第17話 幼馴染へのプレゼント選び
俺の好きな人である
廊下ですれ違った時に殺意を向けてくる人は、まだ少しいるが、最近はもうあまり気にならなくなってきている。
柊木さんのおかげで、今日もいい気分で学校に行けそうだ。
(学校に着いたら、またお礼するか……)
お礼という口実を作って話しかけようとか、そんなこと1ミリも思ってないからね!?
嘘じゃないからね!(すみません嘘です)
お礼をした後に何を話すか考えながら、スマホのロックを解除すると、とても重要なことを思い出した。
今日は四月十八日、月曜日。
そう、明日は俺の幼馴染である
「あっぶねー! このまま気づかずに過ごしていたら、間違いなく殺されてたわ……」
美羽は俺からの誕生日プレゼントは何よりも楽しみで、何よりも嬉しいと言っていた。
それを本人の目の前で、照れながら言ってくるため、こちら側としてもすごく嬉しい。
これでもし、忘れてたなんて言った場合には、美羽は泣き出してしまうかもしれない。
俺は何としても美羽が泣く姿は見たくないため、よかった、と呟きながら胸を撫で下ろした。
学校に行く準備を済ませて、ダイニングに向かうと、制服を着た義妹である
「あ、お義兄ちゃんおはよー」
「おう、おはよ」
「ねね、そういえば美羽ちゃんの誕生日って明日だよね? プレゼントもう買った?」
「一応今日の放課後に買いに行く予定だけど……」
「まだ買ってないんだ! よかったー! 私もまだ買ってないから、よかったら一緒に買いに行かない?」
一年前の誕生日にはプレゼントなんて渡さなかったのに……本当に美羽と琉那は仲良くなったんだな。よかった。
でも、どうして急に仲良くなったんだろうな……
「ああ、いいよ。じゃあ、放課後になったら教室行くから待っててくれ」
「うん、わかった!」
放課後になり、念のため俺は美羽に断りを入れて、琉那と一緒にショッピングモールに向かっていた。
今から行くショッピングモールは、美羽とデート(?)をした場所だということは、口が裂けても言えない。
絶対に言わないようにしなければいけないな。
「お義兄ちゃんは、何買う予定なの?」
「うーん、正直まだ決まってないんだよな。毎年美羽にはぬいぐるみをプレゼントしてきたけど、もう高校生だし……」
「確かに美羽ちゃんは可愛いもの好きそうだし、ぬいぐるみはいいプレゼントだね。でも、そろそろ違うもの渡さないと、またぬいぐるみか……違うのがいいなって思われちゃうかも」
「だよなぁ……」
やっぱりぬいぐるみは、もうやめた方がいいよな。
でも、それ以外で女子にあげて喜ぶものなんて、何があるんだ?
コスメやアクセサリー、そして美羽は料理が趣味だから、料理関係の物とかもありだけど……
「やばいな……今日中に決められるか分かんねぇ……」
もっと早く気づければよかった。
そうすれば、悩みに悩んでよりいい物をプレゼントすることが出来たに違いない。
「まぁ、私もいるし、プレゼントする物は一緒に選べば大丈夫だよ」
「そうだな……ありがとう、琉那」
「うん!」
頭を縦に振ってから見せた黄色いたんぽぽみたいな笑顔は、見た人全員を癒すほどに愛くるしい笑顔だった。
そしてショッピングモールに着き、俺はしばらく美羽が喜びそうな物を探していると、琉那はずっと同じところに佇んで、物欲しそうにしながら何かを凝視していた。
「琉那、どうしたんだ?」
気になって話しかけてみたものの、琉那からの返事はない。
ただずっと口をぽかんと開けて「あわわわわわ……」と呟いている。
「……琉那?」
再び話しかけてみると、琉那は驚いた様子でこちらに振り向いた。
「おおおおおお義兄ちゃん!? ……何か用?」
「いや、ずっとそこに立って何かを見てたから、気になっただけだよ」
「あ、そう……」
会話が終了したところで、琉那がずっと見ていた方向に目を向けると、そこには小さなクマのぬいぐるみがたくさん置かれてあった。
「琉那って、ぬいぐるみ好きだったんだな」
「……うん」
琉那が義妹になってから一年近く経ったが、ぬいぐるみ好きだということは初めて知った。
なぜなら、部屋の中にはぬいぐるみなんて一つも見当たらないし、そのような素振りを今まで見せなかったからだ。
「欲しいなら買ってあげてもいいぞ」
「本当に!?」
「あ、ああ」
「やったぁぁあああ!!!!」
幼い子どものようにはしゃぎながら、バンザイをして大喜びした琉那。
そのあまりの無邪気さに、自然と笑みがこぼれてしまう(可愛すぎる)。
琉那にもこんな一面があったとはな……
って、今日は美羽の誕生日プレゼントを買いに来たんだった!!!!
「琉那! そのぬいぐるみは買うならさっさと買って、美羽へのプレゼント考えないと!」
「私はもう何買うか決めてるけど……?」
確かにそう言った琉那の手には、何かが握られている。恐らく化粧品や香水のどちらかだろう。
「おいおいまじかよ……」
やばい、やばい!
閉店時間まであと一時間弱。もう時間もあまりない。
一体何をあげれば、美羽は喜んでくれるんだ……?
どうしよう、どうしよう、どうしよう!
「お義兄ちゃん」
焦りすぎて頭の中が真っ白になりかけた瞬間、琉那が優しい声で俺に呼びかけた。
「……ん?」
「お義兄ちゃんは美羽ちゃんに何をあげたら喜ぶのか、ってずっと考えてるでしょ?」
「あ、ああ……」
「そういうのは一旦置いといて、お義兄ちゃんが美羽ちゃんに合うと思う物を選んでみたら? それに、美羽ちゃんはきっとお義兄ちゃんからのプレゼントなら何でも喜んでくれると思うよ」
美羽に合うもの……か。
そういえば、美羽は最近アクセサリーを集めることにハマっているんだったな。
それなら美羽に合うアクセサリーがあれば……!
瞬時にアクセサリーが置いてある場所に向かい、美羽が似合いそうなアクセサリーを探し始める。
「あ……! これだ……!」
※※※
俺と琉那は美羽へのプレゼントを無事に購入し、二人で並んで家に向かって帰っていた。
ちなみに琉那は、先程買ったクマのぬいぐるみを袋から早速出して、抱きながら歩いている(可愛すぎる)。
「いやー、本当に助かったよ。ありがとうな、琉那」
「全然大したことはしてないよ。でも、よかったね。‴あれ‴なら、きっと美羽ちゃんも喜んでくれると思うよ」
「そうだといいな……」
明日は美羽の誕生日。
一生の思い出になるように、俺と琉那で盛大に祝ってあげよう、そう心に誓った。
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