第2話 魔法

「知らない天井だ」


 俺はラノベの定番であるセリフを再度口にしながら、身体を起こした。


「夢じゃなかったんだな」


 周りを見渡し先ほどと変わりない光景にそう呟く。

 ベッドから降り窓の前まで移動し、ゆっくりと窓を開けた。

 眩しかった太陽は沈み、空には無数の星が綺麗に輝いていた。


 時間にして5分ほど外を眺めたところで、お腹がかすかに、くぅーっと情けない音を発した。

 異世界に来てからまだなにも食べていないことに気づいた俺は、部屋の窓を閉め、寝室を後にする。


 寝室から出ると、リビングのような広い空間が広がっており、椅子やテーブルなど最低限の家具はそろっているように見えた。

 少しリビングを見て回っていると、『食物庫』と書かれた扉があったのでゆっくり開けてみると、そこには見たこともない野菜や肉が無数に置かれていた。


 中に入り一番手前に置いてあった肉の塊を手に取ったが何の肉かわからなかったので、鑑定スキルを使ってみることにした。


「【鑑定】」


 そう呟くとステータスと同様に半透明の画面が目の前に現れた。


【種類】ボア肉


【特徴】甘くてとろける。程よい脂身でいくつ食べてもしつこくない


【ランク】C+


【おすすめ調理法】じっくり火を通し赤い部分がないようにする。何もつけないで十分美味。


【保存期間】あと3日


「......すげ~、鑑定ってめちゃくちゃ便利だな」


 鑑定スキルの有能さに感嘆しながら、ボア肉の情報を読んだ。


(ふむふむ。なるほど、情報見る感じだとイノシシ肉にちかいのかな。......... よしっ! じゃあ、今日の夜飯はボア肉の直火焼きにしますか。せっかくだし外で食べようかな)


 そう決めた俺はボア肉を持ったまま食物庫を出て、外に出るために玄関へ向かって歩いた。


 玄関には黒いブーツタイプの靴と下駄が置いてあったので、下駄を履いて外へ出ると、昼間寝室からみた光景とは正反対で先の見えない不気味な森が遠くまで広がっていた。

 流石に驚いた俺は、寝室から見えた小川の近くに移動しようと考え、家の裏手側に「カツッカツッ」と音を立てながら向かった。




 少し時間はかかったが、なんとか小川の近くについた俺はさっそく調理を行うために火魔法を試してみることにした。


(やっぱりラノベの定番と言ったら、ファイアボールだよな。)


 そう考えた俺は、右手を前に出し、手のひらに火の玉をイメージし【ファイアボール】と唱えた。


 野球ボールくらいのイメージのつもりだったが、サッカーボールくらいの火の玉が現れた。


「うおっ! びっくりしたぁ。まじで魔法使えたよ...」


 実際に魔法を使えたことを確認し、魔力をしまい火を消した。


「魔法を使えることはわかったけど、制御が難しいな。イメージ通りの大きさにするにはもう少し練習が必要そうだ。明日から毎日特訓しよう!」


 そう決心しながら、お腹の具合が限界になったので、近くに落ちている小枝や木を拾い集め、焚火をイメージしながら【ファイア】と唱えた。


 火がうまくついたので、その上に木の棒に突き刺したボア肉をかざして、直火で焼いた。


「......」


 無言で待つこと10分。


 表面に少しずつ焦げ目がついてきたので、そろそろ食べごろだなと感じた俺は、肉にかぶりついた。


「......うんまああ~いっ! こっこれは~っ!」


 20数年生きてきて、今まで出会ったことのない美味しさだったため、言葉にするのが難しかった。


 嚙まなくても飲み込めるくらい柔らかく、脂も全然しつこくなかったため、5分もしないうちに1Kgほどの肉を平らげた。


「食った食ったぁ~! 最高だったな。これでランクC+とかまじかよ。異世界恐ろしすぎる」


 食事に大満足した俺は、口の中に残る味の余韻に浸りながら、上を向き星空を眺めた。


 再度ステータスが気になったので、【ステータス】と呟く。



【名前】シュウゴ

【種族】人間族 【性別】男性 【年齢】18歳

【称号】女神ウェヌスの使徒 転移者

【レベル】1

【体力】250/250

【魔力】∞/∞

【魔法】

  創造魔法Lv.10

  火魔法Lv.1

【スキル】

  鑑定Lv.10

【加護】

  女神ウェヌスの加護.Lv.10


「おっ!火魔法が増えている。」


 ステータス画面の魔法が増えていることに、少し喜んだ。


 今後ステータスを見ることを日課にしようと決め、焚火を消して、家の中に戻ることにした。


 異世界転移1日目ということもあり疲れがたまった俺は、寝室に直行し、そのままベッドで横たわった。

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ただただ異世界でのんびりスローライフするだけの話 みやび @bigboy0402

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