言われたものを井戸に捨てるだけで、高収入。ただそれだけなんです。それだけで、13万字を書ける筆者様の描写力には脱帽しかありません。
そんなうまい話あるか、無事終わってほしい、という読者の思いも虚しく、やはり色々起きます。
場所のわからない山奥、圏外のスマホ、朽ち果てた建物、そして井戸。
もう何か起きないはずがないですよね!
そしてさりげなくふりまかれた伏線回収も見逃せません。
物語はそのままホラーだけで終わるかと思いきや、終盤にかかり大きなうねりを伴い始め、予想もしなかった真実へ。
最初から最後まで完成された流れと、一番はなんといっても恐怖の煽り方が非常に秀逸です、サスペンスホラーで入れるべきポイントを余すことなくふりかけられた絶品小説と言えるでしょう。
13万字ですが、先が気になりすぎて二日で読んでしまいました汗
妻となる女性との穏やかな生活を夢見る内藤は、ある日奇妙なバイトを紹介される。ある山にポリタンクを背負って登り、山頂にある古井戸に中身を捨ててくるというものだ。その報酬の高さに惹かれ、怪しいことを承知で内藤はバイトを引き受けることにする。それが恐怖の始まりだった。
現場に集うバイトメンバーも身元が胡散臭く、依頼者も奇妙な指示を出す。何気ない日常からだんだんと嫌な予感が漂い始め、山を登るにつれ恐怖は加速していく。ポリタンクの中身は何なのか、山頂の井戸の秘密とは?それが徐々に明らかになり、選ばれたメンバーの秘密も暴かれていく。
ストーリーの運びが非常に巧みで引き込まれる。夜の山の描写やシチュエーションも非常に秀逸で、ホラー好きな私もこれは斬新!と思わず唸ってしまった。これはホラーレーベルの文庫本で書店に並んでいておかしくないレベル。読んで損は無し、とても読み応えある作品でオススメです。