第5話 デビュー戦~レース前日~

 ショックの大きかった体験入部から2ヶ月。6月の2週目、ついにデビュー戦が始まる。2年生、3年生にとっては同じ地域内の学年別の大会で、1年生にとっては上位は都大会まで進める大会となっている。

 あれから2ヶ月本当に辛かった。男子の先輩についていけずに女子と練習した4月。男子と練習開始できた5月中旬。最近では何とか男子メニューをこなせるようになった。

 大会は上山陸上競技場だ。陸上競技の外にはたくさんのテントが張られている。各校の拠点だ。青央高校の拠点も暗黙の了解で決まっている場所がある。今日は場所の確保の為に7時には皆集合している。第一種目の男子3年生100Mの予選が9時からスタートする。部長の宮根先輩が出場する。俺の出場する3000Mは明日の午後3時スタートだ。今日は最後の調整をする。9時まではトラックが使えるから刺激練習する。この大会までの1週間はサッカー部時代には無かった体の調子の良さを感じる。大会1週間前から練習の強度を落とす。疲労を減らす、息を上げることを目的に体を動かす。そして試合(陸上部的にはレースと呼ぶ)前日には長距離は1000Mを当日のイメージで走る。そうすると、レース当日では体がキレッキレになるらしい。実際、今日時点で凄く調子がいい。走るのが楽しみだ。

 サッカー部とは違い、大会当日は皆自由行動に近い。最低限守らなければならないのは、サポートと荷物番だ。サポートは出場する選手の荷物をゴールに運んだり、水を渡したりする。荷物番はそのままでにテントにいる係だ。何もかが新鮮で面白い。

 皆、自由に練習やレース準備をしている。俺も自分の好き勝手に準備をする。アップを終えてトラックに行くと、いろんな選手が練習している。先輩たちは他校の選手とも話している。サッカー部時代には無かったから憧れる。他校でもライバルで友達なんてザ青春って感じでいい。俺も明日のデビュー戦でそんな関係を作っていくスタートが切れると願いたい。

 今日は1000Mを3分20秒で走る設定だ。3000Mで換算すれば10分となる計算だ。正直、陸上部の中では遅い方だが、夢を見過ぎに上を見ることが大切だとたかだが2ヶ月の陸上歴ながら学んだことだ。スタートすると、思っていた通り体気持ち良く動く。自分の身体じゃないみたいだ。周りも全く気にならない。楽しい。タイムを見ると、少し早すぎるようだ。焦らずにペースを意識する。結果は3分15秒で終えた。1~3秒以上ズレるの大問題だ。ペース的には問題だが、体の調子は最高だと分かった。

 クールダウンは小磯と一緒になった。小磯もサッカー部出身で今日の体のキレに驚いているらしい。

「凄いな、陸上の調整練習って」

「ホントそうだな。今日は設定ペースよりも5秒も速くなったわ。」

「明日が楽しみだな。」

「今日は応援メインになるけど、それはそれだ楽しみだな。」

実際、先輩たちのレースを観れるのは凄く楽しみだ。まずは宮根先輩の100Mから始まる。

 6月の熱くなり始めた季節、風も気持ち良い。俺の陸上部デビューが始まる。
















 






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