ウソツキマイダーリン
赤猫
本音を教えて
「好きだよ」
隣の彼がいつものように甘ったるい作ったセリフを吐く。
そんなセリフじゃ私に響く訳がない。
「ありがとう·····よくまぁ長い間そういうセリフ吐けたね」
私はいつものように返す。
こんなやり取りを続けて3年。
今日は卒業式。
私たちのこの少し変わっている高校生活が終わると思うと少しだけ寂しく感じる。
「そろそろ諦めなよ。私よりいい子なんてたくさんいるんだから」
「俺はキミが良いんだけどな~」
「そういう甘ったるいセリフ言うから胡散臭いんだよ」
「えー」
「卒業するからもう会うことも無いだろうから言うけどさ、本当になんで私を好きになるか理由を聞きたいよ。目腐ってるのかなって思うよ?」
私を好きになる奴は本当に見る目が無いと思う。
好きなものはホラー映画で休日はずっとホラー映画鑑賞。
一度クラスの男子に言われたが私はどうやら女としては可愛げが無いそうで。
「別に良いよキミがホラー好きでも」
「怖いのダメじゃん」
この人怖いのダメなのに何かっこつけてるんだろう。
「ビックリ系以外ならグロイ奴はいけるから」
「·····私の観てるほとんどの映画無理じゃんか」
呆れた。
そこまでして一緒にいたいと思う人の気持ちが分からない。
「趣味合わないとつまんないかもよ」
「知らなことを知れていい刺激になるからいいと思うよ」
ああ言えばこう言う。
こいつ3年間そういうところは何一つ変わらない。
「毎回良く飽きずに言うね·····ポジティブな性格には尊敬するよ」
「ありがとう」
皮肉のつもりなのに普通に彼はさらっと返す。
「そろそろみんなのところ行きなよ?私はもう少しだけここにいるから」
「キミも行くなら考えるよ」
「はいはい分かったよ行けばいいんでしょ。私もう家に帰ろうと思っていたからいいよ」
私がどれだけ言っても、彼は私から離れないだろう。
早く家に帰ってしまおう。
「帰っちゃうの?」
「もう思い残すことも無いしね」
「もっと話したいなー」
「私は帰りたいな」
「一緒に帰る?」
誰か助けて、こいつ諦めてくれない。
外に出るとクラスメイトだった人たちは楽しそうに談笑してる人もいれば、泣いている人たちもいる。
「泣いたりするんだ卒業式って」
「寂しいからじゃないかな。やっぱり3年間って短い間だけど一緒にいたら情も湧くでしょ」
「へぇー、そういうものなんだ」
「だから俺もキミとこうして毎日しゃべれなくなるの寂しいよ」
「環境変わったら寂しさなんて忘れると思うけど」
私がそう言うと彼は少しだけムッとする。
「冷たいなぁ」
「これが平常運転だし。諦めて」
「そういうところ込みで好きだからいいんだけどね」
「ありがとうね。私帰るから」
これで最後だ。
少し残念なのは最後まで作ったセリフだったことだ。
私はピタリと足を止めて彼の方を向く。
もう会わないのだから最後くらい文句言っても許されるだろう。
「本音で話してくれてもいいのに」
さようならと言おうとした時に腕をパッシっと掴まれる。
「何?今度は?私帰ってバイオハザードしたんだけど」
「いいの?」
彼の目が笑っていない真剣な目をしている。
「言いも何も本音聞きたいって思ってるから話してくれるなら嬉しい」
「·····うん」
何だこの空気。私ドキドキしてきたんだけど。
「好きです」
「·····」
たった一言それが私の心に響く。
ちょろいな私こんな一言で落ちるなんて、いやもしかしたらもう落ちていたのかもしれない。
「あ、ありがとう」
「付き合ってください」
「·····えっと」
こういう時どう返せばいいか分からない。
「私、ホラー系好きだし!」
「知ってる」
「それに口悪いし、人付き合い悪いし!」
「それも知ってる」
「可愛くないよ私」
「俺は可愛いと思うよ」
いつもの調子で返すのか。
顔真っ赤にしている私が馬鹿みたいじゃんか。
「あー!照れてるのがアホらしく感じる!」
「写真撮ればよかったかな」
「絶対に!もう2度とこんな締りの無い顔しないからな!」
「あ、待ってよー」
少しでも彼の調子を崩したい。
どうしたらいいんだろう·····私がいつもしないこと。
「私も好きだよ」
「はい?!」
言葉に嘘はないただ素直になっただけ。
「冗談とか新手のドッキリ·····?」
「ドッキリな訳あるか。現実だよ馬鹿」
甘ったるいセリフじゃなくて貴方の本音を聞かせてほしい。
どれだけかっこ悪くても、私にはかっこよく見えるから。
ウソツキマイダーリン 赤猫 @akaneko3779
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