第6話 ドキドキ料理対決!
「それなら……料理でどっちか決めない?」
「「料理……?」」
「そう! 決め手はシンプルに、どっちの方が美味しく作れるかね!」
今日は、幼馴染である
そんな時、先程話題になっていた、休日に美羽と義妹である
言い出しっぺは琉那だ。
琉那が料理をしているところを一度も見たことがないが、言い出しっぺということは、余程料理に自信があるのだろう。
対して、美羽には何度も料理を振る舞ってもらったことがある。
初めて振る舞ってもらった時には、味など諸々心配だったが、その心配を無視するかのように無理やり食べさせられた。
でも出された料理は全部美味しくて、本当に美羽が全部作ったのか疑ったほどだった。
「この勝負、受けて立〜つ! 私に料理で勝負を挑んだこと、後悔させてあげるよ!」
「勝負はやってみなきゃ、どっちが勝つか分からないよ〜?」
この料理対決、どうなるのか全く見当がつかない。
休日に一緒に過ごすのはどちらかを決める対決。
元々この対決の原因は俺だ。
休日は二日あるし、一人一日ずつ一緒に過ごせばいいのだろうが、生憎一日だけしか予定が空いていない。
そこで、半日ずつ過ごせばいいのではないか、と提案してみたが、それは二人に断固拒否された。
「じゃあ、ルール決めよ!」
「そうだな。まずは……どうやってどっちの料理が美味しいか決めるんだ?」
「そんなの元々決まってるじゃん。お義兄ちゃんが審査員だよ」
「いや、なんで俺なの!?!?」
「「お義兄ちゃん(
確かに琉那と美羽の二人で決めるとなると、二人とも自分の料理の方が美味しいと言い張るに違いないため、絶対に決まらない。
それなら俺が決めるのが妥当か……
「わかったわかった。やればいいんだろ」
「やった!」
「で、どんなルールでやるんだ?」
再びルールについて聞くと、極めてシンプルな内容だった。
・一品ずつご飯に合う料理を作る。
・料理中、お互い邪魔をしない。
・審査員(俺)は、どんな料理を出されても必ず食べる。
最後のやつって、どんなに失敗した料理でも食べろ、ってことだよね?
さすがにそれは酷くない?
美羽は別に心配してないけど、琉那の料理は見たことがないし、かなり心配だ。
「おっけ〜! じゃあ早速作るから、晴は適当にくつろいでて〜」
「わ、わかった……」
美羽は一通りルールを聞くと、もう既にどの料理を作るのか決めていたらしく、誰よりも早く立ち上がった。
さすがは美羽。何度も家に料理を作りに来てくれることだけはある。
言い出しっぺの琉那も美羽に続いて立ち上がり、二人で並んでキッチンに向かった。
二人は敵対視しているため、姑息な手を使うのではないか、と思ったが、ルールを破ったら即負けなため、お互い邪魔はしないだろう。
二人がキッチンに向かってから、三十分が経過して、キッチンから「できた!」と大きな声が聞こえてきた。
そして、その声が聞こえてからすぐに、俺のもとに料理を運んできたのは琉那だった。
「じゃじゃーん! 琉那ちゃん特製の肉じゃがだよー!」
俺の前に出されたのは、ちゃんとお店で作られたような肉じゃがだった。
琉那が料理をしているところを見たことがないから、もっと単純で簡単に作れるものが出てくると思っていたが、その予想はどうやら外れたようだ。
「美味そうだな……」
思わず心の声が漏れてしまい、その言葉を聞いた琉那は嬉しそうに「早く食べてみて!」と催促してくる。
「いただきます」
一緒に用意された箸を手に取り、まずは初めにジャガイモを口に運んだ。
しっかりと味が中まで染み込んでいて、すごく美味しい。
「めっちゃ美味い……」
「でしょでしょ! ちゃんと工夫して作ったの!」
机に手をついて、グイグイ距離を縮めてくる琉那から少し距離を置いて、残っているのをご飯と一緒に何度も口に運んだ。
琉那が作った、ご飯に合うこっくりまろやかな肉じゃがは、今まで食べてきた肉じゃがよりも圧倒的に美味しかった。
しかし、美羽は作り始めてから四十分近く経った今でもキッチンから出てこないのが気がかりだ。
「美羽のやつ……遅いな」
「美羽さんの料理、隣で見てたけど、もう少し時間かかると思うよ」
「そうか……」
相当手の込んだ料理を作っているに違いない。
自分のために、そこまでしてくれる美羽が幼馴染で、本当によかったと思う。
しかし、美羽がどんな料理を作っているのか気になるが、それよりももっと気になることがあった。
「そういえば琉那、料理出来たんだな」
「お義兄ちゃんがいないところで、ずっと練習してたの! いつか私が作った料理を食べてもらいたくて……」
左胸に手を置いて、頬を赤く染めながら、恥ずかしそうに喋る琉那を見て、自分の心臓がだんだん強く脈打っていくのが分かった。
こんなにも純粋で、可愛い義妹は、この世のどこを探しても、そう簡単には見つからないだろう。
「ありがとう、琉那。お前が義妹になってくれて、本当に良かったよ」
「う、うん……私もお義兄ちゃんがお義兄ちゃんで良かった」
お互いにいつもは口に出さないことを言っているせいか、すごく恥ずかしくて、目を合わせられない状態が数分続いた。
そして、何事も無かったかのように琉那としばらく雑談をしていると、美羽がキッチンから出てきた。
「晴〜! 出来たよ〜!」
「おー!」
「じゃ〜ん! 晴が昔から大好きな、鶏の唐揚げだよ〜!」
鶏の唐揚げ、それは俺が小さい頃からずっと大好きな食べ物だ。
特に美羽が作った鶏の唐揚げは、外はカリカリ、中はジューシーで絶品。これは琉那からも好評の一品であるのだ。
「う……み、美羽さん! 鶏の唐揚げは反則です! 私の負けがほぼ確定じゃないですか!」
「え〜? じゃあ琉那ちゃんも同じのを作ればよかったんじゃな〜い? それに、私は琉那ちゃんの隣で作ってたんだし、途中で止めさせればよかったと思うけど〜」
「ぐぬぬ……」
琉那の言っていることは、あながち間違ってはいない。
俺は鶏の唐揚げだけは、誰にも負けないくらい好きだ。だから、それを出してしまえば、必然的に勝ちへと繋がる。
そのことを分かっていたなら、どうして琉那は美羽の言った通り、同じのを作らなかったのだろうか。
「妨害行為はルール上、失格になってしまいます。それに、鶏の唐揚げだけはどれだけ練習しても、上手に作れなかったんだもん……」
「それはドンマイだね〜。今度私が直々に作り方教えてあげようか?」
「結構です!」
その後、美羽が作った鶏の唐揚げは三人で残さず食べ、不服そうに見えた琉那は白旗をあげた。
そして、この料理対決の勝者は美羽となった。
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