第26話 校外学習 遊園地編

 校外学習当日。

 俺たち二年生はクラス別にバスで、目的地である有名な某遊園地に向かっていた。


 ちなみにバスでは、基本的に以前に決めた班ごとで固まって座らなければならない。

 そこで問題の席順だが……


 バスでの席順を決める時は、色々あってすごく大変だった。

 俺の好きな人である柊木瑞希ひいらぎみずきと、幼馴染である桃井美羽ももいみはねの口論はいつまで経っても終わらないし。


 なんで口論していたのかは分からないけど……


 まぁ、俺は一緒の班になった吉田祐介よしだゆうすけと話してみたいということもあって、結局俺と吉田、柊木さんと美羽が隣同士で座ることになったのだった。



「ねぇ、九条くじょうくんは今日楽しみかい?」


 朝早くからバス移動なため、周りに座っているクラスメイトが眠っている中、隣に座っている吉田が急に変なことを聞いてきた。


「え? それはもちろん楽しみだよ。そう言う吉田は楽しみじゃないのか?」


「いいや、僕ももちろん楽しみだよ。ずっと話してみたいと思っていた九条くんとも話せてるわけだし」


「そ、そうなのか……?」


「うん。だって…………」


「だって?」


「ああ、いや、普通に面白そうだなって思ってさ」


 学校中で人気者な吉田が俺と話してみたい、と思ってくれていたのは少し意外だし、素直に嬉しい。

 けど、さっき空けた間はなんだ?


「そうか」



 それからは様々な話で盛り上がり、いつの間にか目的地である有名な某遊園地に到着していた。


 急いで後ろで寝ている柊木さんと美羽を起こし、バスを降りると、目の前には楽しみにしていた遊園地……じゃなくて、既に到着している他クラスの人たちがいた。

 その他クラスの人たちの目的は言わずもがなで…………


「吉田くーん! 私たちと一緒に回ろー!」


「柊木さん! 僕たちがエスコートするので、よかったら一緒に!」


「桃井さん! 俺たちと一緒に回りませんか!?」


「「「ギャーギャーギャー」」」


 まーた俺が孤立状態になっちゃったじゃないか。


 悲しい……わけないじゃん! ぐすん……


 助けることは出来なさそうだし、とりあえず三人があの群集から抜け出してくるのを待っていよう。

 あの中に入って行けば、間違いなく無駄死にになるだけだしな。



 待ち始めてから数分後、なんとか抜け出して来た三人とともに、遊園地を楽しもうと歩き出したものの、いつの間にか俺の周りには誰もいなくなっていた。


 と、思ったら後ろの方でベンチに座って、頭を抱えている三人を発見。

 一人で楽しげに歩いているのも恥ずかしいし、急いで三人の下に向かうと……


「あはは……ごめんね、九条くん。ちょっと疲れちゃってね……」


 校外学習として、遊園地に入ってから約十分。

 既に俺以外の班員は疲れ果てています。


 うーん、ちゃんと楽しむことができるか不安になってきたぞ?


「人気者は辛いな。とりあえず少し休もうか」


「本当にごめんね……ありがとう」


 三人とも少し顔色が悪いため、近くにあった自動販売機で水を買ってあげた方がいいかもしれない。


 買った水を渡してから二十分ほど休ませると、ようやく皆は復活した。


 そして、それからとしては、午前は迷路やメリーゴーランドのような気軽に楽しめるアトラクションに乗り、午後はジェットコースターなどの絶叫系のアトラクションに乗った。

 席順などで色々揉めたりもしたが、非常に充実していて楽しい一日になった。



「いや〜、本当に楽しかったね〜! また皆で来ようね〜!」


「桃井さん、それナイスアイディアよ! 私も邪魔をされたせいで最初はあまり楽しめなかったし、また来たいわ」


「うん、僕も賛成だよ。九条くんはどうかな?」


「いいんじゃないか? 俺もちょうど皆とまた来たいなって思ってたし」


 と言ってはいるが、内心ではちょっと違うことを考えていた。


(よっしゃぁぁぁあああ!! 柊木さんとまた遊園地に行くことができる!!)


 皆には申し訳ないが、完全に下心丸出しである。


「じゃあ決まりね! いつになるかは分からないけど、皆の予定が合う日に行こうね!」


「「「うん!」」」



 くして、一時はどうなるかと思った校外学習だが、最終的には楽しむこともできたし、また遊園地に来る約束もできて、本当に良かった。


 早くまた柊木さんと(皆と)一緒に遊園地に行きたいなぁ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る