暗朝

@tooru513

第1話 1274の奇跡

 「パリッ」

いつも決まった朝食。いつも決まった食パンに、いつも同じ目玉焼きにソーセージ。

 そして、一日が始まる。そう、暗い朝が一日の始まりを伝えるのだ。

 30代後半になるケンタに希望はない。何をしていてもセミの脱け殻のようだ。楽しみなこともほとんどない。あると言えば、某コンビニのチョコレートアイス6本入りを続けて食べることくらいだった。

 そんなケンタにも輝かしい時もあった。いつから闇に落ちたのか。本人も分からない。しかし、こうなることが天命だったのかもしれない。


 13日の金曜日。ジェーソンの日といっても良い日に、一人の赤ん坊が世に投げ出された。その赤ん坊の体重は1274gという小さい体であった。現在では、未熟児といえば1000gをきることも多々あるが、この赤ん坊が生まれた頃は珍しく、担当医も「99%死ぬ」と断言したくらいだ。両親は絶望的となり、保育器の中にいる小さな赤ん坊が生きることを選択してくれることを祈るしかなかった。もし生きる選択をしたとしても、障害をもつことは覚悟していた。「どんな形でも、なんとか生きてほしい」と両親は願った。その願いが通じたのか、1ヵ月、2ヵ月と保育器の中で生き延びた。そして3ヵ月が過ぎた頃、両親の腕の中に戻ることができたのだった。

 退院したものの、目が見えているのか?音が聞こえているのか?と何度も病院で検査をした。幸運なことに、その赤ん坊は障害をもたずに生まれ、すくすく育っていくことになる。ケンタが幸せに向かう第一歩を踏み出した。のちに、闇に落ちることも知らずに。

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