第6話 デビュー戦~大会当日~
朝4時半、デビュー戦の朝が来た。昨日は大会から帰るとすぐに寝てしまったが、むしろ眠れたことに感謝だ。異常に興奮している。中学生のときのサッカーの試合とは比べられないくらい緊張する。
サッカー部時代より一生懸命に練習したから?1人でレースするから?みんなに見られるから?
気持ちの原因を探ろうにも全くわからない。高校の部活に入って自信なんてなくなったが、ここまでの2カ月間の辛い練習を乗り越えたという事実もある。今の自分がどこまでやれるか分からないが、本当に楽しみだ。
朝ごはんを急いで食べて、始発に間に合うように家を出る。まだ外は暗く、心地良い風が吹く。普段なら駆け上がる階段もエスカレーターも今日はゆっくり上がるし、エスカレーターでは立ち止まる。そして、電車では絶対に座る。予定通り、電車では座ることができ、そのまま眠りについた。
今日の荷物番やサポートのシフト表を見ると、長距離の1年生は誰も入っていない。初レースのことを考慮してくれているみたいだ。
「早瀬、どう?緊張してる?」
「正直ヤバい。サッカーの試合の比じゃない。」
「分かる、俺もだわ。」
小磯も同じようだった。但し、コイツは先輩たちからの前評判でも都大会は固いと思われている。もう1人の同期の長岡もレースでうまく乗れれば都大会が見えてくると言われている。自分の実力不足を割り切っても悔しいものは悔しい。今日少しでもヤレる奴だと思われたい。
今日のスケジュールを考える。15時レース開始で、14時15分には招集(レース前の点呼のようなもの)がある。そうすると、ウォーミングアップは13時30分くらいから体操を始める感じだろう。昼飯は11時だ。このように逆算して考える癖が陸上部入ってからというもの非常に身に着いた。11時まではテントで休むかレース眺めるかゆっくりしよう。
アップを開始すると、急に何度も腹痛に見舞われた。おかしい。変な物は食べてないし、何か出るわけでもない。本当に緊張している。自分でも笑えるくらいトイレに駆け込んでいる。全然良いアップになっていない。でもお腹が痛い。そんなことをしている間に招集の時間になり、またトイレに行き、気が付くとスタートラインに立っていた。
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