和解

 父さんからもらったお金を使って、僕はコップを二つと缶ビールを二本買って来た。

 二つのコップを並べて、ビールを注ぐ。

「何をしているんだ、お前は?」

 もやが聞いて来た。

「とりあえず飲めよ。こういうものは、断ったらダメなんだ」

 僕はもやの前に一つコップを差し出す。もやは手を伸ばし、コップを掴もうとした。しかし、その手らしきものはコップをすり抜ける。

「俺がこんなもの飲めるわけが無いだろ」

 もやが呆れながら言う。

 僕はもやの前のコップに自分のコップを軽くぶつけた。綺麗な音が鳴る。

「乾杯だ」

 コップに入ったビールを一気に飲んだ。いつものアルコールの凶暴さは無く、喉越しが心地良い。久しぶりに飲むビールはとても美味しかった。

「お前が飲めないのは知っているよ」

「じゃあ、何でこんな事をしたんだ?」

 もやの問いかけに、僕はおどけた感じで答える。

「さあね。気まぐれだよ」

 そう言って、僕は笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

虚夢 朝月 @asazukisan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ