第18話 幼馴染の誕生日 ① ※桃井美羽視点
四月十九日――今日は私、
毎年楽しみで楽しみで仕方がない日。
昨日の夜はずっと、今日が楽しみすぎて全然寝ることが出来なかったくらいだ。
幼馴染である
「はぁ……晴に早く会いたいな〜」
いつもより早めに学校に向かいながら(晴の家には敢えて行かない)そんなことを呟いていると、一人の男子が話しかけてきた。
「あ、あの! 桃井さん! おはようございます!」
「……えっと、おはよう?」
話しかけてきたのは、メガネをかけていて、私と同じくらいの背丈で、晴よりも少し小さめな男子。
同じ高校の制服を着ていて、ネクタイが赤色なため、恐らく同じ学年だろう(全然見覚えがない)。
そう、私が通っている高校では、ネクタイの色によって学年の判別ができる。
ちなみに今の一年生は青、二年生は赤、三年生は緑だ。
そのため、学年の判別は実に簡単で、上下関係などが非常に分かりやすい。
「その……お誕生日おめでとうございます! これ、よかったら受け取ってください!」
「ありがと〜! もちろん頂くよ〜!」
「よかった……! じゃあ、また学校で!」
「うん! じゃあね〜」
貰ったものは、赤色のラッピングペーパーで綺麗に包装された、小さくて四角い箱。
え、なにこれ指輪でも入ってるの?
さすがに指輪が入ってたら引いちゃうけど……(晴は例外で、むしろ嬉しい)
中には何が入っているのかまだわからないけど、折角貰ったし、家に帰ったら開けてみよ〜っと。
「まさか学校の外で貰うとは思わなかったな……」
とりあえず貰った小さめな赤色の四角い箱を元々持っていた手提げバッグに入れて、再び学校に向かって歩き出した。
私が敢えて晴の家に行かなかった理由、それは先程のように男子から誕生日プレゼントを貰うようになったため、晴に迷惑をかけないためだ。
プレゼントを貰うようになったのは、確か中学生になってからだったかな。
それにもう貰うことは分かっているし、早めに全部貰って晴といる時間を邪魔されないようにしないといけない。
目を離したらすぐに
柊木さんとは学校一の人気者で、晴の好きな人であり、私の恋敵である。
絶対に晴は渡さないけどね!
「……さてさて、晴を柊木さんに近づけさせないためにも頑張りますか〜」
学校に到着すると、私のことを待っていたであろう男子たちがプレゼントを持って近づいてきた。
まだほとんどの人がいない空き教室に入って、集まってきた男子たちを一列に並ばせ、一人ずつ迅速に対応していく。
集まっていた男子の中に、強引にプレゼントを渡してくる人がいなくて、本当に良かった。
そのおかげで、朝のショートホームルームが始まる十分前に並んでいた人全員分の対応が終わった。
「疲れた〜……」
この朝の時間だけで貰ったプレゼントの数は合計二十個近く。これでもかなり多い方だが、恐らくこれからもっと増えるだろう。
一年前の誕生日の時に貰ったプレゼントは、合計四十個近く。それに加えてスイーツやお菓子を貰ったから大体全部で六十個くらいだった気がする。
持ち帰るのすごく大変だったから、今年からは毎日少しずつ持って帰ろう(晴のは最優先で)。
今年も恐らくたくさん貰う気がするから、今日は結局晴といられる時間は、ほとんどないかもしれない。
朝早く学校に来たけど、無駄だったかもな……
「仕方がない……今日だけは許してあげようかな」
そう思いながら、空き教室を出て自分のクラスに向かったものの、晴はまだ教室にはいなかった。
今日は幼馴染である美羽ちゃんの誕生日だというのに、朝一番に私に「おめでとう」を言いに来ないのはどうかと思うけどな〜(苦笑)。
それから五分ほどが経ち、遅刻ギリギリでようやく晴は教室に入ってきた。
「あ、晴! おっは〜」
「……お、おう、おはよう美羽」
あれ……? 晴、いつもより元気ないな……
「晴、元気なさそうだけど、何かあったの?」
「別に……ちょっと寝不足なだけだよ。授業中に寝れば元気になると思う。……それと美羽、誕生日おめでとう」
「あ、そ〜なんだ。うん、ありがと〜!」
会話は終了し、晴は自席に向かっていく。
…………何か忘れているような気がする。
あ! プレゼント貰ってない!!
「ねぇ晴! プレゼントって……」
「あー、ごめん。家に忘れちゃったわ。帰りでもいいか?」
「え…………う、うん大丈夫だけど」
「本当にごめんな。でも、今は少し寝かせてくれ……」
そう言って、登校して早々机に突っ伏した晴。
余程眠かったのか、早くもスースーと寝息をたてている。
「晴からのプレゼントはお預けか……楽しみにしてたんだけどな……」
それからの今日の授業は全て集中することが出来ず、いつの間にか帰りのショートホームルームの時間になっていた。
ちなみに晴は未だ、机に突っ伏して寝ている状態である。
そのおかげで、私が色々な男子からプレゼントを貰っている時に、柊木さんと話すこともなかったみたいだからよかったが、心の底では悲しんでいる自分がいた。
今まで晴が私へのプレゼントを忘れた日なんて一度もなかった。
忘れたというよりも、いつもは朝早くに私の家に来て、誰よりも先にプレゼントをくれた。
寝不足なら仕方がないかもしれない。
寝不足でも私へのプレゼントだけは、忘れず持ってきた欲しかったなぁ……
「晴、起きて。もう帰る時間だよ」
「ん…………あ、おはよう美羽」
「うん、おはよう。よく眠れた?」
「かなりよく寝れたわ。もう元気元気! でも、今日学校来る意味なかったかもな」
そう言って苦笑した晴。
そして、私の返事を待たずに晴は続けた。
「あ、美羽。この後空いてるよな?」
「うん。お母さんもお父さんも今日は仕事が忙しいらしいから……」
「よし、じゃあこれからスイーツでも買いに行かないか? 誕生日プレゼント忘れたお詫びも兼ねて、買ってやるから」
「いいの!?」
「もちろん」
※※※
学校を出て、晴の言葉に甘えてスイーツを買ってもらうため、私たちは今ケーキ屋さんに来ている。
何を買ってもらうかというと……
「美羽は何が食べたい?」
「いちごたっぷりタルト一択!!」
「まぁ、お前ならいちごが入ってるやつを選ぶだろうなとは思ったよ。買ってくるから、ちょっと待っててくれ」
そう、私はいちごが大好きなのである。
どれくらい好きかって聞かれたら、「晴と同じくらい!」と答えるだろう(すごく分かりやすい例えだよね!)。
「ありがと〜!」
「いえいえ……よし、そろそろ帰るか」
晴は一瞬スマホを見てから、そう告げた。
「うん!」
ケーキ屋さんを出てからしばらく歩き、晴の家に着くと、「プレゼント持ってくるから待ってて!」と言われ、私は一人、晴の家の前で待っていた。
晴は毎年ぬいぐるみをくれるから、今年もぬいぐるみかもな〜。
もちろん晴から貰ったぬいぐるみは全て、傷をつけないように大切に保管している。
今年はどんなぬいぐるみなんだろう。
楽しみだな〜!
「……ごめん美羽、遅くなった」
そう言って家から出てきたのは、アイマスク(?)を持った晴だった。
「え……もしかして、そのアイマスクがプレゼント?」
「いやいや、そんなわけないだろ。こんな物をプレゼントとして、美羽に渡すわけないじゃないか」
「じゃあそれは……?」
「とりあえずこれで目を隠してくれ」
「え、ちょっ……!!」
晴は私に近づき、強引にアイマスクを付けた。
私、これからどうなっちゃうの!?!?
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