彼女の死

風鈴

彼女の死

 僕の彼女は死んだ。


 彼女は、僕の全てだったんだと、失って気がついた。


 彼女と行った公園。

 彼女と一緒にブランコの上で話しすぎて、子供が乗りたいのに分からなくて、お母さんを連れて来られて、めっちゃ怒られたよな。


 その後マックで、彼女は、『あのお母さんって、子供が呼びに行くまで、ずっと携帯を弄ってて子供なんか見てなかったよね』って、お母さんの子供への接し方がおかしいと腹を立てていたよね。


 わたし、あんな母親には絶対にならないからって、片方の手で拳を握りしめて、もう片方の手ではコーラを入れた紙のカップを持って、力説してたよね。


 危ないよと注意しようとしたら、ストローをくわえて、ズズーって吸ったよね。


 僕は、そんな彼女が大好きだった。


 でも、今は、もう、彼女は僕の前には居ない。


 悲しいかって?

 もう、そんなの通り越しちゃって、どっかへ行っちゃった。


 寂しいかって?

 もう、そんなの、彼女とのプリクラ写真を捨てた時に捨てちゃった。



 今日も、僕は学校へ行く。


「おっす!お前、明日は頑張れよ!」

「ああ」

 声を掛けてきたのは、僕の親友。


 因みに、イケメンで、めっちゃモテてて、いろんな女子と付き合い、女の子コレクションって本人が言うほどの女子と付き合っている。


 この親友は転校生で、転校初日からコイツを一目見たいと、廊下の窓から女子達が鈴なりに並んで覗いてた。


 そして、なぜかその初日から、僕と親友になった。


 根はいいヤツなんだが、女の子大好きなんだ。



 そして、翌る日。


 僕は、マウンド上で仁王立ちしていた。

 7回、最終回。

 1対0で勝っている。

 6回まではパーフェクトだった。

 しかし、今は、ワンアウトフルベース!


 全部、あの親友ぶってるイケメンのせいだ!

 そいつとその彼女が、セットの時の一時停止状態で、どうしても目に映る。


 スリーボールとなって、後が無くなった。


「ガンバレー!」

 オレは俯いていた顔をその声のする方へ無意識に向けた。




 〜〜彼女視点


 私は、恥も外聞も無く、声を上げた。

 彼がこっちを見た!


「大好きー!ダイスケー!」

 

 私は、横の転校生の頭を、った。


 彼は頷いた!



 そして、彼は、その後連続で、3球三振に取り完封勝利。


 そして、今、私の目の前に。


「生き返ったのか?」

「私を殺すな!」


「だって、君は彼とキスしてただろ?」

「どういう風によ?」

「こんな感じだったっけ?」

「ブチュー!」

 私は、我慢出来ずに彼に飛び付き、つかる様なキスをした。

 もちろん、ファーストキス!


 彼は、時々、妄想癖が高じてしまう。

 今回もそう。


 私は、そういう時には、彼の頭をつ。

 今回は、隣の転校生の頭だったが、彼は目を覚ましてくれた。


「もう一度」(彼)


 今度からは、頭でなく、口になるわね。



 了

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

彼女の死 風鈴 @taru_n

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ