第1話 病み姉とボク

ピピピピッ ピピピピッ。


スマホのアラーム音で目を覚ます。




いつもより一時間早い起床だ。


姉さんが入院してしまっているため、自分で朝ごはんとお弁当を作らないといけなかった。


洗面所に行き、顔を洗って歯磨きをした後、リビングに向かう。




いつもならピンクのエプロンをつけてリビングで料理を作っている姉さんが、今日はいない。


ピンクのエプロンが姉さんの椅子にかかっていた。




べ、別にやましい気持ちなんて全く、全くないが。


手に取ってつけてみる。


すごく姉さんの匂いがする……って。


姉さんはボクを庇って結果今入院しているというのにボクは何をしているんだ!!




我に帰ったボクは、電子レンジの隣に置いてあるパンを取り、トースターで焼いた。


冷蔵庫から卵を取り出し、カパッと割り牛乳を少し入れ混ぜる。


それを少し温めたフライパンに入れていく。


円型に入ったら真ん中にとろけるチーズを入れて、外側からうまく丸め、オムレツを作る。




野菜もなんもないが、とりあえずトーストとオムレツで朝ごはんを済ませた。


そのあと食器を洗い、姉さんのエプロンをそっと脱ぎ、椅子にかけておいた。




服を制服に着替え、バッグに今日持ってくべきものを詰め込む。


昨日の今日で授業を受けることができるのも姉さんのおかげだ。


そういえば、昨日友達に買い物を付き合ってもらう予定だったのになにも連絡してないのだが、大丈夫なのだろうか。


怒ってないかな、とスマホを開いた。




「わわっ、え、なにこれ!?」




思わず声に出てしまった。


LINEの通知が四十三件?


正直みるのがめんどくさくなってしまったボクはそっと電源を切り学校で謝罪することを決める。




時間が時間だったので、急いで家を出て学校に向かう。


帰り道には病院に寄って帰ろう。と思った。




学校に着き、ボクが教室の扉を開けるとみんなの視線があつまり、ザワザワとしだした。


ボクが何事だ、と困惑していると




「あまね、お前聞いたぞ、事故にあったってな。大丈夫だったのかよ」




と、親友の智和ともかずに話しかけられた。


納得だ、ボクが事故に遭ったことが広まっているのか。


だからクラスから注目を浴びたんだな。




そして、おそらくみんなが聞きたかったことだったんだろう。クラスの視線があつまる。




「あぁ、それなんだけど、お姉ちゃんがボクを庇ってくれて……」




「……ッ!? 冥福を……祈ってる。すまないこんな話をして」




クラスみんなの視線が逸れる。


ボクがすごく悲しそうな顔をしたから勘違いさせてしまったのだろう……。


というか、失礼だな……。智和のなかで姉さんが勝手に殺されたことに少し腹を立てる。


仕返しをしてやろう。




「姉さんは、死なないよ。だって……だって。姉さんは……」


「お、おいおい、すまない、すまない……」




ちょっとやりすぎたかもしれない。


というかボクも同じようなことをしてるな、と反省する。




「冗談だよ。姉さんも無事だったよ。多分姉さんが死んでたらボクは学校に来れないと思うよ……」


「無事だったのか! お前も性格悪いよな、俺、オワッタかと思ったぞ……」






その後なんやかんやで学校が終わり、ボクは急いで校内をでる。


LINEに既読をつけながら、病院への道を急ぐ。




そこで俺は気づいてしまったのだ。


ものすごく多い通知の三分の一くらいは、事故の心配だったのだが、残りの大体三分のニは、姉さんからのLINEだった……。




『天音、昨日のこと怒ってる?』


『嫌いじゃないよ、大好きだよ』


『なんで返信してくれないの?』


『もしかして他の女といるの?』


『もう私は用済みなの?』


『ねぇ』


『ねぇねぇねぇねぇ』




ひぇっ。


と思ったが、なんかすごく愛を感じた。


満たされるな。うん。




なんか嬉しくなったボクは病院へ急いだ。




病院に着くとカウンターで用件を伝え、姉さんのところへ向かう。


姉さんがいる病室を開けると、すごく暗い顔をした姉さんがぶつぶつと何かを言っていた。


少し気になったボクは近づいて耳を澄ませる。


近づいても姉さんは気づかなかった。




「あぁ、天音に嫌われたな。どうしよう。生きてる意味あるのかな。死のう。そうだ死のう。病院で自殺をするのは無理がある。とりあえず生命保険にはいって……」




姉さんが恐ろしく怖いことを言っていることに気づいたボクは恐る恐る話しかけた。




「姉さん……? きたよ」




ボクがそういうと恐ろしい速さでこちらを振り向いて叫んだ。




「あまねぇぇぇぇぇ! きてくれたのね、私はもう捨てられたのかと思った。あ……」




あ……と言ったあとみるみる顔が青ざめていく姉さん。


どうしたのだろうかと思っていると




「も、も、も……。もしかして、私にお別れを告げにきたの……? 縁を切りに……きたの?」




うるうると涙目でボクを見つめる。


かわぇぇぇぇぇぇ。


とりあえず、




「姉さんに会いにきたんだよ 落ち着いてね」




と言った。


叫んで疲れたのか安心したのか、聞くや否や寝てしまった。


赤ちゃんかな……?




可愛いかよ。


なんとなく靴を脱いでベッドにボクも入ろうとしたところで看護師に見つかり引き剥がされた。




退院まで一緒に寝るのはお預けらしい。


悪魔めっ。


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日替わり姉さん @Ideal315

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