15「心健やかに」

「ルールは一日交代。ただし龍斗次第ね」

「俺も毎日はちょっとね」

「三人でヤればいいじゃない」

「「それは恥ずかしくて嫌だ」」


 咲は無理をして明るく振舞っているように見えた。しかし昨日のような危うさは影を潜めている。


「じゃあ、咲はがんばって龍斗を欲情させるのよ」

「なんで?」

「だってわたしの中であなたはまだ間女なんだから、ちなみわたしは正妻よ」

「間女ってなによ!?」

「龍斗の気持ちは正妻のわたしにはまだ遠く及ばないわ。まず愛人を目指しなさい」

「くっそ上から目線でムカつくわ~!!」

「あらあらそんな汚い言葉で旦那様を魅了なんてできるのかしら?」


 ノリノリで後宮ごっこが始まっちゃったよ。本当は序列なんてものは気にしていないのは昨日の様子からバレバレだった。友梨佳なりに咲を元気づけているのだろう。

 それからは今まで三人でやってこなかったこと、話さなかったことをどんどんやるようになった。時にケンカをしたり、バカをしたり……楽しい思い出を作り夫婦として、友人としての時間を過ごした。


 二年くらいが過ぎた、それでも二人はまだ妊娠をしていない。


「おやすみ」

「おやすみ」


 今日は咲と一緒に寝る日だ。たまにケンカをするが俺たち三人の生活は安定していた。俺は背が伸び、体つきも細マッチョになった。咲の見た目はあまり変わらないが友梨佳は胸が大きくなった。それを勝ち誇った友梨佳と負け惜しみを言う咲のやり取りはまるでコントのようだ。


 眠りについたと思ったら白い世界にいた。

 そんななかなにかの存在に気が付く。


『お前たちは』

「えっ?」


 これは夢だ。


『三人とも心健やかに楽園で過ごしておる』

「あのっ!」

『……』


 不思議な声の主は言葉を止めたがこちらの様子など無視して続きを話し始めた。


『わしからいうことは一つだ』

「なんですか?」

『子を産み心健やかに幸せに暮らせ』

「わかりました」


 いつものように目が覚めた。


「あのさ、咲」

「なあに?」


 俺は夢の話をした。


「えっ!?あたしも夢でおじいちゃんの声聞いたよ!」

「どんなことを言われたんだ!?」

「半年後に妊娠して元気な男の子が生まれるって。それと……」

「それと?」

「ここではケガが直るから出産のことは心配するなって」

「そうか」


 夢を見せたのはここの管理者だろう。これで完全に確定した。驚いたのは友梨佳にその話をしに行った時だった。


「わたしもう妊娠してるって」

「「えっ、えええええええええええええええええええええ!!!?」」

「びっくりした?」

「おめでとっ!あたしも半年後に妊娠するらしいからお揃いね」

「生意気。龍斗、咲とするの禁止ね」

「なんでそうなるのよ!」


 俺たちは平穏に暮らした。


「にゃぁ~」

「キナコもすっかり年寄りだな」


 他の猫たちは消えているがなぜかキナコだけは残った。身重になった二人は夜の相手をしてくれなくなり、たまにこうしてキナコに愚痴を言っている。


「龍斗ぉー、咲が生まれそうだってぇ!!」

「マジか!?」


 これからも俺たちはこのセカイで命を繋いで生きていくだろう。














ここからはあとがきになります。



今回はツイッターでPRしたこともありますが、多くの皆様に見てくれました。

気にしていた反応もきちんと返ってきてモチベーションを高く保ったまま書くことができました。

投稿頻度重視で推敲は甘かったかもしれませんが今はまだ執筆量を増やして実力を上げていきたいと思います。一応一日置いて直しをしているのでこれでもミスや変な言い回しは減ったと思っています。

そのあたりも含めてご感想を頂ければうれしいです。


今書いているのは15日の金曜日です。

この時点で次回作の構想はありません。

なるべく早く次を上げたいと思いますので応援のほうよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

気が付いたら俺たち三人だけのセカイにいた みそカツぱん @takumaro123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ