちろん俺は余らないように吉田のチームに入れてもらった。
「僕たちはまずは休みになったよ」
「了解」
俺と吉田は目の前で行われている
「そういえばさ、九条くんは
「……え?」
吉田からのあまりにも突然すぎる質問。
それに、明らかに体育の授業中にする質問ではない。
「好きなんだろ? 柊木さんか桃井さんのこと」
確かに俺は柊木さん――
でも、どうして美羽のことまで挙げるのだろうか。
「……言わないでおこう」
「なんで!?」
「他の男子たちに知られたら面倒だからな」
何かを考えているのか、顎に手を当てる吉田。
正直、嫌な予感しかしない。
そして、いいことを思いついたのか、「あ!!」と突然大きな声を上げた。
「じゃあ、僕の彼女が誰か教えるから教えてよ。それなら問題ないだろう?」
吉田は彼女がいることを隠している。
そして、もし俺が好きな人を教えたとして、吉田から俺の好きな人が柊木さんだということが漏れれば、吉田に彼女がいることを女子たちにバラせばいいと思った。
でも、その彼女が誰なのかは知らないため、
ただし、吉田の彼女の名前を知ることができれば、信憑性が増す。
それに吉田のような学校中で人気者の彼女が誰なのか、ずっと気になっていた。
まぁ、吉田に見合う超美少女に違いないが。
「それなら構わない」
「じゃあ、耳を貸して」
「あ、ああ……」
やはり周りの人に聞かれるのは嫌なのか、さらに小声で吉田の彼女の名前が聞こえてくる。
その名前は――――
「え、まじ?」
「……うん」
咲華さんは、高校に入学してからしばらく経ったある日に、学校中の男子だけで密かに行われた投票で三番目に多く票を集めた女子だ。
そのお題は、この学校で一番可愛いと思う女子。
すなわち、吉田の彼女は校内で三番目に可愛いと思われている女子、ということだ。
聞いた話だと、彼女の可憐な姿に惚れる男子が多いらしい。
俺も何度か廊下ですれ違ったことはあるが、とても可愛らしく守ってあげたくなるような人だなと思った。
きっと吉田もそう思っているのだろうが。
「どっちから告白したんだ?」
「……僕だよ。不服だけど、彼女の可憐な姿に一目惚れしちゃってね」
今まで一目惚れなんてしたことなかったのにね、と付け足して苦笑する吉田。
一目惚れ、か。俺と同じじゃないか。
「なるほど……」
「ところで、九条くんはどっちが好きなんだい?」
「ああ、俺の好きな人は柊木さんだよ」
「えぇ!? そうなの!?」
俺の返答を聞いて、驚いたのか突拍子もない声を上げた吉田。
いや、なんでそんなに驚くんだよ。
「僕はてっきり、九条くんは桃井さんのことが好きなんだろうなって思ってたよ」
「美羽は……ただの幼馴染だよ」
「そうなんだ?」
「ああ」
そう、美羽はただの幼馴染だ。
恋愛的な感情を持っているなんてことは、ない。
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