第20話 幼馴染は人気者
〜〜〜回想〜〜〜
高校に入学してからしばらく経ったある日、学校中の男子だけに密かに投票用紙が配られた。
その用紙には、
―――――――――――――――――――――――
お題:この学校で一番可愛いと思う女子
名前:
―――――――――――――――――――――――
と、書かれてあった。
その投票による集計結果では、一番票を多く集めたのが、俺の好きな人である
二番目に票を多く集めたのが、俺の幼馴染である
柊木さんは入学してからすぐにも注目を集めていたため言わずもがなだが、当時は正直美羽が人気を集めているという事実は予想外だった。
確かに美羽は八方美人で、元気で明るく、容姿もかなり整っている。
それなら人気になってもおかしくないが、自分の幼馴染が学校中の人気者だという実感が全くわかなかったのを未だに覚えている。
そして、その投票結果が開示された日から美羽の人気度は日に日に増していった。
〜〜〜
昨日は美羽の誕生日だった。
それなのに、なぜか今日も色々な人からプレゼントを貰っている。
昨日だけで四十個くらい貰ったって言ってなかったっけ……?
いくら何でもたくさん貰いすぎだろ。
どんだけ人気なんだよ、あいつ。
休み時間はいつも美羽と一緒にいる(最近は柊木さんとも一緒にいる)ため、美羽にプレゼントを渡してくる人たちの話を聞いてみると……
「家に忘れちゃって……」らしい。
今渡しに来た数人の言い訳は全てこれだ。
絶対元々知らなかったが、昨日知って急いで用意したのだろう。なんて奴らだ。
嘘つきは泥棒の始まりなんだぞ! と、家に忘れたという言い訳を使って、家に来るように仕向けた奴(俺)が言っております。
でも、あれはしょうがなくない……?
寝不足で美羽の家に行けなかったというのもあるけど、シルバーリングなんかを学校で渡したら、どんな目に遭うかわからないし。
絶対美羽が叫び出して、学校中の男子たちに半殺しにされるに違いない。
それなら誰にも見られることのない家で渡した方がいいに決まっている。
よくこの思考にたどり着いた。
大儀であったぞ、昨日の寝不足の俺。
「なぁ、
昨日の自分の行いに称賛していると、同じクラスの名も知らぬ男子Bが話しかけてきた。
その同じクラスの名も知らぬ男子Bの後ろには、二人の男子が控えている。
…………え? もう俺のことを半殺しにするの?
さすがに来るの早すぎませんかね?
「……なんだ?」
「お前って、桃井さんに誕生日プレゼントは何を渡したんだ?」
よかった……まだ半殺しにはされないみたいだ。
でも、渡した物が何か誰にもバレないように家で渡したんだし、何がなんでも教えるわけにはいかない。
「ごめん。さすがにそれは言えない」
「なんでだよ。別にいいだろ」
「勘弁してくれ……」
それからしばらくの間沈黙が続いていると、諦めたのか同じクラスの名も知らぬ男子Bは、ため息をついてから「わかった。こちらこそ変な質問して悪かったな」と言って、後ろにいた二人と共に去っていった。
一体なんだったんだ……?
全ての授業が終わり、俺は美羽と一緒に帰り道を歩いていた。
美羽は毎日少しずつ貰ったプレゼントを持って帰るらしく、大きめな手提げバッグを大事そうに抱えながら歩いている。
「……持とうか?」
「いいの? ありがと〜」
「ん」
美羽が大事そうに抱えていたため、俺も手荒に扱ってはいけない。
そのため、美羽から受け取って、俺も傷一つつかないように抱えた。
「美羽って、貰ったプレゼントとかどうするんだ?」
「ん〜とね〜、一年前に貰ったのだと消耗品で使えそうな物はありがたく使わせてもらって、お菓子とかスイーツは全部美味しくいただいたよ」
「まじかよ……もし変な物とか入れられてたらどうするんだよ」
俺が本気で心配したのをよそに、美羽は優しく微笑んだ。
「私、信じてるから」
「……え?」
「私にプレゼントをくれる人の中に悪いことをする人がいないってこと、信じてるから」
何なんだよ。天使かよ、こいつは。
でも…………
「信じるのはいいことだが、少しは疑うくらいしろよ? 本当に危ないし、何かあったら遅いからさ」
「うん。心配してくれてありがとう、
「おう」
それからはいつも通り、たわいもない話で盛り上がりながら、美羽を家まで送った。
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