俺は「本」だ。
山原 もずく
俺は「本」だ。
初めまして
俺の名前は、、、
いや、もう知ってるよな
表に堂々と書いてんだから
とりあえず
目を通してくれてありがとな
早速だが、頼みがあるんだ
どうか聞いてくれ 俺の話を
お前は今から
読書をするんじゃない
俺とお喋りをするんだ
よく言うだろ?
本とは会話をしましょうって
詳しい意味は知らねぇが
きっと俺とお前のストーリーが
ここから始まりそうな予感がする
よろしく頼むぜ! 相棒!
んじゃ まず
キッチンに向かって欲しい
そんで流しにもたれながら
バーボン片手になんてどうだい?
そんな お前
ぜってぇカッコイイし、
酒のつまみになる本なんて称号
芥川賞や直木賞レベルの栄誉があるぜ
ぜってぇ自慢できる。
でも、もし
お前が俺の頼みを
聞いてくれないなら
いますぐ
このページを閉じていい
そして、どこのサイトか知らないが
口コミに最低評価をつけるといい
「ホントは1つの星もあげたくない駄作」
なんて罵ったっていい
そうさ、俺は駄作も良いとこ
ハッキリ言ってクズだ
そこの何に使ったかわからねぇ
おティッシュ様と一緒に
クズかごに入れるがいい
でもな、、、
そしたらお前もクズだ。
なぜかわかるか?
資源は大切に、そう習っただろ?
いくらお前がムカつこうが
俺の事を蔑もうが
最低限のルールは守ろうな?
ルールを守らないやつは
クズって言われても
しょうがないんだ
それが俺たちの
生きる世界ってもんだ
でも 俺は生まれ変わる
この世界の理の
大いなる循環の中で
やがてまた 産声を上げる
ベストセラーの表紙になって
どこかの金持ちに引き取られ
湿度管理されたぬくぬくの本棚で大切に飾られ
何十年も何百年も生きるかもしれねぇし
どこかの臭いオッサンの
ケツを拭く紙になって
再び糞みてえな死に方をするかも知れねぇ、、、
その時はまた笑ってくれ
必ず スタバの紙ストローに生まれ変わって
お前の啜るキャラメルフラペチーノを
身体中に擦りつけながら体内に送りつけてやるぜ
てめぇは 腹を壊すかもな
そしたらまた俺みたいな
不幸な連中を使って
ケツを拭いて怨みを買う
どこまてで行っても
その憎しみの連鎖は止まらねえんだ
え、いまのケツ拭く紙は
トイレットペーパーって言って
の原料は石油だって?
良かった、、、
じゃあ、俺が糞みてえな来世を
送る事はないんだな、、、安心したぜ
すまねぇな、色々言っちまって
正直怖かったんだ
だってよ、前世で漫画本だった頃
よくおっさんに付き添わされたんだ、便所によ
そこで俺は沢山の悲鳴を聞いたんだ、、、
その時はまだ ケツ拭く紙を
「ちり紙」って言ってな
俺たちみたいな奴を
リサイクルして出来てたんだ
遠くから回収車の
「ちり紙〜」っていう
アナウンスが聞こえて来る度に
みんなで怯えたもんさ
あれは死神の声だってな
そうか、いつの間にか
時代は変わったんだな
え、何、、今ググったら
原料が石油だってのは
デマだったって?
おいおいおいおい、嘘だろ?
嘘だって言ってくれ
あっそうだ!
だいぶ時代は進んだんだろ?
もしかして、チリ紙なんて
いまやほとんど
使ってないんじゃないか?
だって、ほら昔は誰かが腹壊す度に
起きてたあの大量殺戮も
あの口から水を吐き出す
便座の野郎のおかげで
めっきりなくなってたじゃねえか、、、
あいつおれらの中で
救世主って呼ばれてたんだぜ?
きっと、そのうち
人類の科学力は
すべてのチリ紙を救うってな
俺はあれから
何度か生まれ変わって
最近じゃめっきり
便所には行ってねぇが
さらに時代は進んだんだろ?
え、まだ使ってるって?
まぢか、、、
それが事実だとしたら、
さっき毒づいたのは謝るよ
すまん! この通りだ!
頼む!
もうあんな思いはゴメンなんだ
あっ、なあ、じゃあ俺を
燃えるゴミにだしてくれないか?
お前がエコノミストってやつでも
今回だけは
目を瞑ってやくれやしないか
ひとつの哀れな魂を
救済するつもりでよ
なあ、頼む!
後生だからよ!
あ、そうだ!
売るのはどうだい?
え、古本屋に行くのが面倒くさいって?
交通費で赤字になるだって?
おいおい、時代は進んでるんだぜ?
俺知ってるんだ、前世でよ
オレを買ったはいいが
全然読まないで
放り投げてる野郎がいてさ
いつもスマホで
You Tubeばっかみてたんだよ
そしたら、広告が流れるだろ?
それで聞いたんだ
いらないものは
売っちゃおう♪ってやつを
簡単らしいぜ?
写真とって売れたら送るだけ!
みたいなさ!
コンビニで発送だって
良かった
コンビニは近いじゃないか
なんせ 俺たちが出合って
お前が俺に惚れて
ここまで連れてきたんだから
懐かしいな、、
すごく最近の出来事に思えるぜ
まあ、実際1時間前くらいの出来事だしな
え、、、
暇つぶしに買ったけど
すげぇつまんないって?
そんなに嫌なら
電子書籍にいけよだって?
ハン! そんなの
まっぴらゴメンだぜ
あいつらは
魂の入ってない
生きる屍だ
ロボットってやつだ
血が通ってねえ!
環境問題、環境問題って
うるせえ輩が
金のために生み出した
可哀想な奴らだよ
リサイクルビジネスってやつさ
そう考えると
リサイクルってシステムは
とんでもねえ悪行に思えてくるぜ
もとは そんなもんが無ければ
俺らもあんな地獄を味わう必要はなかった
死ぬ時も ちゃんと燃やされて
後腐れなくこの世とおさらば
できたはずなのに
いまだに俺らを
こんなクソッタレな輪廻のなかに
縛り付けてやがる
そうだ リサイクルだ
それこそ 諸悪の根源だ
これは 神の啓示だ
俺は目が覚めたぜ
なあ、お前さん
そこに良心が残ってるなら
魂たちを救ってやりたいって
思うんなら
俺と一緒に 戦ってくれねえか?
お前さんにしかできねえんだ
この負の連鎖を断ち切るのは
何をすればいいんだって?
そうだな とりあえず
ブログでも初めてみないか?
タイトルはこうさ
「うその環境問題」
そいつがいつか書籍化して
世界を変えていくんだ!
え、すでにあるって?
本当か、、いるのか、、、?
俺達の為に戦ってくれてる人間が?
しかも、書籍も沢山あるって?
お、い、まじ、、かよ、、、
グスン
う、、すまねぇ、、嬉しくて
すでに戦ってる
多くの仲間がいるんだなって
俺は決して一人じゃないんだって、、、
逆に気付くのが遅れて面目ねぇ、、、
みんな すまなかったな
今行くぞ!
なんとか なりそうだ!
?!
あ!いま、お前さん笑っよな?
いや、別に、怒ってねえさ
というか、むしろ嬉しい
俺達本にとって
こんな嬉しいことはないさ
むしろ本冥利に尽きるってもんだ
星の数ほどあるなかから
手にとってくれて
それだけでも 奇跡なのに
そいつが 俺の話を聞いて
笑ったり 泣いたりしてくれる
こんな素敵なことが
素敵な奇跡が 今
目の前で起こってってるんだ
ぐすん、
あ、やべ、また泣きそうだ
ありがとよ、おれは、幸せだ
もう、何も怖くなくなった
いい人生、、、いや
いい本生だったよ
え、面白いから友達にもすすめるだって?
おいおい、それ、最高の褒め言葉
なんとか屋さん大賞とかってのより
最高な名誉だよ、ありがとな
あ、また笑った、、、、ふふ
ん?まてよ、、、、
その笑顔どこかで!?
......。
あっ 思い出した!
ほら、俺だよ! 俺!
覚えてないか あの絵本だ!
小学校の図書室で出会って
お前は俺をみて
笑ったり 泣いたり してくれた!
何度も外に連れ出してくれて
色んなとこに行ったな
公園で一人きりの時なんか
お前は俺に話しかけてくれた
覚えてるさ
お前が初めてだったからな
俺に 生まれてきた意味を
生きる喜びを 教えてくれたのは!
お前が卒業して 何年もした後
俺はボロボロになって
とうとうリサイクルが決まった
学校ってやつは
そういうのにうるさいからな
運命の時刻までは
暗い倉庫に閉じ込められた
カビの臭いとホコリが
やけにキツイとこだった
まわりの奴らは怯えていたぜ
助けてくれ どうか
そこの焼却炉で燃やしてくれ!
って 必死で命乞いしてた
でも、俺は黙って
最後の時をまってたんだ
恐怖はなかった
むしろその胸は誇りに満ちていた
だって お前との
あの思い出があったんだから
俺が神に祈ったのは
命乞いなんかじゃない
「いつか、また、あいつに会いたい」
たったそれだけさ、、、
神様っているんだな、、、
何回も死に戻りして
いつの間にか 穢れちまって
忘れていたよ
でも、もう大丈夫!
おれはもう二度と
絶望はしないよ
この永遠に繰り返される運命を
これからは楽しんで生きてやる
悲しくても辛くても
きっとそれが人生ってやつさ
え?
人生じゃなくて 本生だって?
ふふふ
流石相棒
また いつか
お前さんに会えるといいなぁ
何度も何度も生まれ変わって
きっとまた 会いに来るよ
それまで お前さんも元気でな
もし、お前さんが
悲しい時 辛いとき
人生に迷ったとき
俺じゃなくてもいい
本を手に取って
頁をめくってくれ
お前さんが
俺を救ってくれたように
きっと誰かが
お前さんを救ってくれる
俺達はみんな
一人じゃないんだ
みんな 待っている
いつか誰かが
手をとってくれることを
一緒に話をして
笑い会える日が来ることを
きっと俺達はみんな
その為に
この星に生まれてきたんだ
おわり
俺は「本」だ。 山原 もずく @mozukune-san
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